第9話旧王国
幻影の鉱石場を離れて茂みを抜けると、広大な大草原に抜け出た。
改めて後ろを振り返ると、五年前の城壁が崩れ落ちて木々が芽吹き以前の面影をなくして幻を見せるかのように揺らぐ無数の光が反射していた。
「こんな場所にもう一度来るなんて思わなかったよ。けどこれで海に行ける道筋にたどり着いた…っと。錬金術で作ったこの"ただの石"は効力なくしたみたいだね」
障壁を作り出した錬金術の防具品、名前の通りごく普通な石のくせに所有者を守る力がある。
これがなかったら明らかに負けていたよ。
手のひらサイズとはいえ、威力は中々でドラゴンすら砕けないらしい。
錬金術とは、素材と素材を組み合わせて別のものを作り出す…言わば、僕のティマーでサッキュッパスが出来てしまうと考えれば簡単である。
「これからどこに向かうのルイス?」
「王国と真逆の場所に出てしまったし、こっち側って山脈ルートなんだよな」
「山脈って…え? 防寒着ないよ!?」
「大丈夫、大丈夫なんとかなるはずだよ」
「その確証どっから来るのよルイス!? あ、待ってよ―――」
草原をスタスタ歩き、道中モンスターと出会うがメアリー後からでほとんど消し飛んだ。
こうして、山脈の近くにある街にたどり着いたのだが――――。
「ルイスこれって…」
「あまり見ない方がいい」
街は血だらけで、何かを引きずったような痕跡や爪だろうか? 壁に三本の爪痕があった。
血なまぐささ、これが鼻腔を貫く。
息をするだけでも、とてつもない"悪臭"だ。
血の色具合からして、ホント最近だ…何が起きたんだこの町で――――?
「そういえば、ここに来る前の村もこうじゃなかった?」
「うん、しかもこの爪の跡は…どう見ても"モンスター"って感じはしないけど」
「え?」
「獣人族、まぁ呼び名を変えるなら
「でも、その種族の人達は…街とか襲わないでしょ?」
「普通ならね」
「どゆこと?」
「それが分かれば苦労はしない―――メアリー避けろ!!」
僕はメアリーを右手で押し飛ばした、その間をものすごいスピードで駆け抜けて街の壁に激突した。
「へ? な、な、何今の!?」
「掠った…けど、なんでまた"団長"が暴れてんだ?」
「団長って、もしかしてルイスを追放したギルドの?」
「うん、獣人族の血を引く人間だよ―――」
砂煙から、ゆらゆらと人の姿が映る。
「どーも? 初めまして? このくそ臭い悪臭が漂う町にようこそ?? 来た道をもどるバカな最弱のカス…何しに来た??」
「何しに来たもないさ、お前が呼んだんだろ僕をな」
「クックック…相変わらず馬鹿すぎてアホだなぁ?? おかげで手間が省けたぞ!!」
再び獣となり、僕に向かって走る。
狼みたいなその姿に、圧倒される。
けど、あの時のような最弱な存在じゃないんだ!
目の前にメアリーが現れ弓を構えて、かなりの至近距離で矢を放つ。
団長は背を反る様に回転して、着地して再び人の姿をする。
「女連れかよ? 愉快なパーティーだな??」
あの至近距離から、回避は普通なら不可能…そう獣人族《ビースト》だからこそ出来る力だ。
桁違いの速さと力で相手を翻弄する力があるのだ。
負けずにルイスはこう言い返す。
「全裸のやつがそれを語るな!!」
「そーよ、私はルイスの体しかきょうみないんだからね!! (ヨダレと目の輝き)」
「…メアリーそのヨダレと目の輝きは?」
「はっ!? ち、違うのよこれは!!」
「全然違くないよ、変態さん」
「変態じゃないよ!! ちょっとだけ変なこと考えただけで…はっ!?」
「……」
「そ、そんな冷たい眼差ししないでよ…」
そんな会話の最中でもお構い無しに、元団長は爪で地を削る。
「俺をスルーするとは何事だ! この最弱無能の使い
「あ、いたのか」
「さっきから居たし、舐めてんのかてめぇ!!」
「床ペロとかするつもりないよ獣くん」
「あぁ!? てめぇ…調子に乗ってんじゃねぇぞカス!!」
今までの僕なら逃げていた、けど…君に復讐する為にここまで来たんだ。
「おらぁぁぁぁ!!」
元団長の初撃を飛び上がり回避する、壁を粉砕する剛撃だ。
メアリーは弓を構えて矢を放つ、元団長の頬を掠りルイスへと飛ぶ。
「はっ…どこ狙っ―――」
ルイスは小さな杖を天に翳して右手に魔法陣を展開する。
「喰らえ、弓矢の天気雨《アーチャースコール》!!」
メアリーの矢が魔法陣にぶつかり跳ね返り、無数の拡散矢なり元団長を襲う。
轟音が馳せたが、元団長は腕を組んで頭をガードしていた。
「この程度か? だからお前は弱いんだ…!」
元団長は地面を強く踏み鳴らす、魔法陣が浮き上がる。
「見せてやるよ、これが最強の戦い方だ!!」
ゆっくりと構えて、虚空を殴るとルイスの腹部に打撃を受けて吹き飛ばされる。
魔法により殴る空間を短縮して、物理的にルイスに攻撃を当たる仕組み…これが元団長の最強と言われた―――。
「空間無視の拳《エリア・フリーアタック》…こいつに勝てる敵は居ねぇんだよ!デメリットとしたら獣人族の力が使えないが…殺せるなら手段は選ばない。有難いと思えルイス!」
吹き飛ばされた、次に蹴り飛ばされる
空高くルイスは飛び上がる。
メアリーは元団長に矢を向けたが、瞬時に殴られ弓が壊れメアリーの右手が損傷する。
「うぐっ……!?」
「おいおい…邪魔をすんじゃねぇよ。あいつをぶち殺したら次はお前だ」
「…そうはさせない! 殺させないわ!」
「まだやる気か、 いいね…雑魚が負けない時の眼差しが実に…腹ただしい!」
メアリーは魔力で作った剣を左手に持ち走る、元団長の皮肉な笑みがニタァッと浮かべていた。
「はぁぁぁぁ――――!!」
メアリーは飛び上がり切りかかろうとした、元団長はねっとりした口調で言い放つ。
「空間破裂《エアーバースト》―――!!」
空気の破裂音が鳴り響き、轟音と共にメアリーは壁を突きぬけて吹き飛ばされていく。
「ヒッヒッ…ハハハッ…アハハハハ――――!! どぉした雑魚共!! 思い知ったか!!」
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