十六章 「涙の先には」

 涙を流した後に、私が感じたことは達成感と幸福感と少しの後悔だった。 

 まずは占い師の予言を覆せたことに満足がいった。

 やりきった感があった。

 私は占いになんて負けない。占いの結果がそうだからって言って、やすやすと受け入れない。

 悪い未来なら、自分の手で変えてみせるのだ。

 私は簡単に諦めたりしない。

 やはり、私は変わり者のようだ。

 次に、願いであった涙を流せてよかったと思った。

 流すことで、爽快感も味わった。

 幸せな気分で心がいっぱいになった。

 そして、こんなに心動かされるものだとは思っていなかった。

 後悔をしたのは、もっと早くに涙を流すことができていればよかったなと思ったのだ。

 こんなに心動かされる体験を、今まで味わってこなかったのはなんだかもったいない気がした。

 過去に戻れないけど、ちょっとだけそう思った。

 人はなぜ涙を流すのか。

 その理由は確かにたくさんある。

 それは出店で色々な話を聞いてわかった。

 その中には偽物の涙もあった。女の武器として使ったり、ストレス発散のために涙を流したりもする。

 また、一人で流すより誰かと一緒に流す方が、涙を流したあとに得られるものは大きいと思う。

 人は感情を共有したい生き物だ。

 そして、本物の涙とは、『流す』ものではなく、『あふれる』ものではないだろうか。

 意図して流すのではなく、自分の感情を超えてあふれてでてくる。

 本当に相手のことを思ったとき、なりふり構わず涙が自然とあふれてくるはすだ。

 いいものを見た時、いつの間にか涙があふれてきていることもあるはずだ。

 私はこれからもこの出店でそんな涙を流していこうと思った。

 涙についてはまだわからないこともある。

 もっと知りたいと思う。

 そんな涙は、また誰かを涙に誘い、幸せにするから。

 ただ、さっきあふれた涙の先に、春斗君と共に生きていく未来がみえたのだった。

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涙、あふれる 桃口 優/光を見つけた作家 @momoguti

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