第6話孤児院⑤

 今日の授業が終わりを告げると、皆ペアになった人と帰宅していた。二日目となると一日目の無言で帰っている姿とは違い、笑い声が響いていた生徒も中にはいた。

 さてと俺もそろそろ帰りますか。

 1番前の席に期待をよせてみてみると、そこにみくの姿はなかった。

 まぁ現実はこんなもんだよな。

 下を向きながら教室をでると、みくが教室の出入り口にいた。

「あれどうしてここに?」

「……」

 また無視ですが。今日の朝それは解決したんじゃないのかよ。

 無視はされていたが、私に付いてこいと言わんばかりに学校の玄関の方向に歩きだした。


 校門から屋外にでると学校の生徒が殆んどいなくなったらみくが喋りだした。

「クラスの雰囲気ちょっと変わった…よね?」

「あー俺もそう思った。前は人に対して無関心だったけど、今は人に対して関心がある気がする」

 そうは言っても事実上、今日学校内では俺は誰とも喋っていないのだが。

「これも先生が出した企画のおかげかな?」

 横を歩くみくが俺の顔を覗き込む様に話してきた。

 何、めっちゃ仲いい感じに接してくるじゃん。これ端からみたら付き合ってるって思われよ。完全に。

「かも知れないな」


「ただいま」

 不思議なもんで、一人で帰るより二人で帰った方が自宅に早く着くのは気のせいだろうか。

 気付いたらもう孤児院施設『ヒマワリ』に辿り着いていたが、みくの言葉に対して返事がない。

 足元を見ると昨日玄関に散らばっていた靴が一足もなかった。

「誰もいないんじゃあないの?」

「そんな事は……あ」

 みくは何かを思ったのか慌てながら孤児院施設『ヒマワリ』とは逆に走りだした。

 おいおい一体どうしちゃったんだよ。青春でも急に謳歌したくなっちゃったの。

 ほら、良く学園ドラマ何かでは砂浜を先生と生徒が走ってるあれだよ。

 すいません、あれはただ赤点採った生徒を先生が追いかけている姿でした。

 そんなバカな事を考える事を止めて俺も急いで後を追かけた。


 みくの姿は数メートル離れているが、一向にその距離が埋まる事はない。何ならさっきよりも距離が離れている気さえする。

 速い速すぎるぞ。あいつ陸上部かなんかか?

 もう体力の限界だと思ったらみくが突然先の方で止まった。

 ハァハァと息を切らしながら、ようやく追いつくと教会の前で止まっていた。

「いっ…いっ……いったいこんな所に来てどうした?」

 俺の言葉が聞こえていないのかキッキーと音を鳴らしながらみくが重そうな扉を前に押して開けた。

 っつうか何なの。今日は無視される日か何かなの。さすがの俺もちょっと傷付きそうだよ。

 

 中に入ると聖母マリアの銅像が中央に立てられていて、天井には高そうなシャンデリアがあり、長方形の長椅子が数個綺麗に並べられていた。

 教会中央で孤児院施設のメンバー全員と大人が数人立っていた。

「…あれって」

 誰か知らない大人が孤児院メンバー側の大人に花束を渡した。

 渡した側の大人が会釈をすると子供と手を繋ぎ俺達を横切り教会をでた。

「これは子供が孤児院施設『ヒマワリ』を卒業する為の儀式よ。そして孤児院側にいる白ひげの大人は孤児院を管理してくれてる人よ」

「そうじゃない。今横切ったのはたけるか?」

「そうよ。でも無………


 みくの言葉を最後まで聞かず体が勝手に走りだしていた。

 自分の頭で考えるよりも、磁石のS極とN極が磁力で引き付け合うよに、体が引き付けられていた。

 たけるを連れた大人は車に乗りちょうど発進していた。

 俺も近くに合った誰だが分からないチャリに跨がり全力で漕いで追いかけたが全然距離が縮まらず離れていく。

 何、あれか嫌われ体質が原因なのか。

 一瞬そんな事を思ったが、ただ純粋に機動性の問題だろう。

 そんな事を考えているうちにも、みるみる距離が離れている。

「く···くそーーー!!!」

 だが神は俺を見捨てなかった。

 信号が赤に切り替わり、車がみるみる減速していった。

 これなら追い付ける。

 それと神は俺だけどなちょっと上位の。

 俺があの車を止めたのだ。正確には道路交通法で止まっただけだけど。

 一人で頭の中で都合の良い様に解釈したが、車に追い付き運転手側の窓をコンコンと手の甲でノックをした。

 窓が開き 「何ですか」 と不信感たっぷりの表情で俺の全身を見ていた。

「ハァハァハァ…ち……ちょっと後ろの子供に用事があるんだけど?」

 運転手が後部座席のドアを開けるよりもドアが開き一人の子供が立っていた。

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