第14話 メルセデス家
「メルセデス家、だって?」
「あぁ、そうだ。メルセデス家は五帝家の中でもかなり力を持っている一族で、代々強力な魔法士を何人も輩出している。何十年か前には賢者も現れたっていう話だ」
「マジか、賢者!? それはかなりすげーな。だからあんだけ威張れんのか」
「そうだろうな。俺も小さい頃に一族ぐるみの付き合いがあったが、どいつもこいつもあんな感じだったぞ? その中でも特にアイツはヤバかったが」
「まあ、そんな感じはぷんぷんするぜ。どーせ親が一流の魔法士で、って感じだろ?」
「あぁ、それもそうだがアイツ自身とても強かった筈だ。俺も模擬戦をやった時はコテンパンにされた記憶がある。メルセデス家は強さこそ正義だからな、やりたい放題してるのだろう」
「マジか、モネでも負けんのかよ。お前も魔法士の祝福が出たとは言え、それまでは一族の中でも強かったんだろ? こりゃ、態度がデカいからって舐めれる相手じゃねーみてーだな」
「あぁ、全力で戦った方がいいだろうな」
それでも勝てるかどうかは分からない。その一言は無理やり口の中に押し留めた。
大丈夫、ヴィットなら必ず倒してくれる筈だ。俺の兄弟子なんだからな。
「ま、とにかく飯食いにいこーぜ!」
「おう」
俺はヴィットのことを頭から振り払った。俺は人のことを心配する余裕何かない筈だ。次の相手を倒すことだけに集中しなければ。
俺たちは沢山並んでいる露店で軽く食事を済ませた。そして、食べ終わる頃にはヴィットの順番が回ってきたようだ。
「お、丁度良かったな。じゃ、行ってくるぜ」
「おう、負けんなよ?」
「ったりめーよ!」
❇︎
俺は会場でヴィットの初戦を見ていた。
流石はヴィットというべきか、ヴィットは危なげもなく敵を倒してすぐさま二回戦進出を果たした。
しかし、俺の気のせいだと良いが、少しかかり気味のように見えた。
最初から全力、というか必要以上に自分の力を見せつけるような、そんな戦いだった。潜身も使っていたし、俺は嫌な予感がした。
だが、俺の試合も迫っていたため深く考えることもなく俺は次の試合へと集中した。
必ずヴィットと決勝で戦う。そして優勝して最強剣士へと一歩近づくのだ。こんな所で負けられないのだ。
そしてとうとう俺の番が回ってきた。
「「「うぉーーーー!!!」」」
未だ冷めやらぬ歓声が聞こえてきた。むしろ二回戦ということもあってか会場の熱気は更に高まっているような気さえする。
『さぁ、決勝トーナメントも二回戦に入ります! 皆さん準備はよろしいですか?』
実況の声が聞こえた。だが、その声を頭から追い出すように目の前の敵に集中する。だが、俺はその敵によって集中力を削がれてしまった。
「おい、貴様。お前はウルス家なのだろう? なぜ身分を隠している、貴様は一族に誇りはないのか?」
またか、やはり俺がウルス家の人間だということはトーナメントに出ているものには大抵バレているようだ。
だが、俺はもう追放された。今はウルス家ではない。
「何故答えないのだ! 貴様は俺をあの日コテンパンにしたモネ・ウルスだろう!」
コイツも俺のことを知っているようだ。俺はコイツに関する記憶は一切ないのだが?
五帝家どうしでは交流がたまにだが行われることがあるから、俺の知らぬ内に何かあったのかもしれない。
「お前も五帝家なのか?」
「お前も、だと? 俺は五帝家じゃねーよ。お前らに虐げられた者だ! 貴様らはただ良家に生まれただけで勝ち組のような顔をし、この世にのさばっている、大した実力もないくせによぉ! お前なんかぶっ潰して俺が五帝家になるっ!」
コイツはだいぶ五帝家に対して恨みがあるようだ。五帝家ってそんな良いもんじゃないのにな。
それにしても虐げられた、か。確かに五帝家の中には他の一族を見下す傾向にある者も多いことだろう。
だが、俺は人を見下したことなどない。それに勝ち組のようにのさばったこともない。
コイツは一体何にそんなにいかっているのだろうか? 俺が五帝家というだけで憎いのだろうか?
だが、五帝家と言っても人間は人間なのだ。良い奴もいれば悪い奴もいる。そんかことすらも分からなくなっているのだろうか。
「お前は、お前だけは絶対に許さない。ここで、お前の人生は終わりなんだよ!」
そんなに俺に恨みがあるのならば、仕方がない。俺も全力で戦うだけだ。
『さて、両選手出揃いました! 東側は未だ謎多きモネ選手、一回戦では己の剣技で辛くも勝利を掴みました! 今回もその剣は敵を切り裂くのか!? 西側はこちらも謎多きシュヴェル・トール選手! 一回戦では一瞬で試合が終わってしまいましたが、今度はどうなる!?』
一瞬で終わった、か。楽しみだな。こちらも良い感じに緊張がほぐれて来たところだ。さぁ、来い!
「両者構えて、、、始めっ!」
実況が一瞬で勝負が着いた、と言っていたからてっきり速攻を仕掛けてくるものだと思っていたのだが、予想が外れて、初手は攻撃してこなかった。
「ふっ、大方一回戦の様子だけをみて俺を速攻型の戦士だと警戒していたのだろう? だが、トール家に伝わる技はそんなものではない。アレはただの俺の技術だ。つまり、お前は負けるってことだよ!」
そう言って敵は俺に向かって飛びかかってきた。熱くなっている者はすぐに飛びかかってくる。これは昔から思っていた。そして、そういう敵にはカウンターが決まりやすい。
敵との距離が近づいてくる。ギリギリを見極めて、瞬時に剣をぬkーー
キンっ
何かが飛んできた。俺は反射的に弾いたのだが、それは短剣であった。無手で飛びかかってくると見せかけて、投擲してくるとはなかなかやるな。そして、敵を見ると、
「なっ……!」
そこにさっきまでいたはずの敵の姿が見えなくなっていた。
「ふんっ、やっぱ五帝家って言っても大したことねーな」
グサっ
いつの間にか背後に回られていた俺は、後ろからグサリと剣を刺されてしまった。
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