第18話 ぼくピンチ?

 次の日……というか、この快適空間内では時間の流れが分からない。

 その為今が朝なのか、昼なのか、夜なのか全く分からないのだ。

 かなりの時間が過ぎた様に思う。

 こんなに長く快適空間に居たのは初めてかもしれない。

 そんな事を考えていると、とうとうその時がやってきた。


 目を開けると、そこは全く知らない所だった。


「この子がその蜘蛛さんなんですか?」

「はい、そうです」


 アリスの声が聞こえた、そして誰かと話している。


 直後知らないおっさんが、ぼくの顔の前に姿見せた。

『うわ! ビックリした!! 誰だよこのおっさん』

「この蜘蛛さんがあの玉をねぇ〜」

『なんだ、このやろぉー!』

「あのぉ〜、今日はどういう……」

「あっ、すいません」

 そういうと、男が立ち上がりどこかへ行ってしまった。

「あの人誰なの?」

「……え! あ〜……」

 その時、さっきの人が帰ってきた。

「お待たせしました」

「あっ! いえ!」


『なに〜!! まだ怒ってるのか〜』

 

 ぼくは、この部屋を、出ていくと事にした。

 部屋を後にする時、男からは「凄い、あんな事が出来るんだな」という声が聞こえた。

 アリスからは「あっ!」と少し声が聞こえたが、今は顔を見たくなかったのでそのまま出て行った。

 そのまま、この建物が何なのか一通り見て回ると、何かの研究所らしかった。

 おそらく昨日ナタリーさんが言っていた魔術研究所って所だと思われる。


『思われるっていうのは、部屋に入れないからね! 蜘蛛だし!』


「あぁ〜、自分で形を変えられたらな」


「おい! あれを見ろ、蜘蛛の魔物だ!」

『げ、マズ!!』

 




 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 ここは昨日ナタリーさんが話していた魔術研究所で、この部屋は所長さんの部屋。

 結局、今の今までアグーに謝れずにいる。

 しかし、所長さんが「その蜘蛛が見たい」と言うので召喚したのだが。

 アグーは、何が何だかわからないといった様子で、キョロキョロしていた。

 所長さんがアグーを覗き込んだ時は少し焦った。

 まぁかなりイラッとしていたみたいだけど。

 所長さんが何かを取りに行った時、アグーに声をかけられたが、いきなり声をかけられた事と、その後すぐに所長さんが戻ってきた事で焦ってしまい曖昧な反応しかできなかったのだ。

 それが、気に食わなかった様で部屋を出て行ってしまった。

『またやってしまった……』


「本当にあの蜘蛛さんは召喚獣なのですか?」

「はい、そうですけど」

「出て行きましたけど、大丈夫なんですか?」

「多分、大丈夫だと思いますけど逆にそちらは大丈夫ですか?」

「ああ〜、どうですかね!」


 あははは、と笑う所長さん。

 多分これはダメなパターンだと思うアリスだった。


「ところでこれなんですが……」

 持ってきた物は、私達がギルドに納品したあの玉だった。

「私達が納品した玉ですか?」

「そうです。」

「どう、されたんです?」

「エルダーフロッグは基本臆病な魔物です。その為この玉を取りに行くことは基本的には簡単な部類なのです。ですが、かなり霞んだくすんだ色をしていて、付与できる魔法も大した物は付与できないのが通常です」

「私もその話はナタリーさんから聞いています」

「そうでしたか、では話が早いのですが、貴方方が、納品して下さる玉は宝石の様な輝きをしています。これは、玉を取る際にエルダーフロッグがストレスを感じていない事を意味しているのです」

「………?」

「以前、ここまで綺麗な玉ではなかったのですが、納品された事があったのです。その時はたまたまエルダーフロッグが寝ていたらしく、そのそばにその玉があったとの事です」


 聞く話によると、あのカエルは臆病な為寝ていても何らかの気配がすると直ぐに起きて逃げてしまうとの事。

 その際、たまにその場所に玉が残されているとの事だった。

 しかし、その時の玉はかなり霞んでいるのだが、霞んでいても玉一個で金貨一枚の為、敢えて脅かしおどかしたり、倒したりして玉を手に入れる人が多いとの事。

 

「ですので、こんなにも輝いている玉は見た事もありません。ですのでどうやって手に入れたのか知りたくて来て頂いたのです」

「あ〜、この玉に関しましては私は全くわからないんです」

「それはどういう?」

「私はその玉を手に入れる所を見た事が無いからです」

「え!? ですが、ではどうやって」

「最初に伝わっているかと思いますが、先程までいたあの子が持って帰ってくるのです」

「持って帰ってくる!!」

「はい」


『私も正直知らない、だって教えてくれないんだもん』


「そう、ですか。ではあの蜘蛛さんに聞かないとわからないという事ですね……」

「まぁ、そうなりますね」

「残念です」

「まぁ定期的に納品はさせて頂くと思いますので」

「ありがとうございます」

 所長さんが私の手を取る。

「あっ! すいません!」

「あ、いえ……」

「ところで何かお礼をしたいのですが、魔法が付与されている玉で何か欲しい魔法はありますか?」

「え! そんな事……」

「良いんです、気にしないで下さい」


『うん〜、魔法か〜! 私召喚魔法以外使えないからな……』


「あの〜、召喚魔法関連で何かありますか?」

「召喚魔法関連ですか……」

「例えば、召喚後でも他の召喚獣に変化できるみたいな……」

「少し探してみますね!」

「ありがとうございます」


「所長! 所長!!」


「どうした?」

「蜘蛛の魔物が暴れています!」

「何?」


『アグー!!』


 私は駆け出していた。



 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


『ちょっ!! いきなり何するんだよ!!』

 ここの人達に見つかって以降、魔法がブンブン飛んできていた。

「くそ! かなりのスピードだ気をつけろ!!」

『いや、ぼく何もしないから……』

「早く応援を呼べ!!」

『やめて、これ以上呼ばないで!』

 その時……

『痛!!』

 一人が撃った魔法がぼくの足に当たり足が一本無くなっていた。


『いてぇー!! あ〜もう、最悪だ!! そっちがその気なら……』


 ぼくは、さらにスピードを上げて人間達に迫り、糸でグルグル巻きにしていく、そして屋根から宙吊りにしていってやった!

 

『さすがに殺さないからな、これくらいで我慢してやる!』


 あっという間にここに居た人間20人、もっといるかな!

 全ての人間が宙吊りになっていたのだ。


「ひっ! 助けて、助けてくれ!」

 宙吊りになった人の顔を見ると、各々が助けを求める声を出していた。

『はぁ〜、ぼくが、助けてって言っても助けてくれないよね、君達は!』

 仕方がないので助けようとした時。


「アグー、やめなさい! どうしてこんな事……」


 声の方を振り向くと、そこにはアリスが居て。

 しばらくしてあの男もやってきた。


『うん!? なんだこの違和感は、あの男……』


 しかし、アリスの肩に手をやり何かを話している。

 何だよあんな男、やっぱりアリスもの方が良いのかよ!


『はぁ〜、めんどくさ』


 ぼくは、アリス達に背を向ける。

 

『……はぁ〜……ぐは!! ……なんだ!』


 何かが飛んできてぼくの体の半分を持っていかれる。

 飛んできた方向を見ると、アリスの隣にいた男がこちらに向かって手を伸ばしていた。


『あいつか!! あいつがやったのか!!』


 受け身など出来ず床に落ちる。

『くそ! いてぇー!』

「アグー!!」

 アリスがぼくに駆け寄ってくる。

「何を! 何をするんですか!?」

「何ってその暴れているから退治しようとしただけじゃないか!」

「この子は私の召喚獣で!」

「召喚獣!? ふん! 召喚獣がなぜここの職員を襲うのですか!?」

「それは……」

 アリスがぼくを見る。

「部下がこんな目にあっているのに見過ごすわけにはいかないでしょう!」

「では、今すぐ戻しますから。待ってください」

「そんな出鱈目でたらめな事を! 退いて下さい、さもないと……」

 男の手に魔力がためられていく。


『アリス、逃げろ! ぼくは召喚獣だ当たっても死にはしない、でも、アリスが死んでしまったらぼくも生きていられない!』


『やっと声が聞こえた! 聞こえたよ……』


『アリス!』

『嫌だ、絶対にここを離れない!』

『頼む、退いてくれ!!』


「私はここを退かない! 絶対に!!」


「はぁ〜、残念だよ! アリス」


「え!? 貴方は……」

 男だと思っていた人間だが、魔法で変装をしていた様で解かれた今そこにはあの男ではなく女がそこに居たのだ。

『あいつは確か、あの時の!』


「何で、何であなたがここに居るの!? それに、何でこんな事を……」


「何でだって!? アリス、アリスはあのままで良かったんだよ、あのままのアリスが可愛かったのに。その召喚獣が現れてからアリスは変わった! 私のアリスがどこかに行ってしまったんだ!!」


「何を、何を言っているの……」


「今のアリスはいらない、今のアリスが元に戻らないのであれば今のアリスはいらない!!!!!」


 女の手に集約されていた魔力が増幅し、アリスに向かって飛んできたのだ。




「アリス〜!!!」

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