最終話 ウチらはともだち
体育祭の日がやってきた。
ウチはできへんなりにも精一杯頑張って、それなりの結果を出していった。
徒競走、ベッタなのは変わらなかったりもするんやけど、食い下がり、言うんかな?
それがそれまでと違ったんや。
同じベッタでも違うベッタやねん。
対して、ヒカリさんは大したもんやった。
どんな競技でも上位ランクに食い込んでいきはるんや。
さすがやね。
ウチは友達として、誇らしかったんやけど。
男子共が、走ったり跳んだり跳ねたりする体操着……ブルマー姿のヒカリさんを、粘つくような視線で見てくさるのが少々ムカついた。
まったく、男子共は……。
ムカつきながらも、ウチらは種目をこなした。
オカンとの約束、頭の片隅にあったけど。
そろそろ昼も近い。
けど、まだオカンの姿が無い。
……やっぱ、無理なんかな……?
約束はしたけど、生活大事やもんな。
無理な状況になったら無理なんや。
店が忙しいのはしょうがないんや……
ウチは、そう諦めとった。
……諦めとったんや。
「そろそろ騎馬戦だね。行こうテスカさん」
「ですね。行きましょか」
騎馬戦に参加するため、ウチはヒカリさんと一緒に歩き出そうとしていた。
そのときやった。
「テスカー! 来たで!!」
声が聞こえたんや。
弾かれたように振り返った。
オカンが手を振ってくれた。
オカンが来てくれた!
ウチはそのとき、泣きそうなくらい嬉しかったんや。
「……お母さん」
そして。
ヒカリさんもポカンとした感じで、一点を見つめてはった。
ウチはその方向を見て……合点がいった。
そこには眼鏡の女性……ヒカリさんのお母様のクミ・ヤマモトさんがおったんや。
手を振ってくれてはった。
……ヒカリさんも、ウチと同じ事を望んではったんや。
それにウチは気づかされた。
同じことを望んで、待ってて、同時にそれが叶ったんや……
「お母さーん!」
ヒカリさんは満面の笑顔を浮かべて手を振り返した。
「オカーン!」
ウチも同じく、オカンに手を振り返した。
「これからテスカさんと一緒に、騎馬戦に出るから見ててねー!」
「オカン見といてやー! ヒカリさんと同じ組なんやー!」
ウチらの呼びかけ。
オカンとヒカリさんのお母様は、笑顔でそれに応えてくれた。
ウチの胸は一杯になった。
そのウチの胸に……
「行こう、テスカ」
耳元で、ヒカリさんがウチの事をそう呼んでくれた。
呼び捨てで。
感激が、溢れる。
ヒカリさんが……ウチの事を……
同じ事で感激して、ウチらの絆はもっと深まったんや。
だからウチは言うた。頷きながら。
「うん。ヒカリ、行こか」
そしてウチらは手を繋いだ。
ともだちとして、一緒に歩んでいくために。
~ノラハンターテスカ・完~
ノラハンターテスカ~ファンタジー世界魔法少女物語~ XX @yamakawauminosuke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます