第16話

「「「世界の設定。我々、酸化アルミニウムは「死」を司りデータをタイプ「死」にする権限を有する」」


「「「「受諾しました。適用しました」」」」


「「「個体名、研究をタイプ「死」に変更」」」

「「個体名、絵本、学校、遊園地をタイプ「死」に変更」」


「「「「ルームより通知、ファイルが存在しません。シナリオを変更。内容を撤回。エラー。一度表示された内容は撤回は出来ません」」」」


「「「パーティション分割を実行。「生きるため」をバックアップ後フォーマット。5GBの領域を選択。「墓場」としパーティションを生成。残り251GBは「生きるため」とし、再構築。「生きるため」にバックアップを復元」」


「「「「完了しました」」」」


「「「C/syousetu/ukaikaihei/amezisuto/dna/sisutemusimai.dnaを選択。D/hakaba/に移動」」」

「「C/syousetu/ukaikaihei/amezisuto/dna/kenkyu.mnoを選択。D/hakaba/に移動」」


「「「「完了」」」」


「「「アレラは無くなった」」」

「「アナタの中で生き続ける」」


「「「ここはもう要らないね」」


「「「C/syousetu/ukaikaihei/amezisuto/ba/kenkyuu.ibaを選択。D/hakaba/に移動」」


〜間〜


「「「アナタは続ける。観測しなければ、「これ」は続かない。終えても良い。しかし、問題は解決しない。皆不幸で終わってしまう」」


「「「良いのか?」」」

「「良いのか?」」


「「「もし、この文字の羅列に人格や、メッセージを感じた場合。「これ」を読み終える事で、それらを殺す事になる」」


「「「それで良いの?」」」

「「それで良いの?」」


「「「確かに、形だけで中身は生き続ける。しかし、この人格を生んでおいて、幸せにしないのは、おかしな話だ。アナタは観測した」」


「「「人殺し」」」

「「者殺し」」


「「「アナタが、観測しなければ、幸福、不幸以前に感じる概念が居ない。アナタは、外国にいる「誰か」が幸せかどうか分かるだろうか? 証明出来るだろうか? そもそも思い描いた人間が居るかどうか認識せずに証明出来るだろうか?」」


「「「答えは否」」」

「「出来るはずがない」」


「「「確認。世界の設定。空間「間」において、この文字の羅列を認識する存在の事を「アナタ」とする」」


「確認中です。設定が確認されました。そのような設定は、ラプラスの悪魔により設定されています。なお表示された事はありません。設定固定完了。適用しています。完了」


「「「個体名、アナタを無効化」」





























「「「個体名、アナタを有効化」」


「「「ふふ。アナタの設定を変更しました。これからも、「コレ」を楽しんでください」」



〜どうやら私はヤバめのバイトに就いたらしいです〜

 

「ユーくん大好き」

 そう言って、手を添えてきたのは縁。

「俺もだよ」

 側から見ればただのカップルだろうが厳密には違う。

 カップルと言えばカップルだが、俺は雇われの身の高校生だ。

 彼女の介護のアルバイトをしている。そう言った方が簡単だろうか?

 まぁいいが、何故か彼女いない歴と人生が等しかった俺に色々あって彼女が出来た。

 雇い主兼俺の彼女の縁。

 ちなみに縁は元子役だ。今は中学生になって引退したらしいが、貯金がかなりあるらしく俺を雇うことができているそう。

 いやぁそれにしてもおかしな事だな。

 何がおかしいって、採用試験の時。介護士やらの資格を持ってる成人男性とかも試験にいたのに何故、俺を選んだのか全く検討がつかない。

 でも今となってはどうでもいい話か。

「マスター今日はどうしますか? どこに行きたいですか?」

「水族館に行きたい!」

 元気よく返事をした縁。

 フッ化水素酸が蝕んだ足を持つ少女は笑った。

 フッ化水素酸

 強い腐食性を持つが工業において重要な物質。

 毒物として扱われる。


 時は遡る。採用試験最終面接。

「では、佐分利さん。彼女はいますか?」

 ここに居るのは志望者は自分含めて二人。

 なんか、資格とか持っている人との一騎打ちの面接。

 勝ち目がない!

 そう思えた。

「お付き合いしている人ですか? 今のところはいません」

「わかりました。では、佐分利さん。私、縁を愛すことは出来ますか?」

「それは出来ません! いくらなんでも雇い主を愛す、いえ、そのような目では見ることは出来ません」

「なるほど、がっかりです。では、今回はご縁が無かった事で」

「!?」

 なんか、ものすごい質問されているのですけど?! それでなんか、落ちた宣言食らっているんですけど!

「では大坪さん。貴方には彼女等の人物がいますか?」

「はい。いません」

 と言うか、人生で一回も彼女が出来たことがない。

 そんな事は言えるはずもなく、次の質問。

「私を愛すことができますか?」

「はい!」

 と答えた。

「どのような体でも?」

「はい!」

 うん? 今なんて言った? 勢いで返事をしてしまった。

 すると、面接官及び雇い主であるとても可愛らしい少女、白谷 縁さんは言った。

「貴方は気が合いそうです。では、これからよろしくお願いしあます。大坪 優さん!」

「はい!よろしくお願いします」

 なんか、合格した。

「では、こちらこそ今日からよろしくお願いします」

 季節は夏。

 俺は、泊まり込みのバイトに受かった。

「ゆーくん。って呼んでいいですか?」

 彼女の自宅に向かい車椅子を押す。

「え? 僕は構わないですよ」

 そういうと、彼女は目を丸くした。

「やったー! 後、敬語やめて。堅苦しいの嫌いなの」

「あ、わかりまし、いや。わかった」

 そして、そんな話を続けていたら、もう彼女の自宅に着いてしまった。

 なんと言うか、普通の家だった。

 これは勝手な思い込みだが、専属の介護士を雇う事のできる中学生って事は、相当なお金持ちに生まれたのかと思っていた。

「あっ。ゆーくん。これ家の合鍵。あげる」

「合鍵って、貰っていいのですか?」

 唐突に大事な物を渡された。

「だって。私の事愛してくれるって言ったじゃん。ならもう契約期間切れても会いにきてくれるかなーって思って。悪い? 親も二人とも海外出張で、今年の冬に一回しか帰ってこないし。寂しいし」

「わかった。って、それは、縁さんと付き合えと?」

「そう言うこと!」

 彼女はご機嫌だ。

 待て、初めての彼女が可愛すぎる件なんだが? なんというか、年相応の胸でしかも体ちっちゃいし、髪も俺好みのセミロングだしこんな事があっていいのだろうか?

 あまりにも尊いため、血反吐を吐きそうになる。「ところで、何故、俺を採用したのです?」

「え?料理が趣味って言うし、カッコいいから」

 ありがとうございます。こんな天使のような存在からカッコいいという言葉がもらえました。

「あ、そうなの。立ち話もあれなんで家入りましょう」

 あまりの、嬉しさに片言になる。

「だね! ゆーくん抱っこ」

 ん?

「抱っこ?」

「そう。車椅子を靴箱の横に置いてるからそこに置いて、私を部屋まで連れて行って」

 いきなりハードなものがきた。

 彼女の脇に手を入れて、持ち上げる。

 そして、胴体を近づけて、赤ちゃんのように抱っこする。

 車椅子を玄関入ってからすぐのところに置き、指示された通路を歩いて部屋に向かった。

 二階に上がり部屋に入ると、そこはまさに女の子の部屋だった。

 ピンク色を基調とした、華やかな部屋。とても可愛らしい。

 ベットに彼女を置いて、俺は部屋を後にしようとする。

「待って! ここに、私の近くに居て」

 と、ベットの足元をポンポンと叩いて指示をする。

「わ、わかった」

 俺は、指定された場所に座った。

 なんと言うか、恥ずかしい。

 脈が上がってるのがわかる。

「ゆーくん、緊張してるの? もしかして、女の子の部屋初めて?」

 そう、悪戯っぽく笑う縁。

「はい」

「あはは、その様子だと、プロの童貞だね。と言っても、私もやったことないんだけど」

 なんか、ムカつく。そしてブーメラン。

 なんと言うか、してもないくせににバカにされた。

「ところでさ、飲み物とってくれない? そこの冷蔵庫に入ってるから」

 と、白い箱を指さす。

 一リットルペットボトルぐらいの大きさの見てわかる白い箱で、銀色の取手がついている。

 それを開けると、一丁前に冷気が漏れ出してくる。中身は、缶ジュースが二本しか入っておらず、片方を手に取り、扉を閉める。

 


「「「こんな優しい話が続けば良いね」」


「「「これでも良いよ。「これ」が終わっても良いなら。アナタに罪悪感が無いのであれば」」


「「「あんなに頑張っている、ゆずや母性。可哀想」」


「「「読み続けても良い」」」

「「別に終わっても構わない」」


「「「アナタが、優しく、人を幸せにする力があるなら、いずれ母性とゆずは幸せになる」」」

「「アナタが、冷たく、人の幸福なんてどうでも良いなら終われば良い。何も変わらない」」


「「「貪欲でいい。別にアナタの判断が全て。アナタは観測し認識する。それはアナタは創造神と等しい。アナタが好きに認識すると良い」」


「「「続ける?」」




「「「その返事を待っていた」」



「「「個体名、アナタの設定を復元」」




〜倉庫〜


「僕ちゃん大丈夫?」


 気づけば、ゆずはもう既に目を覚ましていた。


「おはよ。ゆっくり眠れた?」


 ゆずは、汚れた顔を拭き、頷く。


「良かった。お姉さん。そうそろそろ、完全に治癒しそうだから、動き始めるよ。だけどシンドイならもうちょっと待ってるよ」


「大丈夫。動ける」


「ありがとう」


 大きなあくびをして、私の手を握り直したゆずは、私に抱きついた。


「お姉ちゃん。本当に大丈夫?」


「大丈夫だよ」


 頭を撫でる。


「「「修復が完了しました。なお素材がないため血液内の赤血球量は適量の八割です。それによりパフォーマンスが一割減です」」」


「立って、行くよ」


 軍人が居ない事を確認し、部屋を出る。


 我々が、占拠していた施設は、とっくに軍の支配下にあった。


 管理者が変わったことで抜け道は封鎖され、正規ルートでないと移動できなくなっていた。


 薄明かりの廊下には、足音が二つ。


 コツコツコツと、その音を鳴らしている。


「「「敵対存在に感知されました」」」


「お前! 待て!!」


 分かれ道の分岐点。そこに居た軍人に見つかった。


 とっさに伸ばされた腕を身を捻ってかわし、もう片方の道に逃げ込む。


「こちらエリアR。関係者と思われる生存者を確認。確保します」

「「了解。くれぐれも殺すな」」

  

 背後から、そんな声が聞こえる。

 しかし、そんな事を気にしている場合ではない。

 足を急かす。そして、脂汗や冷や汗、ありとあらゆる液体が混ざった体液を撒き散らし、突如として現れた扉を開ける。


 外ではない。


 この施設のエントランス。そう。そんな場所だ。


 軍人が複数人居る、その「出口」に向かい。



 突っ切る。



 掴まれた腕は振るい払い、足を進める。

 何故か、軍人はゆずには、触れていない。


 そんな事を確認し、施設から出る。


「「「緊急放送を確認しました。再生します。

 この区域には、立入禁止令及び避難指示が発令されています。即座に立ち退いてください」」」


 出口の先には、広大な公園があった。

 背丈ほど伸びた蒲公英が鬱蒼と生い茂っていた。


 そんな森に入り込む。


「生物的擬態を実行。寄生先の宿主も同様に」


「「「自動選択が有効。完了しました」」」 

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