第54話 七月は猛暑の始まり




「うぁークソあち〜……。この暑さで7月に入ったばかりってマジなん?」

「残念ながら大マジだよ渡」



 机に頬をべったりとくっつけた渡に対し、隣でぐったりとしながら言葉を返す晴人。先程から下敷きで扇いでいるのだが生ぬるい温風ばかりで全く涼しくならないのはどう考えても異常である。ちらりと教室を見渡してみると、他のクラスメイトも同様にぐったりとしていた。否、溶けているという表現でも間違い無いだろう。


 現在は午前中の授業の合間休憩。

 7月に突入し、燦々と照りつける太陽が窓から顔を覗かせながら猛暑とも呼べるジリジリとした暑さが目立つようになってきた。


 既に衣替えは済んでおり、男子は白いワイシャツ・ポロシャツの半袖に黒色のズボン。女子は長袖を着用している子もいれば大多数が半袖の制服にネクタイ、スカートといった涼しげな夏服の装いとなっていた。夏服の生地もサラサラとしたポリエステル素材で出来ており、通気性も良いので熱が篭りにくいのが特徴。……の筈なのだが、この気温の所為であまり実感しづらいというのが正直なところ。


 暑さで溶けたようにぐったりした渡は間伸びした口調で言葉を紡ぐ。



「なーんで今どきクーラーねぇのー?」

「この学校にそんな財力期待すんな」

「扇風機は?」

「以下略」

「わーい、どうしようもねぇクソ環境ばんざーい。おぎゃあおぎゃあ」

「しっかりしろー」



 なんとか机から涼を得ようと頬をすりすりと擦っている渡だったが、きっと暑さで心身ともにダメージを受けているのだろう。赤ちゃんになってしまった。あうーと言いながらぼんやりとした瞳で親指をチュパチュパさせているあたり結構重症。控えめに言ってホラーである。


 渡とはこの前までは席が離れていたが、席替えを行なった結果隣同士になった。腐れ縁と喜ぶべきか、悪縁と嘆くべきか。暑さで赤ん坊返りした級友を見る限り後者だったかもしれないと思いながら晴人はそっと視線を逸らす。


 仕方ないので晴人は溜め息をつきながら下敷きで風を分けてあげる。



「ほら、風を分けてしんぜよう」

「ははぁー、ありがたき幸せー。もっともっとー」

「次は渡の番な」

「あいあいー」



 冷房のような冷たさには程遠いだろうが、あるだけマシなのだろう。火照った渡の顔に温い風を送ると、そう返事を返しながら瞳を閉じながら頬を緩めた。


 因みに晴人は母から水筒を持たせられていたのだが、この暑さで既に飲み干してしまった所為でもう空っぽである。ついでに財布を忘れたので自販機で飲み物すら買えない。明日からもう少し計画的に飲もう。そして必ず団扇や扇子など涼を得られるグッズを持って来ようと考えていると、晴人はふと思った言葉を口にした。



「っていうか珍しいな。渡が衣替えで夏服になった女子に目がいかないとか」

「こんな暑さじゃそんな気力も起きませーん。現在枯れ果ててまーす」

「そうか。よかった、四ノ宮さんに報告せずに済んだ」

「さっそく交換した連絡先有効活用しようとしてるじゃん……」

「まぁな」



 いつ晴人が夏菜の連絡先を交換したのかというと、以前中間テストの勉強会をしたとき。勉強会の終盤に差し掛かったタイミングで渡の彼女である夏菜から『二人とも連絡先交換しよーよ!』との提案を受けたのだ。


 由紀那は彼女と打ち解けていたということもありスムーズに連絡先を交換。……とはいえ嬉しさを隠しきれず顔を強張らせながら瞳をキラキラ輝かせていたが。

 一方の晴人といえば連絡先を交換すること自体に抵抗が無いとはいえ、相手は同い年の女子で尚且つ渡の彼女でもある。由紀那が側にいる手前、多少の気まずさというか引け目を感じていたのだが、様子を伺うようにして横目で由紀那を見てみると不自然な晴人の様子にきょとんとしながら「どうしたの?」と首を傾げていた。


 こうして由紀那が気にしていないのならまぁ大丈夫だろうと連絡先を交換した次第である。



(……いやまぁ、別にどうこう思って欲しかった訳じゃないからな)



 もしだったらもやもやしてしまうかもしれないと思いつつパタパタさせながら渡を見ていると、心地良さそうに目を細めていた彼とふと視線が合った。



「いやん、晴人さんのえっち♡」

「はっ倒すぞ」

「いくら制服が半袖になったとはいえ、アテクシのたわわに実った上腕二頭筋を狙うだなんて油断も好きもないわっ! せめてこのハムストリングにしときなさいっ!!」

「何言ってんだお前……」



 おネエ口調になった渡が自らの身体を掻き抱いたと思ったら、急に太腿辺りをパシンッと勢い良く叩く。ネタか悪ふざけか分からないが、晴人としては急にされたので笑いより呆れの方が強い。まさに「知らん…何それ…。こわ……」状態である。


 晴人は思わず溜息をつく。暑さにやられてしまったであろう可哀想な渡に向けて生暖かい瞳を向けながら、晴人は下敷きを仰ぐ風圧を強くするのだった。


















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どうもぽてさらくん。です!!

あけましておめでとうございます!!


ようやく更新できました。

仕事も落ち着き10月に「執筆します!!」と意気揚々と宣言したにもかかわらず諸事情によりエタってしまい申し訳ございませんでした……。もう今まさに全力、パワフルかつダイナミックにジャパニーズ土下座☆をかましてる状態ですハイ。


私に出来ることなら肩を揉んで差し上げたりおみ足をぺろぺろしたりなんでもする所存ですので何卒許して頂けると嬉しいです。そうですね、出来れば美少女がいいですね。肩を揉む際の柔らかい感触はもちろん、ふと漏れる吐息を背後から堪能したいです。おみ足は……そう、さながらドクターフィッシュになった気持ちでぺろぺろ出来れば何も言うことはありまがふっっっっっっ(舌を思いっきり噛んで血塗れ)。


……失礼しました。

とにかく2024年もどんどんラブコメの執筆を頑張っていきますのでどうかよろしくお願い致します!!


ではでは!!



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