第24話 一筋縄ではいかなさそう
翌日の朝、俺と三月さんはいつものように早く登校して、美化委員の仕事をこなし、約束通り小咲さんの席へと向かった。
さすがに俺たちより早く登校してくるということはないけど、なんだかんだ小咲さんはクラスの中でも教室にやって来るのが早い。
クラスメイト達がたくさんいると、今度は三月さんが目立った行動をしたがらなくなるから、ちょうどよかった。
たまたまではあるんだろうけど、こうやっていい感じに行動が噛み合ってるところからも、三月さんと小咲さんの相性の良さを伺わせてくれるから、なおのこと俺は二人にもっと仲良くなって欲しい。
「小咲さん、その、おはよう」
「――! せ、関谷君に……三月ちゃん……。…………お、おはよう……」
漫画本(文庫本っぽくカバーを付けてる)を一人で呼んでるところに挨拶すると、小咲さんは小さい体をビクッとさせ、挙動不審になりながら作り笑いを浮かべた。
昨日からの気まずい感じは今日も健在だ。
「ふ、二人して……朝早くからどうしたの……? こ、小咲はいつも通り……い、インプットの時間っていうか……とにかく一人を満喫してたんだけど……」
「あ、ご、ごめん。じゃあちょっと、手短に聞きたいことがあるから、屋上でも、中庭の隅の方でも、体育館裏でもどこでもいい。着いてきてくれない?」
「え……」
「つくし……ちゃん。私からもお願いします。三人で、どこか別の場所へ移動してお話しましょう……」
「……三月ちゃん……」
呆気にとられたように一瞬だけ俺たちを見つめた後、小咲さんはハッとし、もぞもぞとしながら漫画本で顔を隠してしまった。
「……ごめん。今は……ちょっといいシーンのとこ読んでたから……手が離せない……」
「……じゃあ、いつならいい? 昼休みは? 放課後でも俺は全然いい」
「わ、私も、いつだっていいです」
食い下がるようにして言って見せるも、小咲さんの首はなかなか縦に振れない。
頭隠して尻隠さずじゃないけど、漫画本に顔を突っ込んだまま、「ごめん」と言うばかりで、他に何か喋ってくれそうにない。
つまるところ、俺たちとこれ以上深い話は今したくないという意思の表れと見ていい。
こうなると、本当にどうしようもなかった。
無理に連れ出すことだってできるはずがないし、何より少ないながらも朝早く来てるクラスメイト達だってチラホラいる。
言い合いになったりして、騒ぎを起こしてしまえば、噂にだってなりかねない。そんなことは俺も望んでないし、何より、三月さんも、小咲さんもそれを望んではいないだろう。
話が聞けないとなると、どうするべきか……。
下唇を噛みながら悩んでいるうちに、ゾロゾロと他のクラスメイトが登校してきた。
とりあえずは、ここまでか。
俺は三月さんを見つめ、無言で首を横に振った。
彼女は心底残念そうにし、うつむいて小さく頷くのだった。
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