第16話 今度はお怒りだ

 一方、ぼくはというと……。

 お風呂の中に沈んでいた……。

「ぷはっ!」

 そして気づいた事、水の中(お湯の中だけど)でも呼吸が出来た!!


『召喚獣ってすごいね! あっ! 今度アリスと一緒に入った時潜って見てみよう!! うん、それが良い!』


 そんなくだらない事を考えてはいたが、内心は本当にビックリしていた。


『まさか本当に一緒に入れるなんて……』


 ああ〜、そっちではなくアリスが一緒に入って来てまで謝りに来た事にね!


『確かにビックリはした、あの時のアリスは今までとは明らかに違ったから、だからと言って何も変わるはずもなかった。そんだけアリスの中では大変な出来事だったのだろう。それにしても……』


 自然とニヤけてしまう。

 

『ダメだダメだ……』

「そろそろ上ろ」

 お風呂から上がるとまた驚いた!

 上がった瞬間にはもう体は乾いていたのだ、もちろん服を着るという概念がないのでそのまま出てきても大丈夫だった。

『なんて便利!』

 脱衣場から上がるのそこにママさんがいた。

「お風呂ありがとうございます」

「いえいえ、お礼など不要ですよ。それより、ですか? ふふふ」

「はい、ですよ」

「それはそれは、ふふ」

 意味深な笑みを浮かべ奥へ入っていった。

 その後、アリスの部屋に行こうと思ったがお風呂の事をあったので、少し外に出てみることにした。


 人型になり色々出来る様にはなったが、コウモリの時みたいに周囲を探知できるわけではなかった。

もちろん空も飛べない。

『うん〜、アリスがいないと違う召喚獣に変わらないのは少し不便だな』


「……うん? 今あそこに誰か居た様な……」


『うん〜、やっぱりこの型じゃわからないな。まぁ嫌な感じは無かったから、大丈夫だろう』

 ぼくは宿へ戻って行く。


    〜〜〜


「あいつは誰なんだ………」


    〜〜〜


 宿に戻ったぼくはというと……。

『ふぅ〜、今日も一日が終わったなぁ〜……』

 ぼくは快適空間の中で寛いでくつろいでいた。

 何故かって……!? 決まっているじゃないか!

 あの後、アリスの部屋に行ったんだけど……。

 もう寝てたんだよ、だからいつものノリで(召喚獣だからさつい!)潜り込んだんだよね。

 そしたらさ、ここに飛ばされた……。

 特に何もしてないんだよ、ちょっと手を前に伸ばしただけなんだよ……。


 その晩は外に出させてはくれなかった。


 次の日、蜘蛛になっていた……。

 ママさん達もビックリしていたよ「アグーさんですか?」って、何度も聞かれて「そうです」と何度も答えたな……。

「何で今日は蜘蛛なんですか?」ってママさんに聞かれたから答えようとしたんだけど、アリスが。


「気分です!」って一蹴いっしゅうしてたな……。


 後でママさんに何をしたの、って追求されて「若気の至りです」って答えたよ。

 苦笑いされたけどね……。


 まぁついでだから、カエルさんの所へ行って玉を貰ってきたよ。

 今回は10個ほどだったなぁ〜。

 だってさ、この前取りに行ったばかりだしね。

 ギルドの人は喜んでたよ。

 そしてぼく達の懐もふかふかになったよ。


 けどね、けどね………。


 宿を出てから3時間ほど経ったんだけど、今日は一度も、いや正確には一回もアリスと話をしていない……。


 昨日の夜が原因だねきっと……。


 ギルドに報告を終えた後、ギルドマスターに呼ばれた。

 実際に呼ばれたのはぼくではなく、アリスだけどね。


「アリスさん、すいません。呼び止めてしまって」

「いいえ、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」

「この前からエルダーフロッグの玉を持参頂いていると思うのですが、その搬入先に魔術研究所というところがありまして、そこの所長さんがどうしても会いたいと話してまして、どうでしょうか?」

「私に? ですか?」

「アリスさんもそうですが、所長さんが会いたいのはこの……」 

 ナタリーさんがぼくの事を見る。

『え? なに? ぼく売られるの? やだぁーそんなの! 断っ……』


「良いですよ!」


 即答だった!!

『あぁ〜、相当怒ってらっしゃる……』

「ありがとうございます。では明日お願い出来ますか?」

「わかりました」

 アリスが先を立とうとした時。

「あ! アリスさんもう一つ良いでしょうか?」

「はい」

 再度席に着くアリス。

「ごめんなさい、大した事は無いのですが……」

 なぜか、モジモジしているナタリーさん。

「……昨日、一緒だった男性って誰なんですか?」

「……え? 昨日一緒にいた男性、ですか?」

 アリスの頭の中に?がうまれる。

 アリスが何のことかわからないという仕草をすると、ナタリーさんが。

「昨日大通りで、体調を崩されましたよね? その時介抱した男性がいましたよね……」


 え〜っと、それぼくだね。


 アリスはというと『すんごい動揺してる!』

「え? 何でそんな事知ってるんですか?」

「私もその時、たまたまその近くに居たんですよ。アリスさんと別れてから用事が出来まして、近くを通ったら何か騒ぎになってまして、気になって見に行ったらアリスさんとその男性が居たんですよ。それより、どんな方何ですか?」

「どんな方って……」


 アリスがぼくの方を見るが……。ぼくは蜘蛛なので話しませーん。

 聞こえないふりをしたり、一人宙に浮いたりなんかして遊んだよ。


「私もあんまり分からなくて……。ほら、それどころじゃ無かったですし……」

 凄く苦しい言い訳に聞こえた。

「そう、ですか……」

 残念そうに落ち込むナタリーさん。

「ところで、その人がどうしたんですか?」


「カッコいいなって思って……」


《ドン》


 ことわざにもあるよね。

も屋根から落ちる】ってね。

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