第5話

 真夜中過ぎに起きて、何か食べに行こうと部屋を出ると廊下で猫背の小男とすれ違った。


「兄ちゃん、新入りかい?」男が振り返って聞いた。


「昨日の朝来たばっかです」


「なんだって迷宮守りに?」


「なんのが簡単だからですよ」


「そうだな、つまらんけどな」


「仕事ってのはつまらんもんです」


「ああ、あとで部屋に来いよ、安酒あるからよ」


「安酒はいいです」


「そうかい」


 レオンは公社の地下に入った。宴会をしている迷宮守りがうるさいので、何か簡単な食いものを持ち帰って食べるつもりになった。肉が食いたかったのでベーコンを買い、部屋に戻った。それを齧りながら、自分が労働をしたくないと思っていることにレオンは気づいた。しかしこのままだと順調に金はなくなっていく。いったいどうなっているのか。なぜ生きていくためにやりたくもないことをしなければいけないのか。そのうちあの駅にいたエルフのように目玉が蟲になったり幻覚を見たり髪の毛が燃えたりいきなり殺意が湧いて周囲の人々を無差別に攻撃したり、あるいは魔物になって狩られる――それか運が良ければ超常の力を授かり、出世するのだ。


 いずれにしても金がなくなるまでは休みたいもんだ。レオンは一日十三時間寝ながらそう思っていた。

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