第13話 半端者
「おいおい、まだやろうって言うのか? 笑わせんなよ、ハンパもんはさっさと失せろ、よっ!」
「うっ……」
まだだ、まだ戦える。考えろ、突破口を考えろ、俺にできることはきっとまだあるはずだ。クソ、来る!
ボゴッ
その時、俺はほとんど無意識に咄嗟の判断で魔力を操作していた。腹部を殴られる瞬間、俺は殴られる部分に魔力を集中させていたのだ。そう、まるで魔力の壁を作るかのように。
その結果俺は、倒れなかった。
「何!? なんで俺のパンチが効いてねーんだ? さっきよりも本気で殴ったんだけどな、当たりどころが良かったみたいだな。だが、次は容赦しない、全力でいくっ!」
再び俺に直進してきた。先ほどはカウンターをしようした俺の攻撃を読まれて完全に一発を決められたのだが、今はもう違う、俺は相手の拳を受けることができる。
それも意識的に魔力の壁を作ることで、さっきよりもダメージを抑えられるはずだ。肉を切らせて骨を断つ、ヴィットから教わった言葉だ。それがまさかここで生きるとは。
「はぁあああああっ!」
ドスっ
とても迫力のある怒号と共に俺の顔面へのパンチが伸びてきたが、その直線的な攻撃はどこを狙っているかが一眼で分かる。そして、俺の左頬に魔力を集中させていた俺はほとんど無傷だった。
「なっ……!?」
「兜割り」
今度は頬から腕へと魔力を集中させ、上段の構えから全体重を乗せ全力で剣を振り下ろした。
ドゴンッ
まるで鈍器で殴ったような音が響いた。父さんなら音もなく真っ二つにできるんだろうな、と思うがこれが今の実力で受け入れるしかない。
だがそれでもなんとか初戦は突破できたようだ。
兜割りを食らった敵は倒れ、意識を失ったのかそのまま転移されてしまった。
「「「うぉおおおおおおおおお!!!」」」
大歓声が沸き起こった。そうだった、今は武闘大会で多くの人からみられてるんだった、すっかり忘れていた。
『おおーっとまさかの初戦は西側モネ選手の勝利だー! 敵の攻撃を食らっても倒れないタフネスさと、圧倒的剣技を見せつけたー! やはり、このモネ選手はあのモネなのかー!?』
うむ、やはりここいる以上、目立たないというのは無理な話だろうな。だけど余計な心配をしている余裕もない、次に向けて準備しなければな。
❇︎
「おうモネ、お疲れさん。最初パンチを食らった時はどうなるかと思ったぜ、全く」
試合会場から出るとそこにはヴィットが待っていてくれた。
「すまない。そういえばヴィットはいつなんだ? こんなとこにいていいのか?」
「あぁ、俺はトーナメントで最後から二番目の試合だったからよ。当分暇してるわけよ」
トーナメントは全十六名で行われる。だから、一回戦は全部で八試合あって、今俺の一試合めが終わったわけだから……
「あと五試合も残っているのか。確かにそれだとウォーミングアップっていっても早すぎるな」
「あぁ、そうなんだよ。どっかで暇潰そうと思ってもここには初めてきたから土地勘が分からねーからよ、モネの試合が終わった後はここで待ってたってわけよ」
なるほど、そういう訳だったのか。確かに五試合は相当長いな。一試合にどれだけ時間がかかるかも分からないから、集中力を保つのも大変そうだ。
「じゃ、飯でも食いに行くか? どっか探したらあるだろ」
ヴィットがそう提案してきた。試合前にご飯を食べるのは危険かもしれないが、勝ち上がると連戦になるから食べたいなら、今しかないだろう。
「ヴィットが良いなら行こーー
「やぁやぁやぁ、何処の馬の骨の蛮族かと思えば、ウルス家のエリートと持て囃された挙句に、魔法士の祝福を貰って追放された、モネ君じゃないか!」
突如、俺は後ろから声を掛けられた。
「君の試合を見させてもらったが素晴らしい試合だったじゃないか! 魔法士が剣士のフリをしていたにしては上出来だったんじゃないか? まあ、君は魔法士にすらなりえないんだけどね」
「あぁん? なんだテメェ! いきなり突っかかってきて適当言ってんじゃねーよ! あぁん?」
ヴィットが俺より先に怒ってくれた。
「おやおや、こちらは本物の蛮族かな? 追放されたニセ剣士と本物の蛮族とはこりゃ参った、最高の組み合わせじゃないか!」
「あぁん? ガチでやられたいみたいだな、ぶっ殺すぞ!」
「あらあら、本当に蛮族だったみたいだ。蛮族は蛮族と言われれば怒るかららねぇ。それに、そういうことは立場を弁えて言った方がいいよ?」
そう発言するとソイツの後ろから複数人の味方と思われる輩が出てきた。
「くそッ、一人じゃ戦えもしねークズがっ!」
「ほう、ではトーナメントで決着をつけようか。私の試合は一番最後だから第二回戦で君と当たるようだ。ま、君が勝ち上がれば、の話だけどね」
そう言って急に突っかかってきた一向は去っていった。一体何しにきたんだろうか?
「おい、モネアイツらは一体なんなんだ? なんであんなに偉そうなんだ?」
実は俺はアイツの正体について知っている。だからこそ向こうも喋り掛けてきたんだろう。
「アイツは、アイツらは魔法士の一族で五帝家の一つ、メルセデス家だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます