第15話 アリスの気持ち?
夕食後、アリスは自室にて今日の事を考えていた。
アグーが、人型にしてみてって言った時、最初は面白いかもって思った。
でも、アグーを私の中に戻した後私は迷った。
どんな人、男性? 女性? どんな顔? 全てにおいてわからなくなった。
だからといって、呼び出さないわけにもいかなかった為
そして出てきたアグーを見た時、私の心臓はあの人に鷲掴みにされたかの様に苦しかった。
『何で今更……』
そう思った。
でも、あの人はあの人であってもあの人ではない。
アグーは何も悪い事はしていない。
それなのに、あんな態度をとってしまった。
本来なら嫌われたりしてもおかしくないかもしれない、けどアグーはそんなのは気にしていないかの様に普段と変わらず話してくれた、支えてくれた、そして助けてくれた。
正直めちゃくちゃかっこよかった、それに怖かった!
あんな表情、言葉、そしてオーラを見た事がない!
彼は人間ではないと、改めて感じさせられた。
それでも私は……。
彼とずっと居たい!!
謝りたい。
いてもたっても居られずアグーを探すがどこにも居なかった。
「リリー、アグー知らない?」
「ううん、知らないよ」
「あっ、ママ! アグーさん知らない?」
奥からママさんが出てきた。
「アグーさん、ならさっきお風呂に行くって言ってたわよ」
「あっ! そうですか、ありがとうございます」
「アリスさん!」
ママさんが私に【くいくい】っと手で手招きしている。
「どうしました?」
「今なら誰も居ませんから、アグーさんと一緒にお風呂いかがですか?」
ニヤッと笑みを浮かべ、私にとんでもない事を言ってくる。
「一緒なんて……そんな!!」
「だって、好きなんですよね?」
「うっ!!」
「ふふ、なら行動あるのみですよ!」
【ファイト】というジェスチャーと共に、【さ〜さ〜さ〜】っと言わんばかりにお風呂の方へ誘導される。
「ちょ! ママさん!!」
「はいっ! いってらっしゃ〜い」
脱衣場に放り出されてしまった。
「どうしよう……」
そんな事を考えながらも服を脱いでいく。
「まぁ、あれよ。謝ってすぐに出てきたら良いわけだし、お湯の中に入っちゃえば多分大丈夫だと思うし、何よりアグーは召喚獣だから、何もないわよ、うん! 何もない何もない!」
自分に言い聞かせている間に服を脱ぎ終わり、お風呂場へ向かう。
心臓が飛び出しているかの様な心臓の音!!
お風呂へ通ずる扉を開けると、湯船の中に一人いるのが分かった。
あの背中はアグーに間違いなかった。
『うう〜、恥ずかしい!!』
「アグー?」
アグーの体がビクッと震え、こちらを振り向く。
しかしすぐに顔を背けてしまった。
「え!? なんで!?」
「ごめんね、ママさんに聞いたらここだって言われて」
「いや、そうじゃなくて、何で入ってきたの? ぼくが入ってるのは知ってたって事でしょう?」
「ああ〜、ママさんがね一緒に入ってきてって、
「つい! ですか……」
「私とお風呂入りたかったんじゃないの?」
「え!? まぁ、そうだけど……まさか…ほん……とうに……」
「うん?」
「それより、アリスの方は嫌じゃないの?」
「嫌じゃ、ないよ! だってアグーだもん!」
「それは、召喚獣だから?」
「……ううん! 違う、アグーだからだよ」
「それはどういう……?」
「どういう意味だろうね。うう〜、さむ! 寒いから入るね」
「はぁ〜、気持ちいいー! ね、アグー?」
「……うん、気持ち良いね」
「ねぇ、アグー。私ねアグーに謝りに来たんだ」
「謝りに?」
アグーが不意にこっちを顔を向けてきたので。
「ダメ、こっちは向かないの!!」
アグーの顔を反対方向へ強引に向ける。
「うぐ! ご、ごめん!」
[人型じゃなかったら良かったかも……]
「今なんか言った?」
「ひえ!! 何も言ってません!」
「怪しい! まぁ、もしかしたら
「じゃ……なかったら!?」ゴクリ!
「どうしようかな〜!」
「……」
「そんなに落ち込まないでよ、これからいっぱい一緒に入れるから、ね」
「本当!?」
あからさまに明るくなるアグー、そしてこっちを見る。
「だからこっちを見たらダメ!!」
「う〜、意地悪!」
「意地悪じゃないわよ、私だって恥ずかしんだから!」
「子熊になりたい!」
「してあげても良いけど、人型のアグーを見た後なら対応は一緒よ!!」
「そんなぁ〜!! それじゃ子熊のぼくに溺れろって言うの?」
「そこは、あれよ。私が見えない様に持つのよ、アグーを!!」
「じゃあ……」
「危なくなったら、戻ってもらうし!!」
「……」
「また落ち込んだ!」
『良かった、怒ってない! 多分怒ってないとは思っていたけど、自分で確認するまでは怖かった。でも、今のアグーは以前と変わらず接してくれるし、優しくて、面白くて、そしてエ○チなアグーだ』
「ごめんね、アグー。貴方が人型になった時混乱して変な態度をとってしまって」
「ああ〜、そのことか! 謝りたいって!」
「うん!」
「確かにビックリはしたけど、怒ってないし、まして嫌いになんてならないよ!」
「そう?」
「そんな事で、お風呂を一緒に入ってくれるなら毎日でも良いかもな!」
「アグー? 調子に乗らないの!!」
「はーい、残念……」
「……でも、少しだけね……」
「なに!? !!」
「ダメ向こう向いてて!」
「……はい!」
アグーの背中は召喚獣とは思えないほどガッチリしていてまるで本当の男の人の背中の様だった。
「じゃあ、私上がるね!!」
急に恥ずかしくなり、早口でそう伝えお風呂を後にしたのだ。
結局あの事は話せなかった、でも……。
「なんか、スッキリしたな!」
「あっ! 早かったんですね」
「ママさん」
「ふふふ、その様子だと上手くいったんですね」
「え? 何がですか!?」
「うふふふふ、若いって良いわねぇ〜」
凄く上機嫌で、奥に去っていくママさんだった。
「なんか見過ごされている気がして恥ずかしい!」
顔が赤く熱くなるのがわかる、それがお風呂に入った為なのか、それとも……。
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