第26話 真実の語り部

カルブンクリス自身の師であるジィルガの到来によって“先”を促されたニルヴァーナとカルブンクリス達。 残すは『魔王軍総参謀』ベサリウスと『魔王』ルベリウスだけとなったのですが…玉座の間に詰めかけてみると、ルベリウスの姿は確認できたのですが肝心のの姿の確認が取れない……するとならば、ベサリウスは敵前逃亡―――?


         * * * * * * * * * *


実はそうではなく、ニルヴァーナ達が城門を突破した時に既に……


「私を呼んだ理由を聞かせてもらいましょうか。」 「素直に『降参』―――白旗を揚げさせてもらいますよ。」

「あなた…自分の勢力の旗色が悪くなって―――」 「ま、この機会タイミングじゃそう捉えかねないでしょうな。 まあ対外的にはそうしといて下さい…」


魔王軍作戦会議室内に2人……ベサリウスとヘレナが。 それにこの状況はベサリウスが作り出したものでした。 そう、この時彼は決意を固めたのです―――


「『対外的』とは―――では本意は?」 「これだけ尽くせりゃ旦那だって文句は言わんでしょう…それに―――もう、オレが限界なんですよ。 どこをどう突き詰めたって今のオレは暴君ルベリウスの配下だ、オレの繰り出す策謀の数々であんたら叛乱軍の被害も甚大なんだろ。 その時、ふと頭に過っちまうんですよ―――オレの大恩あるお人の哀しんでる姿が…」



オレは選択を間違えた―――魔界や魔王様の正規軍である『魔王軍』…そこは魔界に住む誰しもが憧れる花形の職場だ。 福利厚生もしっかりとしてるし、何しろ俸給が格別に好い、おまけに中央政権(魔王様)直属とくりゃ余程のへまをやらかさない限りは辞めさせられるって事もない。 以前までのオレは他人に依存する“ヒモ”でもあっただけにクズな生活を送っていた、そして挙句に他人を殺しちまって順当に行きゃブタ箱行きだ。 ただその時、服役中のオレに声を掛けてくれたお人がいた、当時はその名前ですら知らない『あしながさん』だと思ってたんだか、ある時ひょんな事からその『あしながさん』の事が判った…〖聖霊〗は神仙族の竜吉公主様―――そのお人を、オレの大恩ある人だと気付かずにこの手で捕縛をしちまった…そこからは機会を見計らう事に費やしたもんです、そしてに出会った。

それが吸血鬼族ヴァンパイア―――他人の血肉を喰らって生を紡ぐ種属…この人に公主様の救出を依頼する際オレの血肉を引き合いに出したんだが、その時ゃ断られた…けれども同時に『今はその時ではない』とも言われた―――『今は』…そう、じゃない、だったら……



「それにねぇ、どの面下げであのお人に―――て事なんですよ。 そこんとこはね、クズなオレでも判る……あのお人の為に役立てられなかったオレ如きが、!?」

「そう…それであなたはどうしたいの。」 「以前話したようにオレの血肉を喰らってくれ―――そしてあんたの一部となろう。」

「そして『行く行くは…』とこう言う訳ね。 判ったわ。」


この時をしてベサリウスの生は一旦終えました。 しかしその存在性はこの後も紡がれていく事となる…彼が喪失なったのは肉体だけであって、その魂は永劫にヘレナの内側に潜在する事となるのです。

{余談として『エルフの王女様~』の本編は、このお話しから350年後のお話しであり、そこでまた彼ら彼女達が活躍する事となるのです。}


         * * * * * * * * * *


そして愈々ニルヴァーナとカルブンクリス達は『玉座の間』に…


「ほう、ようやく来たか。 中々に良い面構えをしておる。」


その言葉を聞き、完全に理解をするニルヴァーナ達、そう魔王ルベリウスは不祥な女ニュクスによりたらし込まれたり操られたのでは……ない?


「(だ、だとしたら世間に広まっている“あの噂”は何だと言うのだ?)」

「(あれが“噂”だとしたら私達がやっている事は単なる『謀反』?)」

「(いえ、その前に…操られていないとするなら今まで私達を苦しめてきたまつりごとは―――!)」

「(す、総て正気の内で?けれどそれが許されない事など―――!)」


そう…たらし込まれたり精神操作によって操られてはないのだとしたら、彼のここ50年のまつりごとのあり方は…との見解に至ったのです。 けれどもそう、ニルヴァーナ達はそうであっても彼女達の盟主であり叛乱軍を主導してきた者にしてみれば……


「何故―――何故なのです…」

「うん?」

「何故なのです!ルベリウス様! 何故操られて等ないならこんなことを…民衆を苦しめるようなまつりごとをしたのです!」


そう…操られて等ないというのなら―――まさにそこが最大の疑問でした。 だからカルブンクリスはありのままをぶつけてみた―――すると魔王からは…


「『何故』―――なのですとそう問われてもな…余は知りたかったのだ、安定した治世から一転し忍苦を伴う治世にした時、民衆はどう反応するかを、な。」

「そんな理由……そんな理由でご自分をおとしめられるな! 私は…『賢君』と讃えられていた頃のあなた様に憧憬あこがれを抱いていた―――いつかはあなた様に取り立てられ、お側であなた様の手伝いをする事が夢だった…そして行く行くは―――あなたの妃となる事も。 けれどこれではダメだ…今のこの時勢で私の夢を叶えると言う事は、『暴君』であるあなたの片棒を担ぐと言う事だ…それではダメなんだ―――それでは…ダメなんだ!」


今、このきわになって初めて語られたカルブンクリスの動機、仲間内にさえ語った事のないものだっただけにその動機を初めて聞いたニルヴァーナ達にも動揺は奔りましたが、反旗を翻した立った事の意味はあった―――それに王を討たずしての叛乱に何の意味があるか…しかも。


「フッ、うぬであったか…ようやく思い出したぞ。」

「えっ―――」

「200年くらい前に余が講演会を開いた折に、講演会の後質問責めをしてきた女史がいたが…熾緋あかの髪と瞳―――なるほどうぬがそうであったか…。 ククク―――数奇な巡り合わせというものよ、なあ…名は、なんと申す。」

「〖昂魔〗は蝕神族出身、カルブンクリスと申し上げます。」

「『蝕神族』?聞かぬ名だ。」

「で、ありましょう…我が師曰くに『魔界の異質ヘテロ』と称されたくらいですから…」

「うぬに師が?」

「我が師は〖昂魔〗は不死族出身【大悪魔ディアブロ】ジィルガと言います。」

「ふっ、なるほどな…得心が言った。 それで?此度の叛意は師の発案だと?」 「いえ、この私自らの発案にございます。」


過去の事を思い出したルベリウスは、自身も強烈に覚えている特徴を持つ女史の事を引き合いに出してきたのです。 女史自身は『そうではない』と言うかもしれないけれどあれ程熱の籠った質問の応酬は彼自身の治政1200年間一度としてなかった、これはもしかすると自分に対しての売り込みアピールなのでは…とも思えなくもありませんでしたが、その講演会の150年後治政の方針が急に変わってしまった…そこでカルブンクリスは『どうしてなのか』の意見書を出したものでしたが返事は『梨の礫』だった…だからその理由を聞くと。


「その一番の解答は『返答せぬ』…と言う事だ。」

「それはどうして―――?」

「余が『返答』をすればうぬは得心が行ったか?敢えての虚偽を申し立てても良いのだがそれではうぬもすぐ勘付くだろう―――なれば真実を語れと?語れば今の様な行動に踏み切れたと…? 余が『返答せぬ』をしたからこそ、うぬ自らが立ったのであろう…この魔界をより良くしたい―――と、な。」


魔王は、待っていた―――自らの治政1200年に拘わらず永い間平穏・平安・平和な魔界よのなか…何一つ変わる事のない魔界を変える機会を。

平穏・平安・平和―――とは、一聞するとたいへん耳障りの好い言葉かも知れませんが、見方を変えるとなんの進展もない、進歩もない、変革など有り得ない―――それはつまり『閉ざされた世界』と同義である事を。 それはまた、魔界がどことも交流をしたことがなかったから、いわば『鎖国』も同然、それを“きっかけ”がどうしたかたちであれ、異世界からきた不詳の女がいた…そこでルベリウスは一考を廻らせたのです、この女を出汁に新しき魔王ものに取って代わられようと。


「(な―――何と言う御仁だ…直接相見あいまみえてみなければ判らなかったが、これほどまでの知略を抱えていたとは!)」

「(悔しいが―――勝てねえ…今動機を知ったお蔭で私達にはこいつを討伐たおせなくなっちまった。)」

「(けれど討伐せねば私達が叛いたのは全くの道化―――)」

「(ここ50年の評判通りだったらば勝ちの目はみえたものなのに……)」


「ふふっ、どうした―――余の本音を聞いて決心でも鈍ったか、だが…我が魔王城に土足で上がり込んできたからには逃がしはせん、勝手に戦意喪失するのは構わぬが余は計画通りにさせてもらうとしようぞ!」


『どうして』―――そんなになってしまったのか…   『どうして』―――こんな事になってしまったのか…   その解を知る者はいない。  用意されている解などない。


―――そのこたえは自分達で出さなければならない……


ニルヴァーナ達は魔王の動機を聞かされ、魔王を討伐す動機を見失ってしまいました。 けれども魔王にとってはそれでは済まされない、魔王にしてみれば眼前の5人は自分の体制に抗うべく反旗を翻した叛乱軍の中枢であり、いみじくも魔王城内を破壊した者達でもあったのですから。 討伐する動機を見失ったと言うのその理屈は通らない―――


魔王自らが剣をたずさえ“敵”と相対したのはいつ以来の事か、その前身は魔王軍の第一軍指揮官であり大将軍でもあったルベリウス、その彼が先代から禅譲されて以来より自ら剣を振るう事はなかった、その彼が―――肌を粟立てさせるまでに震える…それは自身に盾突いた反乱者―――にではなく、久方振りに剣を振るえると言う武人ならではのモノ。

彼は明らかに愉しんでいた―――『ラプラスの魔(獣)』等と言う“狩猟”にも等しい行為にも飽いでいた事もあり、久々の他人相手―――久々の強者相手に胸躍らされてもいた。

それにそこで知る―――ニルヴァーナもリリアもホホヅキもノエルも、魔王に君臨していたからとて玉座をただ温めていたからとて“王”は“王”―――だと言う事に。


「(中々に手強い―――しかもこれ程の手練れだったとは!)」

「(けれどお蔭で目が覚めたってもんだ、こいつは全身全霊を以て闘わないと失礼ってもんだ!)」

「(それに、丁度良い準備運動にもなりました…)」

「(ならば、ここはこれ!)≪水遁:霧幻陣≫」


「ほう…奇怪な術を扱いおる、この霧の結界の中では幻を見せられるか…」

「いかにも―――そしてここであなたを討つ!  ≪六道の一:修羅道≫」 「果てて貰います。  ≪一閃:伐採≫」 「こちらの大義の為、そなたにを葬らせて頂く。  ≪マーヴェラス・ストライク:フェニックス・ペネトレイター≫」


「ふむ、心地よい一撃一撃だ、うぬらと直接戦場で見えなかったのが悔やまれてならん…  ≪ゴライアス・ブレイカー≫」


「≪晄楯≫―――へへ…反撃は織り込み済みだぜ。」


「ほほう…今のを受け止めたか。 中々に愉しめそうよ、なあ?」


先手を打ったのはノエルの≪霧幻陣≫でした。 この水遁の術で魔王の目を惑わせ、そこから畳み掛けるように―――との思惑でしたが、相手はやはり魔王…自分達の初撃を防ぎ切られるのは見通せていたと視え、そこからの反撃技カウンターをリリアの≪晄楯≫で無効化……と、観戦ているだけでも手に汗を握る展開だったのです。


だったの…です―――が、観戦ていたは…


「(この展開が、この方自身が計画されいた通り―――だと? 本当にそれだけか…?本当にそれだけの理由で、魔界をこんなにも―――こんなにも!)」



私は判らなくなってしまった…。 私のあり方と言うべきか、私の存在意義というか…確かに私はルベリウス様が指摘されたとおり、今現在の魔界では喜ぶ者達が少ない…その多くが民衆達であり貧しき者達であったりするものだ。 そして一握りの僅かな富める者達が支配する…50年よりも前はルベリウス様はそこの処を善く調節していて貧富の差などそう感じさせないでいた―――なのに、ルベリウス様の慾望により魔界がこうなる事を望まれた。 王がそう判断したからにはそれが間違いではないのだろう…けれど、他にやり方はなかったのか? どうして―――どうしてやり方しか…!



カルブンクリスの内側で渦巻く情念は、封を外させる要因と成り得てしまう―――かつてその師より施されていた封は、その時を機会に解呪はずされ不完全な仕様システムにも支障を来たすまでになる。 然してそこで噴出したるは世界ごとらい尽くしたいと願う、ある暴威だった―――


「ぬっ?!なんだカルブンクリス…!」


「い、いかんまずい―――中断されるのは口惜しいが、撤収をするぞ!」 「ああそうみたいだな。 魔王さんよ一旦勝負はお預けだ、また闘う機会があったらよろしく頼むぜ。」 「今日はここまでと言う事にしておいてあげます、感謝するのですね。」 「そう言う私達もヤバいですって、そろそろ退散しますよ。」

「待てと言っている。 そもそもあれは―――」

「あれは…我が盟友の異質ヘテロとしたる所以≪“闇”の衣≫と言うらしい、言っておくがあの“漆黒くろい”のに触れたら最後―――とだけ言っておこう。 ルベリウスよそなたもここから離れた方が良いぞ。」


「なにを馬鹿な事を言っている!余が魔王なのだ、余が魔王ルベリウスなのだ!その魔王が魔王城の玉座より離れて何とする、それよりうぬらも方こそ撤収を急げ!」


「あんた…私らを庇って―――」 「我が盟友の師も言っていた、彼の≪“闇”の衣≫はらい尽くせるモノが無くなった時点で収まると。 ならばここを空とし―――」


「(…)あのニュクスとやらが言っておった、あの女をこの魔界へと追いやったのは“神”だと―――フッ、“神”が相手か…なんとも心奮える相手ではないか。 それに先程も申したように余は魔王である、魔王であるがゆえに玉座ここより離れる事は適わん、故にこそうぬらに託すとしよう…“神”殺しの偉業を。 そして魔界の民である事の誇りを見せつけてくるがよい!」


       * * * * * * * * * *


その、魔王からの言葉によってニルヴァーナ達は撤収を余儀なくされました、魔王一人を暴威の前に置き去りにして……

そして彼女達が城門付近に辿り着いた時。


「(―――ん?)何者だ…」

「(…)その様子を見た限りでは魔王も討伐せず、あの暴威から命辛々いのちからがら逃げてきた―――と言う処ね。」

「それがどうかしたのか、こちらもああなった場合撤収してもいいって言われてたもんでね。」

「けれどそれは―――所詮自分の生命惜しさ故…よね。」

「何者なんですか―――お前…そのフードを外しなさい!」


見知らぬ、存在が、自身を判り難くさせる為にフードを目深に被り待っていた……その声色からして女性と言う事が判りましたが、以前として気が抜けない、何よりここは魔王軍対叛乱軍決戦の地、それだけに一般民衆の立ち入り禁止は判っていそうなはずなのですが…


を?いいの、外して……」


見知らぬ女性がフードを外した時、衝撃的な事実が……


どこか―――挑発的な感じがした…  どこか―――懐かしい感じがした…  つい―――この前まで一緒に活動してきた…そう思いもした。


けれども彼女は仲間の身内を庇って落命をした―――はずだった?


「ローリエ?!いや…けれどもそんなバカな!」

「この私がそんなにまで似ていますか?その『ローリエ』と言う人に。」

「(…)ああ―――『生き写し』と言うくらいには。 そう言うそなたは?」


ニルヴァーナ達には一人、エルフの女性がいました。 そのエルフの女性こそ『ローリエ』であり、『エヴァグリム王女』だった。 そんな彼女と生き写しの、このエルフの女性とは?


「全く…本来の目的を見失っちゃうなんて、いかにもあの子らしいわ。 それに私は……名乗るのもアレだから適当で、なんなら『ローリエ』でも構わないわよ。」


その言葉の在り方でローリエとは全く関係がないとは言えなくなった、しかもローリエの死因もどこが理解した感じだった―――が、『本来の目的』?


「ならばローリエ…あなた今随分妙な事を言いましたね、何ですかその『本来の目的』とは。」

「あらあら、意外と聞き逃さなかったのね、けれどあなた達が退く―――と言うなら邪魔はしないわ、それどころかさっさと退いちゃってくれた方が私的にはやり易い…かなあーーーなんて。」

「随分な事を言うようじゃないか、お前達エルフがこれから何をしようって?この奥には魔王と、暴威が―――」

「その暴威とやらって、?」

「(な…)ルベリウスは、―――?」


結果的には、『ローリエ』を“自称”するエルフの女性に足止めをされてしまった―――そう見られたものでした。 それと言うのもニルヴァーナ達もこのエルフの女性の足止めがなかったのなら今頃は城外だったのに…なのに結果的に、追い付かれてしまった―――けれど、これが“本命”とばかりに…


考えるのが普通でしょうね。 それに…あーあ、面倒な事になっちゃって、結局私が出なければならなかったようね!」


纏っていた外套を勢いよく外すとそこには“光”を纏った一人の戦士がいたのでした。


片や“闇”を片や“光”を纏った者が対極をしている―――しかもそれは当然であるかの如くに…


「【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】よ、今より我が使命果たさせてもらう。 同じき時にこの世界にへと降臨おりたった我等が使命とは“破壊”と“調和”…今までは何事も起こらずにいたから経過観察のみでしたが、これ以上この世界を壊すと言うのならば、この【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】がお前を止めてみせよう!」


“闇”と“光”はそれぞれ相克をなし、対極する位置にあるとされる。 そして今回“光”の片割れである“闇”が活発化した事に伴い、火急的速やかな対抗処置が取られた…。


それに、『止める』。 “今”止めなければこの暴威【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】は与えられた使命のままにこの世界の総てをらい尽くすであろう―――事は容易に推測できたためか、【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】が阻止しようとしたのです。

しかしニルヴァーナ達も黙ってみてはいられないとして―――


「助太刀しよう…我が盟友が暴走をすると言うなら私が止めるのが道理。」 「なら、私も付き合わせてもらうぜ。 あんただけにその重責を負わせるわけにはいかねえ。」 「なにより、あなただけに武勲を取られては私達は置き去りにされかねませんからね。」 「ふっ、不器用な人達だ、素直に仲間なんだからと、どうして言えないものですかね。」


「(どうやら聞いていたより面白い人達ね。 あの人が戻ってきた折に一緒になって協力をしている者達がいる…とは聞かされてはいたけれど、けれどどうしてあなたがその生命を賭したかが判ってきたわ、。)」


“自我”を失い本能のままに蠢きたる【奈落さえも呑み込む“闇”ナラーカ】と呼ばれし存在を止める為に仲間達は一致団結しました。 それに、“自称”を『ローリエ』とした者はやはりローリエ本人と関わりがあった…?

それよりも魔王をらった者を果たしてどうやって?


「ほう…どうやらあまり望まぬ象とはならなかったようだな。」


「ジィルガ殿?!どうしてそなたがここに…」 「それに―――『あまり望まぬかたち』だってぇ?」


「それを知る必要はナレ達には、ない。 それよりも―――」


「どうも。 まあ“最悪”の事態は避けられたと言うべきかしら、あなたがこの人を躾けてくれたお蔭でね。」

「(……)本来なら、正規の手続きを踏まぬ不届き者の言には耳を貸さぬがワレの流儀ではあるのだがな。 を魅せられては断り辛かろうと言った処だよ、【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】。」


「(へえ…一応“私”に気を使って、この世界で通用させてる名前は使わないでくれるなんて、これは一つ借りを作っちゃったかな。)」


「それより、どうするのだ…を止めるのはいささか骨が折れるぞ。」 「大丈夫、そこの“彼女”のお仲間さん達もヤル気満々みたいだしね。」

「そうか、ならば多くは言わん。 各々持てる力を存分に発揮せよ、無論あの者を仕留める気概でな!」


すると、〖昂魔〗の【大悪魔ディアブロ】として知られるジィルガがいつの間にかこの戦場に到着していました。 そして“自称”『ローリエ』と二・三会話を交わすと、どうもこの2人もまた知り合いだと言う事が判ったのです。 しかも、今のこの事態を創り出したのは“自称”『ローリエ』こと【閉塞せし世界に躍動する“光”グリマー】がジィルガに依頼をしたのが事の発端だった?


それよりも、いずれにしても状況は待ったなしになったのです。



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