Finale

7



「ちょっと……これは何?」

 公設セーフハウスに戻った御剣達を見た間木は呆れ返る。

 そこには御剣とナナミの他に、ジュスティーノとカレンもいた。


「何って……元暗殺者達アサシンズ

 御剣は笑顔で応える。

 間木は地獄の底から響く様なため息をつく。

「彼女は他に行く宛のない無辜の少女だし、彼は司法取引に応じるつもりもあるって」

「そう言う問題じゃないの!何よ!五竜会は崩壊寸前だしメディコ一家は頭取が建物ごと無くなるし!何!私の仕事、増えてるんだけど!?」

「警察がマフィアがいなくなる事を嘆くなんて、拙いんじゃないかな?」

「それは、国家がちゃんと統一されてたら、の話。一つの国家に暴力装置は二つも要らないわ。でも、上海ここは複数の国家主権がぶつかる場所なのよ?当然隙間産業もないと、治安維持も難しいの、分ってるでしょうに……」

 そこへナナミが自動的にキーマンを入れてくる。

「お茶です」

 今回は珍しくミルク入りである。

「あら、いつもピュアティーなのに……」

 間木は不思議そうに見つつ、一口飲む。

「苛立の抑制にカルシウムは効果がある、と出ましたので」

 ナナミは機械的に告げる。

「ちょっと!ここの自動人形、持ち主に似てきたんじゃない?」


 ジュスティーノはこの光景を呆然と眺めていたが、カレンはどこか楽しげである。

「自由な世界、楽しそうね」

 そうジュスティーノに呟く。


「ところで、君たちはどうするつもりなのかな?」

 御剣は間木の向こうにいる二人に訊ねる。

「いや、特には……」

 ジュスティーノはこの環境の距離感を計りあぐねていた。

「依頼主を殺し、その娘と駆け落ちした暗殺者には、もう仕事は来ないだろう?」

「いや、俺が殺した訳では……」

「世間は『悪魔が食べました』なんて信じてくれないよわ?」

 今度は間木が重ねてくる。

「いや……まぁ……」

「なら、一緒にやるかい?『探偵』」

「は?」

「そうしたら、君達は行く宛ができて、僕は業務の半分は肩代わりしてもらえるだろうから、その分、詩生活ができる、とお互いに得なんだけれど……?」

「その前に、色々情報は貰うけどね?」

「楽しそう!いいじゃない。やりましょうよ!」

「ああ……まぁ……」

「では、よろしく。後輩君」

 御剣は握手をするでもなく、手を降る。


「あ、そうだ、これ、警察に提出しないとね」

 御剣はそう言うと、短剣を取出し、間木に差出す。

「だから、自治警を通してって何度も言ってるでしょ!それに、その組織はほぼ壊滅してるんだから、もう意味ないわよ」

「そっかぁ、じゃあ、これは、彼女に上げよう。一応、家紋だしね」

 そう言うと、カレンに投げ渡す。

 カレンはそれを取り損ね、ジュスティーノが受け取る。

「ん?」

 ジュスティーノが短剣をよく見ると、柄に何か掘ってあった。

母から娘へダ・ラ・マードレ・ア・ラ・フィリア

「これは……」

 カレンが呟く。

 そのまま、泣き出す。


「お茶です」

 一同が静まり返る中、ナナミがダージリンのミルクティーをカレンに渡す。


「ありがとう」

 カレンはそれだけ言葉に出すと、一口飲む。

「美味しい……」


 その一言が空気を和らげた。


「では、そう言う事で、よろしく」

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アサシンズ・ブルース @Pz5

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