第27話 【グリマー】と【ナラーカ】

魔王城城門にて最終戦は行われる―――片や魔王をもらい尽くした【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】に、その暴走を食い止めようとする且つての仲間達に師、そして【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】…しかもこの【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】は【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】とは切っても切れない縁で繋がっており、【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】は【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】が暴走をしてしまわないよう世界との調和・調整をする役目を担っていた、そして万が一暴走をするようなら是が非でも止めなければならない…それも、被害が甚大となる前に。 そうした意味では現在の処魔王だけが唯一の被害者となっていた…だけ?


「(評価の仕方は正しくは間違っている…確かに数の上ではそうだけど、『魔王』と言うのはこの世界に君臨する王だと言う事をあらかじめジィルガから聞かされていた…この魔界を統べるだけの実力者をった―――これが後に響かないといいけど。)」


正しく理解をしていたのは、やはり【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】とは切っても切れない縁を構築させていた【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】だけだった。 そう、この二者は異世界の出身者、しかも【夜の世界を統べし女王ニュクス】とは“別”の……?


それよりもまず、眼前の強敵をどうにかしないと収まるものも収まりはしない……


「とは言っても、討伐たおせばいい話しなのかあ?カルブンクリスさんはちょっと前まで私らを主導してくれてたんだぜ。」 「とは言え、生半なまなかな攻撃では逆にあおる事となってしまおう。」 「となると、確実に仕留める覚悟をもってせねばなりませぬか。」 「だとしたらここで私達が止める事こそが最大の忠義!」


「(フフッ…私が思っていたより好い対人関係を築いていたのね。)」


「フッ…いかが―――かね、思いの外でその決心も鈍ろう。」 「心配をしてくれていると言うのね、まあ…この人も言わば“私”とは同族関係にあるからと言えば嘘になるけど…だけど、あの人の仲間の意向を受けて“着地点”が視えてきたわ。」


“自称”『ローリエ』を名乗る【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】は、確かにそう言った…『“私”とは同族関係にあるから』と、『同族関係』…そこから視えてくるモノ、“光”と“闇”とは対極関係にあるものの、そのどちらが欠けても成立しない、ならばこそ―――…


【緋鮮の覇王】【清廉の騎士】【神威】【韋駄天】のそれぞれが持てる力を【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】に注ぎ込み、怯んだところを【大悪魔ディアブロ】が結界を張った―――そして『ここぞ!』と言う時に。


「我が〘神意アルカナム〙によって封じ奉らん―――〘我またひとつの 獣の海よりあがるを見たり――これとおの角と七つのかしらあり そのかしらとお冠冕かんむりあり かしらの上には神を遺す名あり――我が見しけだものへうに似て その足は熊の如く その口は獅子の如し――たつこれに己が能力ちからと  己が座位くらいと 大いなる権威とをあたへたり〙」


その術式句は聞き慣れないものでした、この魔界共通の言語でもなく―――それよりも〘神意アルカナム〙? しかし効果は覿面てきめんと視え、あれだけ暴走していたのが不思議と収まった……?


「(あ…)わ、私は今まで何を―――?」 「やあ、その様子じゃ収まったみたいだね。」

「(!)き…!」 「おおっとお、勢いで“私”の名前を出しちゃうのはだぜぇ?“真名”は勿論、この魔界で通用“偽名”にしても、ね。 それよりお仲間に感謝しなよ、なんと言ってもあんたの暴走止めようとしてたのはあの人達だったしね。」

「そうか……私は―――(はッ!)それよりもルベリウス様は?!」 「それ、自分で言っちゃうかなあ…今あんたがここにいる時点で察せられるんじゃない?」

「そんな……私―――が?」


「今確認をしてきた、玉座の間ではあやつの存在性の認識は出来なんだ。」 「し―――師匠!?ああ…するとやはり………」 「辛いとは思うけれど、ちゃんと現状は認識しないとね。」


「あーーーのーーーそれより謎のおねいさん?うちんとこのカルブンクリスさんとはやけに親しげだけどさ…知り合い?なの?」

「『知り合い』……ん~~~まあそう言ってしまった方が早いのかもね、何しろこの人と私とは切っても切れない関係でもあるから。」

「それより…私が暴走していた間に何があったと言うのですか、それにと言うのは―――」

「(…)その解釈は少し違うわね、本来の姿が先程まで暴走をしていたので、今のは理性を植え付けられて大人しく…って処かな、まあ私からキツい一発をお見舞いしてやっても良かったのだけれど、そうした処で“今の”この人に戻る確証はなかったわけだし、だから緊急措置としてを使わせてもらったのよ。」

「(!)まさか…〘神意アルカナム〙を私に? けれど…そうか、その手を打たなければ私は―――」 「まあ、いいってことよ、なにより“私”と“あんた”との関係だしね。」

「しばし待たれよ、それより今〘神意アルカナム〙と?なんだ〘神意アルカナム〙とは。」 「その質問、ジィルガ辺りから飛んでくるものと思ってたのに、意外にもあんたとはね、“角ナシ《ホーンレス》”のニルヴァーナさん。」 「(な…)お前―――ッ!ニルが気にしてる事を!」 「ローリエですらそこは踏み込まなかったのに…!」 「ですがよく判りました、ローリエと同じエルフと言えどと言う訳には行かなかったようですね。」


「アッハハハ―――」


「何が可笑しい!」

「だってこれが笑わずに、どうして居れましょう…あの子もこの人も、いいお仲間に巡り合えて私としては歓迎なんだけどなぁ…それよりジィルガ、私が何をしたのかこの人達にも説明をしてあげて。」

「ヤレヤレ――― 一番の面倒事をワレに擦り付けおるか、仕方あるまい。 よいか、これからワレが説明してやる事は決して口外してはならんぞ。」


カルブンクリスの暴走が収まってより少しばかりの事情の説明と言うモノが設けられました、カルブンクリスがその身に(…と言うよりは権能により)魔王ルベリウスを取り込んだ事、“自称”『ローリエ』なる者がカルブンクリスと知り合いである事、また『ローリエ』なる者がニルヴァーナ達も知るローリエとは違う事、そしてカルブンクリスの暴走した権能を封じ込めた〘神意アルカナム〙の事…等々、けれど一番の衝撃事はこの後にあると言う事を、この場にいた一部の者を除いて彼女達は知る由もない…し、知る由すらない。


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


現政権だったルベリウスが倒された事に伴い、魔界は早急に新政権の樹立を擁する事が急務でした。 しかしながらルベリウス政権が倒される寸前まで敷かれていた圧政の雰囲気くうきを、ならば一体誰が引き継ぐものか…そこは議論の的となるのでしたが、さある者の『鶴の一声』によってある人物が次なる魔王に推挙されたのです。

そのある人物と言うのが……


「わ、私が―――?ま、まあ確かに反旗を翻す折にそう言った覚えはあるが…あれも一種の言葉の綾と言うべきものであって…」


「―――と、カルブンクリス殿はこのように申されておりまして…。」


「その様な言い分は認められません、だと言うならどうして前政権に対して物言いをつけ、魔王弑逆の大罪を果たしたのか…わたくしも彼の者が『取って代われる』ならばと黙認しただけ、ならば魔王陛下を弑逆したるは如何様いかようなるかを魔界に向けて説明すべきではありませぬか。」


「―――と、王后様は斯様に申されておりまして…」


「(ううう~~~相変わらず腰が強いなあ…)判った―――『善処する』と、彼女にそう伝えておいてくれ…」


この度の叛乱軍を組織・主導し、ついにはルベリウス政権を打倒したカルブンクリスが新たなる魔王へと推挙されたのでした。 しかも推挙をしたと言う人物こそ―――


          * * * * * * * * * *


「エヴァグリム王国王后ヒルデガルド様ご出座~~~!」


その名を聞くに及び誰もが目を丸くした事でしょう。 エヴァグリム王国の王后、するとならばローリエは王后の娘なのか…と疑いたくもなるのですが―――


「苦しゅうない面を上げよ。」


その言葉に応じ伏せていた顔を上げた時に視えた顔と言うのが、確かにあの時現れていた“自称”を『ローリエ』とする者だった。 しかしそれにしてもなぜ?素直にエヴァグリム王后と名乗れば納得したのだろうに…。


いや、それにしても―――


「ハァロォ~♪」

「私も、おかしいとは思っていたんだよ…何故君がエヴァグリムと言う一つの王国の后に収まり、。」

「そう言う言い方はないんじゃないかしら?―――まあ、冗談はさておくとして私でさえ一国の舵取り役を率先してやろうとしているんだよ、なのにあんたが何もしないで自由気ままに振舞っている、私もどうにかしてその内何とかしてやろう…としていた矢先に、魔王ルベリウスの件―――これはひょっとすると使えるかも知れない…と読んだ私は静観を決め込んだの、そしたら―――…」 「すべて君の思惑通りと言う訳か、。 それにしてはローリエが君の娘とは思えないのだけれどね、もしかすると…」

「そう、あの子は私の複製クローン…とは言ってもその総てがではないけれどね、複製クローンとは言っても自律稼働を目的としていた為、基本的人格は弄らないでいたわ、けれどそのお蔭であの子は生命を落としてしまったけれど…その結果として仲間の生命を救ったと言うのはある意味で成功と言った処よね。」


人払いをし、完全に彼女達だけになったところで砕けたかたちを取って来た、しかもその言動もどこか策謀を好ましく思っているらしく、今日こんにち自分達が取ってきた行動も言わばこの人物から為されたようなものだと思うとさすがのニルヴァーナ達でさえも…


「(な、なんだか気に食わないなあ~~~私らローリエを失った時にはスゲえ哀しかったのに…)」

「(それよりも魔王ルベリウスの一件があったからこそ“今”がある…と言う事は、なかったとしたら何かを企んでいたと言う事ですかあ?)」

「(ふ、不届きにして不純ですが……)」

「(それよりも気になるのは盟友を次期魔王に推挙したあの御仁の動機だ。)」


「ウフフッ―――そこの彼女達も『何で私が』て顔のようね。」 「彼女と私とは旧くからの知り合いでね…それに今までを見ての様に私よりも(悪)賢いし要領も良い、斯く言う私なんぞは彼女に振り回されっぱなしでね…。」


「(えええ~~~)それ今までで一番信じられん話しだわ。」 「それは私の台詞だ、私も盟友の“導き”に中らねば今以って尚梲の上がらぬ人生を過ごしていただろうに。」 「しかし~これまでのやり取りを見させられるとなんか納得が…それより―――ですね、あのローリエの手癖は?」

「ニュフフフ…ご希望とあらば期待に沿っても構わないわよぉ~?」(ワキワキ) 「判りました―――素直に遠慮させて頂きます…」

「しかし、ここは確か『国王』がいたはず…本来なら国の舵取り役を担うのは彼が本筋なのでは?」 「そうなのよねえーーーだけど何が間違いでそうなっちゃったのか…今じゃ私がこの国に巣食う『獅子身中の虫』と闘っている…って寸法よ。」


「どうやら君も苦労をしている様だね。」 「笑い事じゃないぞぉ~う?カルブンクリスちゃぁん、あんたも行く行くは『王』―――しかもこの魔界を背負って立つような、ねぇ。」(ニヤニヤ)


「(うーわ、この王后サンどエラい悪い顔するもんじゃない。)」

「(何か…盟友が苦手としているのが判ってしまった。)」

「(とは言え頼りのない国王に成り代わって…とは、満更悪い人ではなさそうです。)」

「(そうね、それに盟主様はこれから魔王と成られる身、とあらば私達も一丸となって支えて上げねば。)」


大悪魔ディアブロ】ジィルガに師事し高度な知識を兼ね備えさせたカルブンクリスをもってさえもかなわないとする人物『ヒルデガルド』。 しかし彼女の“賢さ”と言うのは常識の内に捉われたものではなく、ある程度の知識・常識をわきまえた上で“どう動ける”か…それがつまり応用性であり順応力、カルブンクリスが評した『要領が良い』とはそう言う事だったのです。(しかもでは『(悪)賢い』とも言っている事ですしね?)


        * * * * * * * * * *


こうしてカルブンクリスの『魔王登極』への動きは速度を速めていきました。 その上で今回自分が立ち上がった時、協力をしてくれた勢力へは惜しみなく―――


「この度から若輩・未熟な身でありながら新たなる魔王に登極したカルブンクリスだ。」

{新たなる魔王の誕生、心より寿ことほぎを述べさせていただきます。}

「それより竜吉公主様、此度〖聖霊〗は神仙族に於いては甚大な被害を被られたようで…謹んでお悔やみを申し述べさせて頂く、それに長である女媧殿が接見されないと言うのも…」

{いかにも、が長である女媧は死した神仙や大きく損ないし神仙のその魂を取り込み、また新たなる神仙を産み出す準備段階に入っておる。 故に他勢力との外交上の交渉などはが一手に引き受けておると言った処よ。}

「心中お察し致します―――それでは何か協力出来ることがあれば遠慮なく申し付けて下さい。」


まずは、今回の叛乱の所為により甚大なる被害を被ったシャングリラを訪れ、現在長である女媧に成り代わって生き残った神仙を纏めあげている竜吉公主との面談を行ったのです。 そして情報を交わす中で被害の実態が掴めてきた、仮初めにも竜吉公主が纏めているとはいえ所詮は『仮初め』―――〖聖霊〗の意思決定するには女媧を通さないとならないのです。


―――が…


「ちょっと待って。」

「(ん?)いかがされましたか公主様。」

「まあ~確かに、これまでは叛乱軍を主導していた立場だったけれどさ…今のあなたってとてもじゃないけど臣下を従えさせるような王じゃあないなあ…そう思ってね。」

「それは―――そうでしょう…私だって“立った”時にはと思っていたわけじゃなかったし…それが一国―――況してやこの魔界の王ですよ?とてもじゃないですが…」

「ふうーーーん、聞いていた以上に手強い相手って感じね、その―――」

「エヴァグリム王后ヒルデガルド…ですか。」

「うん…それにあなたと彼女旧くからの知り合いって本当なの?」

「ええ―――真実です、それに彼女には行動力もある…だから―――」

いずれは彼女が“立って”くれるものと思っていた…けれども“立た”なかった―――そこであなたが一念を発起させて“立って”…と、それに彼女それを見越した上でエヴァグリムの王后になった公算が出てきたわね、それにしても…ふう~ん―――『エヴァグリム』かぁ…。」

「何かご存知で?」

「ええ…同じ〖聖霊〗だものね、知っている事はあるわよ。 例えば…現在の国王であるセシルは優柔不断、しかも王家は貴族達からの支援を多く受けているから彼らに対して強く物を言えない…」

「そう言えば彼女も『獅子身中の虫』と揶揄していた事がありましたが…それでは?」

「まあ、王后がこれ以上強く出てくることはないでしょうね、そのかんにあなたは自分の地盤を固めておかないと。」

「重ね重ね助言痛み入ります。」

「まあ言っちゃあなんだけど、私もあなた達には協力して貰えたからね―――ああ、あとそれから助言をもう一つ、カルブンクリス…あなたはこれからこの魔界の誰よりも一番権力を握る事になるのよ、そうした者の心構えとして『偉そう』にしていなさい、今回みたいに私に謙譲へりくだってはダメ、『偉そう』にするのも王の仕事の一つだと思いなさい、逆を返して言えば『偉そう』じゃない王に誰が付いて行くと思うの、臣下に謙譲へりくだるのは自己満足は出来ても臣下自体は王を上司だとは認めないわ、それどころか侮って自分の要求を強く押し通してくるでしょうね、そうして舐められてしまえばその政権は長く続かない…折角あなたがこの魔界の未来ためを思って“立った”としても『政権打倒』の気運が出てくるでしょうね。」


今回の〖聖霊〗の訪問は得るものが多くありました、それに指摘された様にカルブンクリスはこれまでにも大きな組織の長に収まった経験などない…だから竜吉公主との接見でも以前の“癖”から抜け出せずに、ついつい今までと同じ様な対応で接してしまっていたのです。 そこを少し辛口に指摘する竜吉公主、彼女は長らく長である女媧の側近として大きな組織の長とはどうあるべきかを見せられていた事もあり、カルブンクリスに対しても“導き”を与えられることが出来ていたのです。


それからカルブンクリスは〖神人〗の天使族の下を訪れ。


「私がこの度新たな魔王と成ったカルブンクリスだ……です。」

「う~んなんだかまだ固さが取れないねえ?」

「そうですよねえ…私はこれでも智の研鑽に勤しんで来た手合いです、それがなぜか魔王とは。」

「けれど、こうなる事は予想はしていたんだろう?」

「最初にあなた様からお声を掛けて頂いた時には、よもやここまでは―――とは思いませんでしたが…私がルベリウス様に反旗を翻す為に立った時に、恐らくはこうなるだろうと。」

「ふふ―――いやあ~懐かしいねえ、マナカクリムで多くの聴衆を前に『街頭演説アジテーション・プロパガンダ』をしていた君を遠目から眺めていた頃が、さすがの私でもあの頃の君がまさか魔王になるだなんて思ってもみなかった事だしね。」

「思えばあの頃、あなたにお声を掛けて貰った時から私の“運命”は動き出した―――それに魔王に成ると私が決めたのです、ですからこれからはあなた達も協力をしてもらいますよ。」


〖神人〗は天使族の長である【大天使長】ミカエル…実はこの人物とカルブンクリスとはいささかの交流がありました。 そのきっかけがマナカクリムでの『街頭演説アジテーション・プロパガンダ』を境にして―――だった、その頃を転機にカルブンクリスの“運命”は坂道を転がる様に進み、ニルヴァーナとの出会い…そしてリリア・ホホヅキ・ノエル・ローリエ達を巻き込んで叛乱軍を結成、そして当時圧政に苦しむ多くの民衆を救う為に反旗を翻した…その結果当時の政権であったルベリウスは倒されカルブンクリスが新たなる魔王に登極をしたのです。


「新たなる魔王様が我等がミカエルにお会いなされたと。」 「ええ、最初は私達の助力もあり平身低頭ではありましたが、その後は毅然とした態度で協力を求めたらしいですよ。」 「ふ…それにしても、今まで何かしらの研究に没頭していた人物が、またえらい変わりようですな。」

「何ですかウリエル、不謹慎ですよ。」 「ああいやこれは失敬、けれど私は彼女…いや為人ひととなりを見てきているのでね、最初の平身低頭はまだ判るにしてもその後の毅然とした態度…ふふふ、これはどうやらエデン《ここ》へと来る前に何やらを吹き込まれましたかな。」

「(『エデン《ここ》へと来る前』…)それはもしやすると〖聖霊〗の―――」 「おっと、私は何も言及まではしていませんよ、とまでにしておくべきでしょうか。」


こちらは四大熾天使の内の“水”と“風”と“地”の会話、今回自分達の長である“火”の熾天使との接見を終えた新魔王への評定をしていた時に変わって来た魔王の態度に議論はなされたのです、すると“地”の熾天使は天使族の本拠であるエデンへと来る前にとはしていたのですが―――


「(ふふ、ここは少し遠慮をしておきましょう竜吉公主、今〖聖霊あなたがた〗は大変な時期に来ているでしょうからね、それに…)此度立った魔王も中々に手強い―――何しろ大悪魔ディアブロ】の“知”にあたっているのですからね…故に不要な弁は逆にこちらの命取りとなり兼ねなくもない、ここは慎重に用意をしておくべきでしょうか。」


ウリエルは、他のガブリエル・ラファエル・ミカエルとは違い多くカルブンクリスと接触をしてきただけに彼女の手強さと言うものをよく理解していました。 それは不要な発言はそれ自体が自分達を窮地に陥らせると言う事―――事実この後にあった魔界を復興させるための重要な会議の一つである勢力の者が不要な発言をしてしまい、ある勢力―――〖聖霊〗の神仙族の代表が陳謝を述べたと言う事例があったようですが不思議と魔王からはその事に対しての言及も『特にはなかった』事が伝えられたのです。



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