(10)バトル強制終了
「フレイムバースト!」
自身の魔法が効かない、そんな事はモアにも分かっていた。しかし負けず嫌いな彼女は絶対に途中で負けを認めたりしない。
彼女の魔法が赤い爆炎となって青野の魔法とぶつかる、しかし魔法鎧を消し去る事は出来ない。
中のおっさんは余裕綽々でペットボトル飲料をゴクリと飲んでいる。モアはイラついた。
(く~~~っ!この中年オヤジ、本当にムカつくのよ!絶対に負かしてやるわ!)
「……あの~~?そろそろお終いにしませんか?」
「まだよ!まだ私の魔力は尽きていないわ!」
気迫のこもった返事を返すと同時に、モアは魔法で炎の槍を3本程生み出した。
それを発射し青野に攻撃する、しかし魔法鎧はビクともせずに全ての魔法を弾き飛ばした。
モアは更に跳躍して青野に接近する、1回のジャンプで十数メートルは軽くあった両者の距離を飛んだのだ。
(モアちゃん………まさか)
「……ハァッあの負けず嫌いちゃんめ」
モアの親友である2人は、モアの次の攻撃が分かったのかそれぞれ違う反応をしていた。
しかしモアはそんな事はお構いなしに魔法を発動させる。
「我が魔力によって生まれ出でよ!我が一族の秘剣、
「…………アレは」
モアの右手に現れたのは精緻な細工が施された、正に幻想的な剣であった。
その刀身はまるでルビーを刃の形にした様な真紅の美しい刃となっている。
青野は一目でアレが強力な魔力剣であり……かなりお高そうな物だと見抜いた!。
(あ~~いうので攻撃されるとこっちも困るんだよな、魔法鎧で防いで剣をポッキリしたらこっちまで迷惑がかかる事になるかも知れないぞ?どうしょう…)
「フフッ!この宝剣に込められた魔力の高さはアンタにも分かるみたいね!次の攻撃がラストよ」
青野の表情を見て、あさっての方向に勘違いするモアである。
後々の事を考え青野は空賊達の大半を無傷で無力化した魔法、
(流石に女子に攻撃魔法とかあんまり使いたくないしな、仕方ないここは……)
「行くわよ!ハァアアッ!」
モアが剣を構えて突撃体勢を取る、青野がそれを止める為に魔法を発動させようとした時。
「ハイハイ~~そこまでだよモア~~」
「なっ!?ちょっと離しなさい!どう言うつもりよシーラ!」
モアを羽交い締めにしながらシーラの待ったが入った。いつもはヘラヘラしながもこの青色の髪のエルフも中々の使い手だと青野は思った。
何しろモアの懐に一瞬で入り込んでの羽交い締めだからだ、早々出来る芸当ではない。
そしてシーラはのんびりした口調でモアに語りかける様に話す。
「どう言うつもりよ~~ってそれはないでしょ?もうあのアオノさんって人が相当な腕の魔法使いって事は分かったじゃないのよ~~」
「!……そっそれは、その……」
「モアの攻撃魔法をアレだけ簡単に弾き飛ばせる防御魔法とか学園都市の先生達でも見たことないよ?あんな魔法を使える時点で十分強いって分かってたでしょう?」
「ぐっうう……」
「…モアちゃん……途中からそんなのどうでもよくなってたんだね……」
「ホラ、それにそろそろ私達が受ける授業の時間もあるし……」
「わっわかったわよ!アオノ!次は……次こそは……」
「「失礼しま~~す」」
「どうぞお気をつけて~~」
ミラも参戦してモアへ追撃の姿勢、モアはその赤色の髪が表す様にかなり攻撃的な性格をしていた。そしてかなり実戦基準で魔法の良し悪しを判断する脳筋気味な魔法使いエルフだ。
しかし親友の2人に攻められるとなると分が悪いと見てその手の凶魔剣を消し、2人に引っ張られて学園に向かう様だ。
これにて2人の戦いは終了したのである。
青野は3人のエルフを見送っていた。
◇◇◇魔法学園都市・職員室◇◇◇
そこは青野的に見れば職員室と呼ばれる場所である、魔法学園都市で現役で教鞭を取っている魔法使い達が集まり自身の手がける様々な仕事をしている場所である。
但し学園都市は大きな都市なので教師の数も生徒の数に比例して多くなり、職員室も幾つも用意されている。
しかし青野あたりからすればここは完全に職員室かと言われるとそうではないと思う事だろう。
何故ならそこはそれぞれが完全に個室でかなり広く、そして内装もファンタジーゲームの建物の内装を再現した様な謎建築であったからだ。
イメージするなら規模の大きなネットカフェに近い、幾つもの天井まである本棚と収められた書物。
間隔を開けてそれぞれに個室が用意されているのだ。ネットカフェならぬ西洋な城カフェである。
歩く廊下も長く横にも広い、天井も十数メートル以上の高さである。そこを紫色の髪をしたエルフの女性が歩いていた。
美貌のエルフ、イオリアである。
そのグラマラスな抜群のスタイルはどこぞの煩悩おっさんの心を常に試しているかの様だと言われるエルフ教師だ。
彼女は久しぶりにこの魔法学園都市に帰って来た。
本来なら仲が良かった友人と会ったりとしたいこともやるべき仕事も山積みなのだが。
しかしイオリアは目の前に集中してしまう物が出来るとそれに全力投球する系のエルフだった。
目下その思考を占めるのはどこぞの冴えないおっさんだったりする。
それ故にイオリアは思考も視界もグウゥ~~っと狭まっていた。
「あっイオリア先生!お久しぶりです!外では優秀な新入生を見つけられましたか?」
「これはラパーム先生。実は今急いでまして……ラーベス学園長はどちらにいますか?」
「え?ラーベス様なら多分学園長室に……」
「分かりました、失礼します」
「はっはい………」
目的が見えたら一直線で最短を行く、どっかのおっさんの悪影響なのかイオリアもイノシシが如き猪突猛進っぷりだ。
狙うは本丸、面倒な手続きとかあれやこれやを全て無視した上での直談判的な何かである。
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