第30話 私の本音

★★★(ヒカリ)



『何か良い事あったの?』


 私が自室で1人で居たら。

 私の中からニュっと出て来たテツコが、私の表情を見て開口一番、そう言って来た。


 いけない。にやけてた。


「体育祭の騎馬戦の組がテスカさんと一緒になったから、楽しみで」


 私は正直に告白する。

 今日、正式に決まったのだ。

 体育祭本番で、私とテスカさんが同じ組になることが。


 テスカさん……ノラハンターとしての相棒で、私の友達。

 重大事を共にする友達だから、大切さも同じくらい高いのかもしれない。


『アンタ、あの子と一緒に行動するようになってから、表情変わってきたよね』


 アンタは元々不愛想な子では無かったとは思うけど、他所の人とはどこか一線を引いてた。

 けど、あの子……テスカに出会って、ノラハンターとして組むようになってからはそれが違って来たみたいに思う。


 テツコにそう言われた。


「いけないかな……?」


 邪悪と戦う戦士なのに。

 そう思ったから訊いたら。


『悪いわけ無いでしょ』


 そう、一笑に付すみたいな感じで言われてしまう。


『ニンゲン、繋がりが大事だと思うよ? ワリとマジで』


 そういうテツコの目は、遠いところを見る感じだった。

 何を思い出してるのかな?


 彼女の言う「ビッチヘイム」での思い出の話?


 そういえば、テツコはそこで誰かと一緒に組んで活動してたんだよね?

 その人の事を思い出してるのかな?


「……テツコにはそんな人、居たの?」


 思わず直球で聞いてしまった。


 するとテツコは


『居たよ……大切な相棒だった……そのために死んでも惜しくないって思えるくらい……』


 いつもはふざけた雰囲気があるのに。

 その一言だけは本気マジを感じた。


 そのくらい、大事な相手だったのか……。


『だから、アンタもそういう相手を見つけられたなら、大事にしなきゃダメ。あの子がそうだってなら、その気持ち、大事にしなよ?』


 ……別に悪いことしてないのに、説教されている気分になるのは何故だろう?


「うん。そうする……」


 私としては、そう答えるしかない返答。

 まぁ、本心だから別に嫌でも何でもないんだけど。


『で、体育祭は何時なの?』


 いきなりの話題転換。


「明後日……」


 まあ、拒否する理由も無いので正直に答えると。


『今年は来てくれそうなの?』


 そこで、テツコが何を聞きたいのか。

 なんとなく分かった。


「どうかな……今年もちょっと忙しそうだけど……お母さん」


 体育祭にお母さんが来るか。

 それが気になるらしい。


 テツコはそういうこと、何故か拘る。


 去年は来れなかったんだけど、そのときは私の事なのに自分の事のようにガッカリしてた。


『……来てくれると良いんだけどね』


「うん……」


 お母さんの仕事は、色々な人が関わる仕事だから、あまり我儘は言えない。

 だから、私は諦めていたけど……。


 本音は、来て欲しかった。

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