(13)エーグル暴走

◇◇◇学園・教室◇◇◇


「そしてここからは……」

「………………」

今、中年はイオちゃんの授業を学園の教室の後ろの方で見学している。


魔法関係の知識は既に頭の中にインストールされているけど、イオちゃんの授業は魔法以外にも様々な分野に話が広がるので聞いていて面白い。

彼女って本当に優秀な教師なんだ。


ちなみに教室の生徒の年齢層は十代が殆ど、たまに二十代とか小学生?って感じの小さな子がいるくらいだな。

三十路野郎なんて皆無だ、孤独だね。


この状況で私に生徒になれとかイオちゃんの精神のタフさには驚きだよな。

まぁ生徒になって中年の失われた青春時代を取り戻す事もやってみたい事ではあるけど。


「そしてこの状況で最も効果的な魔法としてあげられるのが複数人をまとめて気絶させられる魔法ですね……」

「イオリア先生、ならここは……」


ちなみにこの教室にはエルフ3人娘までいた、やっぱり専攻してる学科にイオちゃんのを選んでいたんだな。

私はいつもお喋りしてるイメージしか持ってなかった3人。しかし授業は真面目の受けていたので話し掛けたり出来なかった。


「オイッあのおっさんって……」

「ああっ多分アイツが…」

「……………?」

何やら中年をチラチラと見ながらはなす男子生徒の声がした。


コソコソと話をするのは例の試合での結果と、それを元にしたウワサのあれこれ。

「エーグルのヤツをコテンパンにしたらしいぜ?」

「ああっ何でも人目がなくなった隙を利用して魔道具を使ったらしい……」


「けど俺はエーグルがやられたって聞いて逆にスッキリしたね」

「確かに…アイツ出来ないって判断したヤツは当たり前見たいに見下してきたからな」

「そうそう良いクスリだよ、それに魔道具使おうが負けたのはエーグルじゃないか」


「学園の教師ならそれでも勝って実力を示せよって話だよな?」

「そうそう、なんかこの前喫茶店でさ…」


ほうほうっ案外中年の事を悪く思ってる人々ばかりではないらしい、まぁあのエーグルが予想以上に嫌われていただけかもしんないけど。


「コラッ!そこっ私語は慎みなさい!」


イオちゃんに速攻で気付かれた、授業中のお喋りとか許さなそうだもんなイオちゃん。

そんな所もクールの女教師らしくて良いよな。


中年的には窓から差す光とこののどかな授業を風景を見ながら思う事は1つ。

………授業中に当てられる事がないって立場で教室にいれるのって最高~~。



◇◇◇学園・とある研究室◇◇◇



「アオノ!許さんぞアオノ!」

積み上げられた書類の束や試験管やらフラスコが並んだ研究室。そこはエーグルの魔法研究をする為の場所であった。


アオノに負けたエーグルは、自身のプライドを傷つけられた怒りでアオノがとにかく何か反則をしたのだと主張したがイオリアには相手にされなかった。


そんな証拠など何もないのだからそれも当然の事、しかしエーグルの逆恨みは更に強くなった。


(あんな冴えない男が、あのイオリアと共に学園内にいる事などあっていいはずがない!彼女はこの私にこそ相応しい女になんだ!)


イオリアへの思いを慢心によって歪めたものにしてしまっているエーグル、この男の中では相手にも選ぶ権利があるとは考えていない。


自身に選ばれる事がとても名誉な事だと考え、その事に感謝して然るべきだと本気で思っている。

つまりイオリアは自分のものになることが当たり前だと本気で思っていると言う事だ。


どこぞのおっさんが知れば本気で引くほどの自己中野郎である。

学園都市のエリート思考とエーグルのプライドが合わさり、かなりはた迷惑な存在になっていた。


彼の中では自分とイオリアがくっついて当然、その間にのほほんと現れた時点で青野を認める気などさらさらなかった。


今回の試験でも自身が試合の相手をして軽く手足を骨折くらいさせるつもりで最初からいたのだ。

しかし結果は何が何だか分からないうちに気絶させられて敗北。


普通の魔法使いならここで実力差について少しは考えるがそこはエリート自負が物凄いエーグル、そんなことは全く考えずに自分がやられたのは青野が卑怯な真似をしたのだと速攻で結論づけた。


その後も自身に都合のいい想像だけで青野とイオリアの元に向かい、盛大に自爆、意中のイオリアにも軽蔑される結果となった。


そしてその結果も全て青野への坂恨みへと変わるのだ。


(アオノアオノアオノアオノアオノアオノーーーッ!ヤツだけは八つ裂きにしてやるぞ!必ず!必ずだーー!)

「そしてイオリア……君には誰にその心を捧げるべきかを教えてやろう、コイツでねクククッ……」


そんなセリフを言うエーグルの手には小瓶が握られていた。それは魅了の魔法が付与された魔法薬だ。

飲ませた者の心を奪い、しばらくの間相手を自分を愛させる魔法薬である、当然ご法度な品物だ。


エーグルの暴走は止まらない。



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今日はこの話も入れて3回投稿します、そして次に投稿する日は今週の土曜の予定です。


良ければブクマや星があると嬉しいです。




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