第50話 魔王の優しさ

 カドラはスペディアと同じ表情をしていた。奴隷を見るような冷たい目。どこか心を見透かされているような、心の中を食い荒らされそうな感覚がティルジン王を襲った。ティルジン王の頭の中には、

『お前もいつか私のように殺される』という言葉だけが流れていた。スペディアを殺した日から、ティルジン王はその言葉を忘れる日はなかった。レブンを見つけたときは何が何でも殺そうとしたほどに、スペディアの言った通りになるのが怖かったのだ。だが、カドラがスペディアと同じ表情をした瞬間に「死ぬのか」と恐怖と絶望を抱きながら確信していた。カドラはゆっくりとティルジン王の方へ歩いた。しゃがみ込み、ティルジン王と同じ目線になると、カドラは今まで見たこともないほどにニッコリと笑った。しかし目の奥にはまだ冷たく光るものがあった。

「傑作だ」ティルジン王はカドラの言葉にイラ立ち、

「殺、すなら、はや、く、こ、ろせ」と手が恐怖で震えているのを抑えつけて言った。

「・・・私にはめんどうなことだな」カドラは立ち上がり、その場から立ち去ろうとした。

「カドラ様?先ほどこ、ん・・・」テイラは言いかけたが、カドラに口を塞がれた。

「フフッそんなこと言った覚えはないが?」カドラはそのまま去っていった。

「・・・」テイラにはカドラが何を考えているのかわからなかった。

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