第13話 大切にもの!

 宿の奥へと入って行ったママを見送るリリー。

「大丈夫かな、ママ!! やたらと体クネクネしてたけど、あっ! あれか、○○○か!?」

 リリーはリリーでリリーなりの解釈にて納得したのだった。


「邪魔するぞ!!」


「あっ! いらっしゃいま、せ……」

 入って来たのは厳ついいかつい顔の大男だった。


「嬢ちゃん、お母さんはいるかな!?」


「……ま、ママ〜!!」

「は〜い、なに〜? そんな大きな声出し……て……」

「こんにちは、用意はできましたかな!?」

「それは……」



 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 ぼく視点


『どうしよう〜、アリスの要望とはいえ抱きついたわ良いけどいざ抱きつくと離れるタイミングが分からん!!』

「嫌いになった?」

『おお! ビックリした!!』

「うん? 嫌いになるわけないじゃん」

『こんな姿見せられて嫌いになるわけないでしょ〜よ!!』

「それに、ぼくはアリスの召喚獣だし……」

「そっか!……」

『え? なに!? 言葉の選択間違った?』

 少しづつ離れるアリス、涙はもう無かったけど、目元は赤く腫れていた。

「ごめん、顔を洗ってくるね……」

 立ち上がり、ドアの方へ向かう。

「ありがとう、アグー!」

「どう、致しまして……」

『え? 何に対してのお礼? 抱きしめた事? わからん』

 前世で亡くなる前から女の子とは無縁の生活だったせいか、この状況がどういう状況なのか全くわからなかった。

 それ以上にぼくの立場は召喚獣だ。

『まぁ、少しでもアリスの支えになれたんなら良いか』



 アリス視点


『なんだろう、あんなに悲しかったのに今は……。アグー?だよね?? このに抱かれていると落ち着く、なんでだろう。やっぱりまだ、私は……。嫌われたくない!』

 

「嫌いになった?」


 そう聞いたら、そんなわけないと言ってくれた。

「そっか!」 


「それに、ぼくはアリスの召喚獣だし!!」


『……召喚獣。そうか、このは私の召喚獣なんだ……』


「そっか……」


『近いのに遠く感じる存在か……。アグーは本当に召喚獣なの!? まるで本物の様なこの感触、そして』

 私はアグーから離れ、彼の顔を見る。

 少し困った顔をしているのがわかる。

『あの時のクマも、蜘蛛も、コウモリも、そして蛇も全てアグーなんだ!』


「ごめん、顔を洗ってくるね。ありがとうアグー。」


「あ〜も〜! 何してんだろう私は!」

 洗面所で顔を洗う。

『酷い顔』




「おい! いつまで待たせんですかね!?」

『なに!?』

 下の方から聞きなれない男の人の怒鳴り声が聞こえて来た。

「ちょっと、大きな声はやめて下さい。子供の前ですよ!」

『今度はママさんだ! どうしたんだろう!』


「あんだ〜! なぁ嬢ちゃんもわかるよな!? 借りたもんは返さないといけないよね!!」

 下へ向かうと、そこには大男がママさんとリリーに言い寄っていた。ママさんは必死にリリーを守っていたのだ。


「何をしているんですか!?」

「あぁん!? 誰だお前は?」

「この方は関係ありません、この宿のお客さんで……きゃ!!」

 ママさんが話に割って入ると、それを良しとしなかった男がママを突き飛ばし、1メートル程後ろへと倒れ込んでしまう。

「ママさん!! ちょっとあなた、今何をしたかわかっているの?」

「あ! 俺の話に割って入ってきたもんが悪いんだよ! それによ嬢ちゃん、あんたには関係のない話だ!」

「確かに関係ないかもしれませんが、それとママさん達に乱暴を働く事は全く別問題です」


「俺はな、こいつらが借金してるからそれを返してもらいに来ただけなんだよ!!」

「……借金!」

「そうだよ!」

 私はママさんの方見て確認を行うと『はい』という意味で頷く。

「だからと言って、こんなやり方はないでしょう!?」

「こっちはな、何ヶ月も待ってやってんだよ!! なぁ! そうだよな?」

 男は、ママさんに向かって吠える。

「お金は、毎月少しづつですが払っているはずです!」

「だからなんだよ!?」

「あなたが来る度に、借金の額が上がっていて返してますけど一向に減らないんですよ」

「それは当たり前でしょうが、利子っていうものがあるのでね!」

「だからって来る度に金貨5枚づつ上がる利子なんて変ですよ!」

「だから言ってるじゃないですか! 返せないなら! あなた自身で払ってもらっても結構だと」

「それは……どういう!?」

「お嬢ちゃん! そんな良い体してこの意味がわからないのかい? 文字通り体で払ってもらうんだよ! まぁ瘤付きこぶつきだが、まだあんたもまだまだいける体だしな!」

 男が、ママさんの体を見る。

「やめて下さい!」

「それに、こっちも何年かしたら上玉になりそうだしな!」

 リリーの方を見る男。

 恐怖で震えているリリー。

「この子には一本たりとも触れさせませんから!」

「じゃあ! お前の体で払ってくれるのか? ああ!?」

「やめなさい!」

「だから、あんたには関係無いだろうが!! それとも何か? お前が払ってくれるのか?」

「それは……」

「俺は別に良いんだぜ、誰が払おうとな」

「ちなみに幾らなんですか?」

「金貨150枚ってとこかな!」

「え!? この前来た時は金貨100枚って!!」

「ああ! 今変わったんだよ!!」

「そんな……」

 床に座り込むママさん。

「金貨150枚!!」

「で、お前が払うのか!? それとも……お前のか・ら・

だで!! 払ってもらっても良いんだぜ!!」




『くっ! どうしたら、どうしたら良いのアグー! またアグーに頼ってしまう。私は……が居ないと何も出来ないし、強くなれない! ……助けて!』



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