(13)モルトベーネちゃん
「そうか、分かったぞ。その分身を替え玉にして旅を続けると言う訳だな!」
「その通りです、そしてこの分身が見聞きした者は本物の私と共有するんです、だから…」
「この魔法で創り出した私は完全に私1人の人格で動く二つ目の身体だと思って下さい」
前半を本物の私が、後半を分身の私が話す。
要は2つのスマホで別々のスマホゲーをする様な者だ、全く違う事を平行しても、操作するのは結局私自身だ。
「もちろん教師になるのなら生徒に魔法関係の授業を教える事になるでしょう、ならば時には本物の私が行く必要があるかも知れません。その時は魔法で……」
「ん?しかし転移魔法でこの学園都市には入れないじゃないのか?」
「確かに、しかし転移魔法以外にも空間を越える魔法はあるんですよ?」
そこがどんな場所でどんな魔法で移動を制限された場所でも移動出来る魔法なんてのも私は持っていたりする、まぁそれを使うことになるかは知らんけど。
「つまり旅は続けるので何も問題ありません、この学園都市ではイオさんが何やら動いているのでしばらくは観光がてらのんびり過ごしましょう」
「分かった、お前がそう言うのならその言葉を信じよう」
シアちゃんとの話がまとまったその時である。
ピンポーーン。
「「………………ん?」」
今変な音がしたな、チャイム?いやっまさかな。
するどシアちゃんがベランダから部屋の方に向かう、そして部屋の中を何か確認する様に見回していた。どうしたのだろう。
「……恐らくだが、今のは出入り口に客か誰かが来た事を各部屋に知らせる物だ。魔法技術を使った物だろうな微かに魔力の流れを感じた、人間は細かい事に魔法を利用するものだな」
マジか、ファンタジーな世界のチャイムって魔法なんだ。そんなものまで魔法とは、ある意味恐れ入った。本当に芸が細かいって話である。
「それなら誰かこの屋敷に来た訳ですか?なら見に行ってきます」
「むっなら俺も………」
「2人で出迎える必要はありませんよ、この屋敷も十分見て回りましたし気に入った部屋で休んでいて下さい」
シアちゃんはまだ何か言いたそうだったが、屋敷を訪れた人も気になるので私は早足で向かった。
そして屋敷の出入り口についたので両開きの扉の片方を開ける。
すると扉の向こうには少女がいた。
「こっこんにちは!」
「はい、こんにちは……君は?」
少し天パ気味の肩まであるクリーム色の髪に黒縁メガネをかけた文学系少女である。若干目元が髪で隠れ気味。
しかして中々立派な物をお持ちでありますな。
服装は学園都市の生徒の制服ではなく作業着に近い野暮ったい感じの服で、手にはホウキとかの掃除用具一式を手にしている。
「ワッワタシはモルトベーネと言います、ベーネとよく呼ばれています。今日からこの屋敷の掃除係を学園都市から任されて来ました!」
背筋をピンッと伸ばしてハキハキと話すモルトベーネ、ベーネちゃんか……学園都市から?。
「ベーネさんですか、私は青野と言います。貴女は学園都市の生徒ではないんですか?」
「もちろん生徒ですよ………ただ…」
彼女の背中にどよんとした影が現れた!。
「ワタシっていわゆる落ちこぼれで……学園都市に連れてきてもらったのは良いんですが、親もいないし成績も悪いので学生を続ける為の資金はこうやってバイトをして自分で用意しなければいけないんですよ………フフフッ」
「なっ成る程~~」
学園都市から得体の知れない中年野郎を探りきたスパイちゃんなのかな?って思ったけど違うらしい、なんか話してる事には嘘を言ってる感じはしないもん。
特にお金に困ってる当たりの話は切実って感じがひしひしと感じた。貧乏ってヤツは本当に嫌なもんである。
ってか女の子にやしき掃除をやらせるならせめてあの野暮ったい作業着じゃなくてメイド服とかさ~~、汚れてもいい服って事なんだろうけど。
ファンタジーに夢を見る中年はガッカリだよ。
「あっもちろん給金は学園都市から貰っているので安心して下さいね?」
そうなの?なんかチップ的なヤツを渡してあげたくなってる中年野郎なのだが……。
そんな事を考えてる中年とは裏腹に、ベーネちゃんは持ってきているホウキとかギュッと握ってやる気満々だ。
「さてっ!では早速この屋敷の掃除を─
あっベーネちゃんの腰にピンク色の長い何かが巻き付いたぞ。
始めましょうかぁああーーーーっ!?」
「ベッベーネさん!」
彼女はピンク色の何かに思い切り引っ張られ一瞬で私の視界から消えた。
直ぐに視線で追うと彼女が引っ張られる先には………何だあれ?。
なんかカメレオンの頭を模した様な変な盾が宙に浮いてた、なんかキモいぞ?。
「オイッ何だよアレ……」
「……多分また魔法生物研究課の連中が何かやったんじゃないか?」
「ああっあの……」
「……………」
魔法生物、うちのゴーレムツインズ見たいな魔法で生み出された特殊な生物の事だな。
成る程、それならあの珍妙の姿も納得がいくわ。
「だっ誰か助けて下さい~~~!」
あっいけねベーネちゃんを助けなければ。
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