第2節

ver.1

 空を見ていた。

 青く青く美しい空だ。


 私は、何かと笑い合った。

 何かは、指をつたり中に入っていく。


 体の中に心の中に。


「「ナノシステム愛より通知。身体的擬態及び、個体識別番号を取得。取得元はサーバー小生。正式に取得しています」」


 サイレンが鳴っている。

 甘い甘いサイレンだ。


「ゆず。避難しようか」

「うん」


 一部の記憶が無いが、問題ない。

 

 足元に犬が転がっている。

 でも、それは動こうとせず、また熱も発していなかった。



 十年後


 ナノロボットの進化により、救助者が抹殺された年。

 道端に内臓の無い犬の死骸が転がる、そんな年。


 私は駅前に有ったそれを見つめていた。

 熱気は感じられず、力尽きたかのような体制のそれ。


 瞳を見た。

 酷く濁ったその目は、ある眼光を光らせている。

 

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アメジスト 生焼け海鵜 @gazou_umiu

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