(2)青野のウワサ

◇◇◇学園都市・学園長室◇◇◇



「……では本気であのアオノと言う者を学園都市の教師に?」


「そうだね、エーグルを圧倒した事、何よりあの学園都市の結界を破壊した魔力。全てが私の予想を超えすぎていて困るくらいだが……確かに彼はイオの言葉通り、結果を見せつけてきた」


学園長室にいるのはラーベスとフォリアの2人である、2人は青野とイオリアについて話をしている。


「確かに、あの時間なら学園都市の多くの住人、生徒、教師が見ていたでしょう」


「それに学園都市の者なら相手の魔力を読み違える事もない、あの結界を消し飛ばした謎の魔法がアオノの魔法である事は、彼の試合を目にした教師や生徒なら直ぐに分かるだろう」


「確かに、よくイオもあんな者を見つけてきたものですね…」

「全くだね、私も長年外を旅した事があるが…あんな桁違いの魔法使いなんて1人もいなかったよ」


「……やはり世の中は広く、そしてイオにはそう言う者と出会う才能がある子なのでしょうか?」


「そうだろうね、彼程の魔法使いが気まぐれでもこの学園都市で教師になるだなんて……余程イオが良好な関係を築いていたからだよ」


「基本的に賢人や大魔道と呼ばれる人々は世捨て人の様な方が多いですからね」

「そこまでしなければ魔法使いとして高みには行けないと言う部分もあるのさ、かつての私もそうだった……」


ラーベスが過去をしばし懐かしむ、しかし直ぐに話は青野とイオリアに戻った。


学園都市は何よりも実力と実績を重んじる、青野がただ青空を見たいと言うモルトベーネの願いをエーグルを倒すついでにした事だが、それと知るわけもない2人にはただ途方もない魔法だけが印象に残っていた。


それは2人以外の魔法学園都市の人間も同様だ、青野の事なんてそのウワサもまるで知らない者は結界が一時的にも消えた事は恐ろしいと感じる者が殆どだった。


そんな者達には学園都市側から青野の存在は伏せられたままそれらしい理由をでっち上げて説明した。

学園都市としても普通に優秀な魔法使いなら何の隠し立てもしなかったが……青野は事情が違いすぎたのだ。


教師の中には青野を他の大陸から海を渡ってきた賢者だとか魔法大国の間者だと考える者がいたりもした、生徒達の間では青野の名前が一気に広まった。


青野に負けたエーグルが起こした問題は早々に忘れ去られた、これは学園都市側が自分達が選んだ教師の愚行を隠蔽した事も理由である。


エーグルの事を青野のウワサで上書きしたのだ、但し結界の事とは離してウワサを広げると言うのでそれを請け負った一部の人間は大変である、ここでも青野に恨みを向ける者がいたとかいなかったとか…。


「ねぇ?アオノって言う外から来た魔法使いが教師になるらしいよ?」

「いきなり教師?何それ、ソイツはそんなに優れた魔法使いなの?」


「それが魔力は大したことないらしいぜ?」

「教師どこらか生徒のオレらよりも低いとか言ってたぞ?」

「なんだそりゃあ?じゃあ教師になるって話はガセで決まってんだろう?」


「それがイオリア先生が熱心に推薦してるって話だよ?」

「……あのイオリア先生が?なら魔力がショボいなんて事があるの?」


「あの結界を破壊したって話を聞いたわ!」

「…………それは流石にウソでしょ」


ウワサの青野は雑魚であったり物凄い魔法使いであったりと全く要領を得なかった。

それ故に余計に多くの生徒達の関心を引いていくことなる。


無論、当人は一切知らない所での話である。


そしてラーベスとフォリアは1つの結論を出した。

「ではアオノの教師としての採用は来年の春、正式な入学式の時にと言う事ですね?」

「そう、我が学園都市は飛行艇での行き来の回数が限られている、だからその度にをして生徒を歓迎しているが」


「本来の入学式は、やはり春、桜が咲き誇る季節に限りますからね。今年の光桜ひかりざくらの準備も順調との事ですよ?」

「それは素晴らしい、あの魔法の桜を見ながらの花見酒は私も楽しみで……」


「………学園長?」

「…コッコホン、それではイオにはその様に伝えてくれ、彼女、事ある毎に私に青野はいつ教師になるのかと聞いてくるんだよ」


(ぞっこ……アレと言うヤツね。本当にあの子は…)

「分かりました、その辺りについても伝えておきますのでご安心を」

「うん、頼むよ」


こうして青野の教師就任は決まった、しかしそれはまだしばらく先の話の様である。

しばらくはおっさん学生として学園都市の授業を受ける事になった青野である。


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今日は後2話投稿します。

次に投稿するのは日曜日です。




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