第50話 魔王の優しさ
カドラはスペディアと同じ表情をしていた。奴隷を見るような冷たい目。どこか心を見透かされているような、心の中を食い荒らされそうな感覚がティルジン王を襲った。ティルジン王の頭の中には、
『お前もいつか私のように殺される』という言葉だけが流れていた。スペディアを殺した日から、ティルジン王はその言葉を忘れる日はなかった。レブンを見つけたときは何が何でも殺そうとしたほどに、スペディアの言った通りになるのが怖かったのだ。だが、カドラがスペディアと同じ表情をした瞬間に「死ぬのか」と恐怖と絶望を抱きながら確信していた。カドラはゆっくりとティルジン王の方へ歩いた。しゃがみ込み、ティルジン王と同じ目線になると、カドラは今まで見たこともないほどにニッコリと笑った。しかし目の奥にはまだ冷たく光るものがあった。
「傑作だ」ティルジン王はカドラの言葉にイラ立ち、
「殺、すなら、はや、く、こ、ろせ」と手が恐怖で震えているのを抑えつけて言った。
「・・・私にはめんどうなことだな」カドラは立ち上がり、その場から立ち去ろうとした。
「カドラ様?先ほどこ、ん・・・」テイラは言いかけたが、カドラに口を塞がれた。
「フフッそんなこと言った覚えはないが?」カドラはそのまま去っていった。
「・・・」テイラにはカドラが何を考えているのかわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます