(11)中年魔法使いを推薦する
イオリアは進む、当然久しぶりに魔法学園都市に顔を出した彼女には知り合いやら同僚からの挨拶攻撃が迫る。
割と学園内でも人気があった彼女、普通に笑顔で対応するが足は一切止めないで進む。
実はイオリア、学生の頃から魔法の勉強であれ実験であれ自身が没頭出来る事やものを見つけると前のめりになって度々回りとかをガン無視して研究を続けてしまう性格をしていた。
そんな性格もこの学園都市と言う学び舎である場所では決して珍しくはなかったので変人の類として扱われる事がたまたまなかっただけなのだ。
真面目で冷静で優しい………けど時たま変わった事を言い出したり行動力がおかしな方に発揮されるクールビュー(笑)。
それがイオリア=マナスクラブと言うエルフの学園都市での人物像である。
そんな彼女が、戻ってきたらかつての学生の時の様な輝く程の笑顔でいるのだ。
彼女を知る者は『ああっ何か夢中になってる顔だな』っと内心これから起こる事を予想していた。
コンコンッと理事長室のドアがノックされる。
「……入りなさい」
「失礼します、ラーベス学園長」
部屋に入って来たのがイオリアだと分かるとラーベスの反応が変わった。
「おや?イオリア君じゃないか、やはり戻って来ていたんだね?連絡の1つも魔法で寄こさないので心配していましたよ?」
「すみません、この学園都市についてきてもらった方々を案内する事を優先していて報告が遅れてしまいました」
中央広場で見せた様な威厳のある感じではなくもっと気さくにイオリアと話をするラーベス、2人は元々教師と生徒と言う関係もあり二人きりになるとこんな感じの会話をする。
「そうか、いやっ君にも事情があるだろうそれも仕方がない事だよ。それで?学園都市から旅に出て外では新入生の勧誘活動をしていた訳だが……」
「素直に言いますと新しく生徒として学園都市に案内出来た子はいませんでした」
「………そうか」
イオリアが浮かべた表情、それは何かを悲しむ様な物憂げな表情であった。
それを一目見てラーベスはそれ以上の事は聞かない事にした。
「………しかし、その代わりにとても素晴らしい方に出会う事が出来ました」
「ほう…それは一体?」
イオリアの表情が一変する、それを見て今度はラーベスも驚いた。そして……。
(このイオリアがこんな顔をするって事は……よっぽど変なのを見つけて来たのだろうな~~)
どこぞの中年が聞けば少し傷付く事を内心つぶやいていた。当たりだ。
ちなみに変人が多いのは学園都市の特徴でもある。
「……成る程ね、それは是非私も会ってみたいな」
「ラーベス学園長にそう言っていただけると思ってました。そしてもう一つお話があるのですが…」
「なんだい?何でも言ってくれたまえ」
「実はその方、名をアオノさんと言う人間の魔法使いの方なんですが。私は生徒じゃなくて教師として推薦したいと考えています」
「…………………………イオリア君?」
イオリアはラーベスを真っ直ぐ見つめてそう言った。流石のラーベスも額に汗を浮かべる。
(ああっこれは、欠片も冗談の類ではないようねハハッ………)
「………確かにこの学園都市には本当に優れた能力がある者を教師として推薦する事が出来るわね」
学園都市は何処までも実力主義、故に学園都市では立場のある者には割と自由に出来る権利なども与えられている。
推薦と言うのも優れた才能や資質を持つ者を世間に埋もれさせない様にするという学園都市の方針故である。
「はいっ今回私は優れた生徒を連れてくる事は出来ませんでしたが、代わりにそのアオノさんと言う方と出会う事が出来たんです」
(今までイオリア君がこの手の推薦なんてした事がない。変なのに騙されてる可能性も考えなくちゃいけないかな……?)
ラーベスはイオリアを昔から知っている。
つまり真面目で実力もある魔法使いだが、割と世間には疎く、騙されやすいエルフだと分かっている。
(彼女って1度決めたらまず意見を変えないし、どうしょうかな……いやっそもそも最初から騙されてると決め付けるのもアレだし……)
「ふぅん……それならやはり私を始めとした学園都市の教師達で後日、面接と実力試験が必要となる事をその者には伝えてくれるかな?」
「分かりました、その様に伝えます」
イオリアは伝える事は伝えられたと満足してその場を後にした。ドアが閉まりイオリアが退出するとラーベスは軽く溜め息をついた。
「ハァッ……確かに教師達には他者を推薦する権利もあるけど、本来ならそれって優秀な学園都市の生徒に限った話なんだけどね……」
(外から来た魔法使いをいきなり推薦して教師にか、実力主義のこの学園都市故に、そんな真似が果たして通るかどうか……その魔法使いがただの詐欺師なら地獄を見るよ?イオリア先生……)
イオリアと当の青野以上に心配をする事になったラーベスであった。
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