第20話:激闘インディスベンセイブル海峡~~戦艦大和、奮戦ス

 1942年11月12日23:25、戦艦大和は十柄副長の指揮の下、速度を50ノットに落とし北上し、南下してくる米水雷戦隊を邀撃せんとしていた。


「米水雷戦隊、3隻つづ5つに分かれました! 距離は8000より更に接近中!」

「右舷2時方向と10時方向の敵艦より発砲!」

「ふん、進路速度そのままだ!」

 5つに分かれて展開する米水雷戦隊のにニ隊が艦砲射撃を実行するが、大和は進路速度を変えず突き進む、やがて十数本の水柱が立ち上がり数発が大和の右側舷と左副砲塔基部に着弾するが損害は皆無であった。


「さて、返礼といこうか、主砲2時方向の敵艦に照準合わせ! 回転式ガトリング砲は10時方向の敵艦照準、副砲は制圧射撃、全砲門撃ち方始めっ!!」

 撃たれた返礼とばかりに大和の全砲門が四方一斉に火を噴くが鈍重な空母とは違い軽快な回避行動を取る駆逐艦に命中させる事は容易ではなかった、それでも回転式ガトリング砲と副砲によって米駆逐艦2隻が爆沈する、米水雷戦隊も一斉に応戦し大和の周囲に無数の水柱が立ち上がり艦体が爆炎に包まれる。 


「ちぃ! 何をやっているっ!? さっさとネズミ共を殲滅しろっ!!」  

「こ、これは……ま、まずいです、敵艦隊に包囲されつつあります、間もなく魚雷の射程内に入ります!!」

「っ! 副長、このまま直進するのは危険です! 回避行動を!!」

「回避行動など取っては砲撃の照準がズレるだろう、この艦の装甲なら駆逐艦の砲撃など避ける迄も無い! 俺に意見する前に下手糞共にさっさとネズミを沈めろと伝えろっ!!」

「雷撃の危険が有ります、それに攻撃を受けながら高速で回避機動を取っている駆逐艦に命中させるのは空母ほど容易くは有りません、殆どが練度の低い新兵である事をお忘れですか!?」

 いくら電探情報受信装置レーダーリンクシステム砲安定装置カノンスタビライザーの補正を受けていると言っても鈍重で巨大な空母と軽快で小型な駆逐艦とでは勝手が違い、小口径とは言え『砲撃を受けている』という心理的圧迫と合わさり空母に連戦連勝し浮かれていた経験の浅い砲手達を浮き足立させてしまっていた。


「ちっ! 使えん屑どもがっ!!」

「っ!? お言葉ですが無策で敵陣に突っ込んだのは副長の……!」

「見張りより報告!! 雷跡光多数接近、高速の噴進魚雷です!!」 

「右舷1時方向より魚雷多数接近っ! 8乃至12!」

「左舷11時方向からも魚雷っ!! 数少なくとも8!」

「右舷3時方向から更に魚雷がっ!! 数多数、詳細不明!」

「左舷10時方向からも来ています!! 6乃至8!」

「右舷5時方向からも6乃至8!!」

「 「……っ!? 」 」

 艦橋内で十柄と八刀神が言い争っていたその時、見張り各所から次々と魚雷接近の報が寄せられて来る、80ノットで進むこの世界の噴進魚雷は射程距離である6000メートル程の標的に約2分一寸で到達する、それらが進路予測をして放たれるのである、いくら高速で航行していても馬鹿正直に直進すればこうなる事は自明であった。


「き、緊急回避っ!!」

「どっちにですか? 四方から来てるんですよ!?」

「…………ぐっ!」

「副長、ご指示をっ!!」

「お、俺のせいじゃ無い……砲手共が屑だから……グズグズしてるから……だからこんな……俺のせいじゃ……無い……」

「副長……っ!! ……くっ! 副長に代わって俺が指揮を執る!! 被雷警報鳴らせっ!! 総員耐衝撃体勢っ!! 第八戦速(60ノット)、面舵20!! 左舷前部スラスター・・・・・及び右舷後部スラスター・・・・・90度最大噴射10秒後格納! 対雷掃射は……間に合わんか……!」

「……え?え?えっ!? 当たるの? 魚雷に当たっちゃうのっ!?」

「そうです! 防御姿勢を取って下さい司令!!」

「ひぃ! 僕も艦長達と一緒に医務室に行けば良かったぁあああああ!!」

 突然の事に茫然自失とする十柄、それに業を煮やした正宗が出来るだけ適切な指示を出すが時既に遅かった。


 正宗の指示の下60ノットで面舵を切りながら左舷前部側面推進機スラスターと右舷後部側面推進機スラスターを最大に力押しで進路を変えた大和は1時方向からの魚雷群と主推進機メインスラスターへの被雷は何とか回避出来たものの11時方向からの魚雷6本が左舷中央に被雷、巨大な水柱が次々と上がると3時方向からと思われる5本の魚雷が右舷後部に被雷し又も水柱が上がる、その後も次々と米駆逐艦の放ったと思われる魚雷が大和に直撃していく……。


「9時方向からも魚雷接近!」 

「4時方向からも来てますっ!!」

「くっ! 艦内の被害状況を知らせっ!」

「それが、報告上がって来てません……!」

「ひぃいいい!! 沈む、沈んじゃうぅううううっ!!」

「俺のせいじゃ無い……俺のせいじゃ無い……俺のせいじゃ無い……」

 艦橋内は騒然となっており正宗が必死に指揮を執っている中、十柄は椅子の上で頭を抱え項垂れ誰にも聞き取れない声量でぶつぶつと呟いている。


「艦長……じゃ無かった、副長……でも無かった、戦術長、両舷機銃員配置完了したそうです!」

「……よし、各個の判断で対雷掃射開始!」

 広瀬の拙い報告に少し呆れた表情を見せた正宗であったが、即気を取り直し指示を飛ばす、それを受け両舷端に設置された片舷5基、両舷10基の三連装機銃が漆黒の水面に浮かび上がる雷跡光を頼りに迫り来る魚雷に向けて射撃を開始する。


 両舷に並べられた機銃が一斉に雷跡光目掛け機銃曳光弾を撃ち込むと水面が膨れ上がり巨大な水柱が3,4本立ち上がる、しかしその脇をすり抜ける様に4本の魚雷が大和の舷側に命中し水柱を上げると対雷掃射をする三連装機銃に大量の海水が降り注ぐ。


「こりゃ銃身が冷やされて丁度良い! だがこれ以上は通させるな、撃って撃って撃ちまくれぇっ!!」

 50㎜複合装甲に守られた銃座内で砲兵長がスコープを覗きながら檄を飛ばす、それに銃座砲手達は溌溂とした返事で答えた。


「艦内の被害状況は?」 

「それが……どの部署からも被害報告が上がっていません」

「どういう事だ……あれだけ被雷して無傷だとでも……いや、今は包囲を突破する事が先決か、針路3.3.7、最大戦速!!」

 大和は海峡を北上する針路を取り70ノットで米駆逐艦の包囲網を突破せんとする、米駆逐艦の速力は最大で55ノットで有るが加速力で大和に劣っている上、魚雷や艦砲を撃つ為には30ノット程度に速度を抑えなければならない為、速度差は歴然であった。


 これは米新型戦艦サウスダコタ級も例外では無く、16万トンの質量に電探情報受信装置レーダーリンクシステム砲安定装置カノンスタビライザーに支えられ最大戦速70ノットで有効射撃が行える[やまと]の射撃性能が異常なのである。


 とまれ、進路上の米駆逐艦2隻を撃沈しつつ包囲を突破した大和は面舵を取りマライア島を背後に其の砲身を右舷に向け米駆逐艦に狙いを定める、まさかあれだけの雷撃を受け被雷した艦が生きて包囲網を抜けるとは夢にも思っていなかった米水雷戦隊は動揺し混乱していた。


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「《馬鹿な……20本以上の魚雷が直撃した筈だ……なのに何故沈まん!? 何故動ける!?》」 

「《指令、如何致しましょう?》」

「《……再攻撃だ、残りの魚雷を全弾撃ち込め……》」

 米水雷戦隊司令が眼を見開きながら叫んだその時、自艦と僚艦の周囲に複数の水柱が立ち上がり次の瞬間僚艦が爆炎に包まれ二つに折れ沈む。


「《グッ! ジャップの動きが変わった!? まさか、包囲されたのは我々を誘い込む罠だったのか……っ!?》」

当然そんな事は無く、ただ指揮をする人間が変わっただけであるが、其れを知る由も無い米水雷戦隊司令にしてみれば現状そうとしか思えないのも無理は無かった。


「《ま、まだだ、また勝機は有る! 夜陰に紛れて魚雷の射程まで接近し再攻撃だっ!!》」

 この時米水雷戦隊司令は冷静さを欠いていた、必勝の包囲網を展開し日輪の新型戦艦を仕留め勲章と昇進は確実とほくそ笑んだのは僅か十数分前で有った。


 然し日輪戦艦は沈むどころか傾きもせず今窮地に立たされているのは自身である、正に天国から地獄、一度手に仕かけた栄光に縋り付き何としても手繰り寄せたい、その功名心が命取りであった。


 若しこの時煙幕を張り離脱を選択していれば少なくとも半数以上の艦の乗員と自身の命だけは助かったかも知れない。


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「米駆逐艦、急速接近中!」

「慌てるな、電探射撃の前には夜襲は無意味だ、落ち着いて引きつけろ! 第四戦速(40ノット)、面舵10……今だっ! 全砲門撃ち方始めっ!!」

 正宗の操艦によって距離を詰める事に必死の米駆逐艦は網にかかった鰯の如く密集していった、これはまずいと米水雷戦隊司令が気付いた時には遅かった、僚艦と接触する事を恐れた米駆逐艦は機動力をを封じられ、動揺していた所に大和の全砲門が一斉に火を噴いたのである。


 放たれた砲弾は混乱し浮き足立つ米駆逐艦に降り注ぎ、一隻また一隻と弾ける様に爆炎に包まれると艦を崩しながら海中に没して行った。


「《馬鹿なっ!? 何故我々の位置がこうも正確に……まさか!? ジャップもレーダー射撃をぉ……っ!?》」


 米水雷戦隊司令のそれが最後の言葉となった、この砲撃で戦隊旗艦を含めた7隻が沈没若しくは大破横転し、指揮系統を喪失した残り3隻の米駆逐艦は散り散りに北方に離脱して行った。


「戦術長、海峡北より大型艦4、中型艦2,小型艦6を距離18000で捕捉しました! 速力30ノットで接近中です!!」

「行き掛けに出くわした米新型戦艦を含む艦隊か……! 速度そのまま面舵10、右舷反航戦、砲撃用意!」

「敵艦発砲!」

 十数秒後大和の周囲に巨大な水柱が立ち上がる、大和は僅かに面舵を取りつつ反航戦の予測の下右舷に砲を向ける、対する米艦隊は巡洋艦と駆逐艦を下げ戦艦2隻づつを東西に分け速度を上げると大和を挟み撃ちにせんとしていた。


「挟み撃ちか、掛かってやる義理はない、面舵反転、第八戦速(60ノット)左舷砲撃戦、徹甲弾装填用意!」

 米艦隊の動きを察した正宗は艦を反転させ速度を上げると砲を左舷に旋回させる、大和は米戦艦に横腹を晒す形を取り、大和を挟撃せんとした米戦艦の内マライア側の2艦の頭を押さえた、その結果両艦の距離は一気に縮まり、其れを嫌った米戦艦は止むを得ず面舵を切り距離を取る選択をし挟撃は失敗に終わる。


「敵戦艦10時方向、距離12000!」

「よし、左舷反航戦、主砲一斉射、撃ち方始めっ!!」

 正宗の号令の下、大和の64㎝三連装4基12門が一斉に火を噴く、同時に米戦艦マサチューセッツとアラバマも射撃をするが、大和の放った砲弾が数秒早く着弾し米戦艦の周囲に巨大な水柱を立ち上げるものの、この砲撃では両軍とも命中弾は得られなかった、然しその巨大な水柱と着弾速度で大和の砲威力を察した米戦艦の両艦長達は目を剝き青ざめる。


「敵戦艦、散布界に捕らえました!」

「よし! 次で決めるぞ、次弾装填急げ、仰角2度上げ、方位敵艦前方5度に修正、彼我の針路速力に注意しろ、風向きと電探情報更新を見逃すな!」

 主艦橋より上層の射撃指揮所で時田砲術長が矢継ぎ早に指示を出し砲手達はそれに従い機敏に動く、大和の主砲4基12門が一斉に微調整され米戦艦に狙いを定める。


『一番主砲射撃準備良し!』

『ニ番主砲射撃準備良ーし!』

『四番主砲射撃準備完了です!』

『五番主砲射撃準備良し!』

 次弾装填指示から僅か20秒後、計った様に各砲兵長から準備完了の報告が上がる、大和の主砲と副砲の装填は砲弾から装薬装填まで全て高度な自動装填装置で行われており、砲兵は砲弾の種類と装薬量を入力するだけである為、非常事態トラブルは別として通常手順ルーティン内であれば個々の能力差や練度の差は出にくくなっている。


「良し、主砲一斉射、撃てぇーーっ!!」 

 時田の号令の下、再度大和の4基12門の巨砲が火を噴く、雷鳴の如き轟音と共に最大装薬にて秒速2000メートルで飛翔する砲弾は空を海を螺旋状に切り裂きながら米戦艦に向かって行く、刹那米戦艦の周囲に巨大な水柱が次々と上がる中、一発の砲弾が戦艦アラバマの左側舷中央外殻を突き破り艦内奥深くで炸裂する。


 その爆圧でアラバマは一瞬左に傾き側舷上部と甲板、そして副砲塔2基が吹き飛び宙を舞う、その衝撃で喫水線下の外殻にも亀裂を発生させ徐々に浸水し、一度は復原した傾斜が再び左に傾き始めた、更に副砲弾が誘爆したのか連続する爆発音と共にアラバマの左舷は炎と煙に包まれていく。


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「《左舷大破っ!! 外殻貫通、側面第三層まで到達した模様、被害甚大っ!!》」

「《左舷区画で浸水発生!!》」

「《だ、第五エンジン損傷、出力低下!!》」

「《左舷副砲2基が大破、残り2基も使用不能!!》」

「《副砲弾薬庫に引火っ!! 爆発と火災が発生していますっ!!》」

「《何て事だオーマイガ……たった一撃で合衆国ステイツ最新鋭戦艦がこれだけの被害ダメージを受けたと言うのか……浸水をすぐに止めろ、消火班を回せ、右舷に注水し傾斜を復原するんだ、急げっ!!》」

 薄暗い艦橋内に点滅する赤色灯と鬱陶しく響く警報の中、アラバマの艦長は暫く茫然と立ち尽くしていた、自分が乗っているのは海軍休日時代明けの、20年ぶりの米最新鋭戦艦である、その最新最強で在る筈のサウスダコタ級戦艦がたった一撃でここまでの被害を受ける等とは到底信じられなかった。


 無論サウスダコタ級の自艦主砲に対する安全距離が18000メートル以遠で有る事を踏まえると12000メートルでは自艦の主砲にも耐えられないのは当然であるが、それでもここまでの被害ダメージは想定外であった。


 数十分前、防衛艦隊旗艦インディアナと合流したサウスダコタ級4隻は僚艦ワシントンより日輪戦艦の頑強さの報告を受けていたが、艦隊司令のオルデンドルフはこの報告を一笑に付した、至近弾受けて尚、高速で動ける艦など在り得ない、単に敵艦の速度と夜間豪雨による視界不良でワシントンが捉え切れず至近弾を外した事を命中と誤認しただけ、と結論付けたのである。


 是にワシントンの艦長は異を唱えなかった、確かに常識で考えれば200メートルの距離で23インチ(58cm)砲弾が直撃して尚、速度を落とさず航行出来る艦など存在する筈がない、いやそもそも其の様な重装甲でサウスダコタ級を凌駕する速力など出せる筈が無い、サウスダコタ級ですらその条件下で被弾すれば最悪轟沈する状況である、まるで悪夢でも見てしまったかの様に自分の記憶と認識に自信を持てなくなったワシントンの艦長は押し黙ってしまった。


 あの豪雨と暗闇の中60ノットを超える速度で擦れ違えば至近距離でも外す事は有るかも知れない、いや至近距離だからこそ外していたのかも知れない、ワシントンの艦長が自身の記憶と認識に疑いを持ちそう思い込んでしまった事は軍艦の常識を知る者で有ればこそ責められないだろう。


 そしてオルデンドルフが導き出した日輪戦艦の性能は『最大23インチ(58.4㎝)砲搭載の高速巡洋戦艦』で有った、この時点では米海軍は大和の大きさを正確に把握できておらず、サウスダコタ級と同等の大きさと認識していた、故に搭載砲は最大でもサウスダコタ級と同等かそれ以下と考えていた。


 然しオルデンドルフの予想は誤りであったとアラバマの艦長は思い知った、日輪戦艦に積まれている砲は自艦の損害から明らかに24インチ(60.9㎝)以上であると感じられたからである。


 しかしこの時点ではアラバマの艦長はまだ分は自分達に有ると考えていた、何故なら速度と火力でサウスダコタ級を凌駕しているなら当然防御を犠牲にしていると考えていたからである。


 軍艦に限らずこの時代の兵器の性能とは同レベルの技術力・・・・・・・・であれば総合能力はほぼ同じとなる、後は火力、速力、防御力と言う3つの性能の割り振りの違いに過ぎない。


 故にアラバマの艦長はオルデンドルフの考察に準じ日輪新型戦艦やまとを火力と速力に特化した艦だと考えた、そこで自艦が『総合能力で劣っている』と言う考えに至らなかったのは超大国故の驕りと慢心に他ならなかった。


 だからこそアラバマの艦長は離脱せずその場に踏み止まり攻勢に出る選択をした、『《当たりさえすれば直ぐ沈む、日輪ジャップの造る戦車も飛行機もそうだったじゃないか》』その内心を表情に隠す事無くほくそ笑むとアラバマ艦長は砲撃指示を出した。 


 アラバマとマサチューセッツは取り舵を取り大和と相対し反航戦のまま応戦、2艦が一斉に射撃する、両戦艦の放った砲弾は大和の周囲に降り注ぎ、2番主砲正面防盾と左舷副砲基部に其々着弾し爆炎を上げる。


「《爆炎と弾着音を確認、命中した模様です!!》」

「《おお、やったか!?》」 

 通信兵からのその報告に破願するアラバマ艦長で有ったが当然大和は健在で有った。


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「二番主砲塔前部と左舷副砲塔基部に被弾、損害は確認出来ません!」

「……砲撃を物ともせず、雷撃も効かない……まさか本当にそんなふねを造り出すとはな……」

 如月の報告を聞きながら正宗が複雑な表情でそう呟く、先の被雷の損害報告と、今まさに受けた被弾の損害報告、どれも『損害を認められず』であった、ここまで来て尚、景光の言葉と大和の性能を疑うのは慎重を通り越しで只の愚者で有ろう、本来なら手放しで喜ぶべき事実で有る筈だが実の兄を人格破綻者と断じる弟にとって、その実兄人格破綻者の造り出した艦の性能が破格であれば有る程その心情には計り知れないものが浮かんでいた。


 とまれ、サウスダコタ級2隻の砲撃を物ともしない大和は返礼とばかりに64㎝砲12門を斉射する、その砲弾は先程よりも正確にアラバマに向かって飛翔し上部建造物後部と2基の主砲の直下である左側舷前部に命中、上部建造物を粉砕しバイタルパート600㎜の外殻を易々と貫通した徹甲弾は弾薬庫内で炸裂し艦が膨張した次の瞬間爆散すると主砲塔が吹き飛び宙を舞う、その後程なくしてアラバマの艦体は二つに折れた。


 コメリア合衆国海軍の誇る最新最強の戦艦の1隻が無残な鉄くずと化した瞬間であった、アラバマは艦体前部より先に後部が一気に左に傾き悲鳴の様な金属音と共に爆発音を響かせながら漆黒のインディスベンセイブル海峡の水底に没していった、この時既に日付は変わっていた……。


「……っ! 戦術長、西側に展開していた米戦艦2隻が急速接近中です、速度50ノット、現在距離20000!」

「米水雷戦隊にも動き有り、北西より55ノットで急速接近中です、現在距離18000」

「後方2隻の敵戦艦発砲!」

「どうあっても包囲したいか、第四戦速面舵いっぱい、針路1.5.7へ、右舷砲撃戦用意!」

 挟撃が失敗した事を悟ったオルデンドルフ率いるインディアナとワシントンはマサチューセッツと合流せんとし最大戦速50ノットで驀進しながら大和に対し砲撃を行っている、当然命中は期待しておらずマサチューセッツへの援護が目的で有ろう。


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「《ア、アラバマが沈んだ……だと?》」 

「《マサチューセッツからの報告では最初に受けた砲撃と合わせて3発の直撃弾で轟沈したと……それと距離12000からの砲撃で敵艦に2発の直撃弾を与えたものの……その効果は認められず、との事です……》」

「《そんな馬鹿な事があるかっ!!》」

 参謀からの報告にオルデンドルフは椅子の肘掛けを強く叩き叫んだ、その報告が事実ならワシントンの艦長の報告が強ち間違いでは無かった事になる、そして自身が在り得ないと一笑に付したあの報告が事実であったとするならば、艦隊司令として痛恨の失策となる。


 常識で在り得ない報告で有ったとしても、何らかの対策を講じねばならないのが司令官の務めである、無論オルデンドルフ以外の司令官であっても同様の対応を取った者が殆どであろうが、問題は実際に非常識な事態が現実として起こった事である。


 部下の報告を信じずむざむざと最新鋭戦艦一隻を喪失した責任、それはどう言い訳をしようとも自分に責任が伸し掛かってくる事になる、その事実にオルデンドルフは顔面蒼白になりながら唇をかみ拳を握り絞める。


「《沈めなければ……あれ・・を沈めねば……っ!! 何をボケっと突っ立っておるか、一刻も早くマサチューセッツを呼び戻せっ!! あの悪魔・・を海の藻屑にするのだっ!!》」 

 オルデンドルフは血走った目で怒号を飛ばし肘掛けを叩く、それを受け部下達は慌てて動き出す、この時オルデンドルフは誰の目にも明らかに冷静さを失っていた、ワシントンの報告が誤りでは無いのならサウスダコタ級では勝ち目がないという事実に気付かぬ程に……。


 この時大和は海峡南部に在り針路を南南東に執りマサチューセッツに砲撃していた、マサチューセッツは回避行動を取りながら大和から離れ程なく僚艦と合流を果たし、インディアナとワシントンは大和との距離18000を維持しながら速度を35ノットに落とし主砲3基9門を大和に向ける、米水雷戦隊は大和後方に張り付き、隙あらば雷撃せんと16000の距離を蛇行しながら維持している。


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「敵戦艦その数3、距離18000針路本艦と同航、尚、本艦後方16000に敵水雷戦隊展開中です!」

僚艦アラバマの末路を見ても離脱はせんか、何か策があるのか其れとも蛮勇か、何方にしてもザヴァ海峡に行かせる訳にはいかない此処で決着を付ける! 便宜上敵戦艦を先頭から『あ号』『い号』『う号』と呼称する、目標『い号』右舷同航戦、主砲撃ち方始めぇっ!!」

 正宗が右腕を振りかざし号令を掛けると大和の主砲4基12門が一斉に火を噴く、その衝撃は凄まじく海面が弾け空気が吹き飛ぶ。


 米戦艦隊も大和に対し9基27門が一斉に火を噴き互いの砲弾が交差する、刹那、互いの周囲に巨大な水柱が次々と上がり大和の右舷前部側舷と艦橋基部に爆炎が上がるが損害は無かった。


 互いに次弾装填を急ぐが先に砲撃準備を終えたのは大和であった、サウスダコタ級が慌しく装填作業をしているその時、再び日輪戦艦の巨砲が火を噴いた。


 その轟音にマサチューセッツの射撃指揮所で砲術長が振り向いた次の瞬間、周囲に巨大な水柱が立ち上がると同時に前方のワシントンの左舷が吹き飛び爆炎が上がる、ワシントンは見る見る速度を落とし左に傾き始める。


 すると程なくして艦内に衝突警報が鳴り響く、ワシントンを回避する為、艦が取り舵を取った様で砲術長の体が右に傾いた、マサチューセッツに迫るワシントンの更に前方でインディアナの主砲が火を噴いたのが見える、然し針路を大きく変えたマサチューセッツは照準をやり直さなければならない為其れに続く事は出来なかった。


 マサチューセッツの砲術長は各主砲に再照準を命じるが其れより早く日輪戦艦の主砲が三度みたび火を噴いた、日輪戦艦の放った砲弾は吸い込まれる様にワシントンに向かって行くとワシントンの主砲や上部建造物そして艦体が弾ける様に吹き飛び歪み、そして爆炎に包まれ金属の引きちぎれる悲鳴の様な音と共に海中に没し始めていた。


 その惨状を至近距離で見せ付けられたマサチューセッツの砲術長は僚艦を沈められた怒りよりも恐怖が勝りその場に茫然と立ち尽くす。


「……艦体破壊音と沈没音を確認……『い号』沈黙若しくは撃沈です……」

 艦橋左の聴音席から根暗そうな青年『沢井さわい 健司けんじ』上等兵曹が報告して来る、対話能力は皆無だが音高専(音響高等専門学校)出で」耳が非常に良く優秀な聴音ソナー員である。


「敵水雷戦隊、急速接近!」「敵戦艦発砲!」

 如月と広瀬の報告が被った数秒後、米戦艦の砲撃が大和の舷側と副砲基部に命中爆炎が上がる。


「……念の為被害状況の確認は怠るな、下部雷撃・・指揮所聞こえるか?」

『……』

「雷撃指揮所、聞こえるか!」

『……聞こえております』

「……出番だ、アレ・・は使えるな?」

『……何時でも……部下達が丹精込めて磨いております』

 戦術長席の通信機から物静か気なハスキーな女性とも男性ともつかない声とその後ろから部下で有ろう者達の歓声が聞こえて来る……。


「よし、雷撃班は指示あるまで第一配備のまま待機、主砲照準、目標『う号』撃ち方始めぇ!!」

 正宗の号令で主砲が一斉射され12発の砲弾が『う号』こと戦艦マサチューセッツに向けて放たれる、既にマサチューセッツを散布界に捕らえていた時田の指揮の下、見事3発がマサチューセッツの3番主砲と艦中央、そして上部建造物に命中しマサチューセッツは僚艦ワシントンと同じ運命を辿り水底に沈んでいった……。 


「よし、総員防御姿勢を取れ、両舷全速、面舵反転!!」 

「えっ!? ここでか!?」

 突然の指示に戸高が思わず後ろを振り向き正宗を見る。


「後方から水雷戦隊が来ている、後ろから魚雷を受けたいか?」

「……両舷全速、面舵反転ヨーソロ!!」

 威勢と調子の言い掛け声と共に戸高が速度レバーを『第二超戦速』に倒し操縦桿・・・を右に思い切り捻る・・、すると[やまと]は一気に加速しながら大きく弧を描き反転を始める。


「『あ号』距離12000、本艦12時方向!」

「よし、速度第四戦速40ノット、左舷雷撃戦用意! 下部魚雷発射管1番から3番、目標米戦艦『あ号』反航戦、距離12000、雷撃指揮は任せる」


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「……こちら雷撃指揮所……了解しました。 ……発射管1番から3番注水」

「発射管1番から3番注水ヨーソロ!」

「……電探情報受信装置起動、砲塔左舷旋回」

「電探情報受信装置起動! 砲塔左舷旋回ヨーソロ!」

「電探雷撃準備良し! 水雷長、何時でも行けますぜ!」

 雷撃指揮所内の部下達が機敏に動き、水雷長と呼ばれた中性的な士官『栗原くりはら りょう』海軍少尉が自分の席の前に設置されているパネルに視線を落とすと、そこには電探情報が表示されていた、栗原はその画面を見ながらブツブツと呟いた後、無言のまま手で部下に指示を出す、すると部下達は頷き神経を研ぎ澄ます様に音を立てないよう待機する。


「……1番……方位3.3.7に発射……」

 静かに、呟く様に栗原が指示を出すと指揮所前方の部下の一人がボタンを素早く押す、すると大和下部の一番前方の魚雷発射砲塔の左の発射口から大きな魚雷が凄まじい速さで発射される。


「……2番……方位3.3.0に発射……」

 栗原が再度呟くと部下が先程と同じ動作でボタンを押す、すると先程の砲塔真ん中の発射口から同様の魚雷が放たれる。


「……3番……方位3.2.5に発射……」

 三度みたび栗原が呟くと部下も三度同じ動作でスイッチを押す、すると今度は右の発射口から魚雷が放たれる。


『雷撃指揮所より主艦橋へ、試製零式ロ号魚雷・・・・・・・・、1番から3番発射完了しました、着弾は約2分後です……』

「了解だ水雷長、さて、2分後の魚雷と今から行う砲撃、どちらが先に『あ号』を沈められるか……」 

「敵水雷戦隊、距離12000尚も接近中、巡洋艦2、駆逐艦6の模様!」

「主砲照準、左舷『あ号』回転式ガトリング砲照準、前方米水雷戦隊、撃ち方始めぇ!!」


 ・

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「《糞日輪ファッキンジャップを絶対に逃がすなぁーーー!! 追えぇ、追うんだぁああああーーーっ!! 水雷戦隊は何をしておるかぁああ、早く雷撃せんかぁあああ!!》」

 大和が策を弄している間、只一隻生き残った米最新鋭戦艦インディアナ艦橋ではオルデンドルフが怒り狂っていた、参謀の何人かはワシントンが撃沈された時点で撤退を進言していたが聞く耳を持たず、完全に冷静さを失っていた。


 海軍中将にまで上り詰めたオルデンドルフがこうも情緒不安定に見えるのはひとえに彼の選民意識、差別的思想に有った、彼の中では黒人や有色人種は奴隷、その中でも東洋人黄色人種は猿と言う人間ですらない認識で有った、若しこの戦いの相手が白人であったなら、オルデンドルフはここまで怒り狂う事は無かったであろう……。


「《て、提督、あの艦は化け物です、本艦の主砲では奴の装甲は抜けません、水雷戦隊に引き付けさせて本艦は離脱するべきです……》」  

「《……つまりお前は……多くの僚艦と同胞を無残に殺されて置きながら……更に同胞を生贄に自分だけ助かろうと言うのか……??》」

「《……っ!? い、いえ……私は決してそのような……》」

「《ならば追えっ!! ならば撃てっ!! あの悪魔を!! 同胞の仇をっ!! 今直ぐにっ……》」

 その時耳をつんざく音と共にインディアナの一番主砲塔が吹き飛んだ、大和の主砲弾の直撃を受けたインディアナの主砲は砲塔が粉砕され砲身が回転しながら宙を舞いそして艦橋に直撃し窓と外殻を抉り取りそのまま海面に落ちていった。


「《お、おのれぇ悪魔めがぁ……う……ぐぅ……撃て……撃つんだぁ……》」

「《て、提督!? 衛生兵、提督を医務室へっ!!》」

 衝撃と破片を受け血まみれになったオルデンドルフは参謀の一人に抱えられ衛生兵と共に艦橋から連れ出された、残されたインディアナ艦長が撤退の指示を出そうとしたその時、艦橋の何倍もの高さの巨大な水柱がインディアナの艦尾から立ち上がり三番主砲塔基部から艦尾までを粉砕したそ、そして推進力を失ったインディアナはその場で停止してしまった。


「《艦尾大破ぁっ!! 推力停止ぃ!!》」 

「《な、何事だぁ!?》」

「《ぎょ、魚雷です、凄まじい雷速の……》」

「《ま、またくるぞぉおーーーーっ!!!》」

 その悲鳴に近い叫びの直後、今度は前部2基の主砲直下から巨大な水柱が上がった、その瞬間爆圧で艦が僅かに海面まで浮き上がりそして折れる、その次の瞬間弾薬庫が誘爆し主砲と共に艦が弾け艦橋を含む上部建造物が吹き飛んだ。

 

 艦橋より前部と艦尾を完全に失い、文字通り鉄塊と化したインディアナは最早戦艦の形を成してはいなかった、それでもその艦上では必死に生き残ろうとする米兵達がボートを下ろそうと必死に動いていた、その時、一人の水兵の目に漆黒の水面を高速で這う光が映る、それは米最新鋭戦艦を瞬く間に鉄塊に変えた『悪魔の槍デーモンフォーク』であった。


「《嘘だろ……もう止めてくれ……》」

 絶望の表情でそう呟いたそれが其の水兵の最後の言葉となった、悪魔やまとの放った悪魔の槍デーモンフォークは鉄塊と化したインディアナの舷側に突き刺さると凄まじい水柱を立ち上げ、僅かに残った原型を残さず粉砕した、合衆国の最新鋭戦艦は文字通り艦を崩しながら水底に没していった……。

 

 その後、僅かに生き残ったインディアナ乗員達は遠くで連続して起こる爆音と爆炎を聞き見る事になる、其処には救命ボートに乗せられ重傷を負ったオルデンドルフの姿もあった……。


「《悪魔デビル……いや魔王サタンめ……この屈辱……俺は絶対に忘れんぞ……必ず……必ずこの手で貴様を沈めてやる……どんな手を使ってでも……必ずだ……》」

 虚ろな瞳で漆黒のそらを仰ぎ掠れた声で絞り出す様に零したその言葉には怨嗟の念が宿っていた……。




【後書き】

 ~~登場兵器解説~~


◆戦艦大和 全長398mメートル 幅54mメートル 基本排水量16万㌧ 速力70ノット  主砲180度旋回速度:10秒


 兵装:64㎝50口径三連装砲 4基(前部2基 後部2基) 


    20cm回転式対艦砲 1基(前部)


    四連装噴進弾垂直発射装置 30基120門(前部甲板20基 後部甲板10基) 


    20㎝55口径連装汎用砲 12基(上部建造物両舷)       


    35㎜三連装速射機関砲 30基(構造物両舷端10基 他各要所配置) 


    98㎝三連装対潜砲 3基(艦底中央前後) 


    垂直離着陸艦上戦闘機・瑞雲 6機


 装甲:両舷装甲:200㎜~980㎜零式相転移装甲(最大厚防御区画97%)


    水平装甲:200㎜~980㎜零式相転移装甲(最大厚防御区画95%)


    水線下装甲:200㎜~980㎜零式相転移装甲(最大厚防御区画95%)


 内殻防御:複合式空間内張防御機構 / 対水雷三層構造複合式空間機構


 主機関:ロ号艦本零式甲型蒼燐核動力炉 1基 


 副機関:ハ号艦本零式一型蒼燐蓄力炉 2基   


 推進機:零式一型蒼燐噴進機 4基 / 零式ニ型指向性側面蒼燐噴進機 10基       


 艦体維持管制装置:照式伊号端末・日和(ひより)


 概要:八刀神景光が設計開発した超戦艦、その性能は火力、速力、装甲共に現行の戦艦を遥かに凌駕している。 鉄より軽いエルディウム合金を更に軽量強靭化させた『八刀神YG零式神銀鋼エルディウム・甲・HQ』で艦体を構築し立体竜骨機構と称する強靭な骨組みフレームで艦体を支える様設計されており、景光曰く『艦が折れる事は絶対に無い』と豪語している。


 外殻装甲は22枚の巨大なパーツで構築されており、YGエルディウム装甲に新機構を投入加工した『零式相転移装甲』を採用している、相転移装甲とは装甲自体が『反応』『硬化』『緩衝』を行い受けた攻撃に対応した防御方式を取る事が出来る物である、また艦体維持管制装置『日和ひより』によって性能向上アップデートが可能な仕様となっている。


 兵装は世界最大の64㎝50口径砲三連装4基を主兵装としている、主砲は一番から五番まで存在するが三番主砲塔が抜けているのは現在『回転式対艦砲』がその位置に座っているからである、砲塔その物は64㎝砲塔と同じ物で有り、取り換えて三番主砲とする事も比較的容易である。


 副砲は20㎝55口径汎用連装砲を12基搭載しており対空戦闘や対艦戦闘にも使える両用砲である、我々の世界では旋回速度の遅さなど中途半端な仕様が不評で有った両用砲であるが、この世界、特に大和の動力であれば200㎜複合装甲を持つ副砲であっても砲兵が酔う程の旋回速度を有するので問題は無い、因みに副砲基部は600㎜零式相転移装甲で守られているが副砲塔は構造上200㎜複合装甲で有る為一見防御上の弱点に思えるが、副砲基部は『後付けの様な設計』となっている為、艦体とは防御上別構造となっている。


 主対空砲は信頼性の高い『35㎜三連装速射機関砲』を採用しており、全ての砲座に50㎜複合装甲が施されている、動力は相転移装甲の動力伝達機構を利用して配線を必要とせず直接動力炉から取っている為訓練していない人間だと即座に三半規管がやられる程の旋回能力を持つ、ただ弾丸補充は構造上副砲塔基部から運ぶという原始的な方法を取っている。


 今回使用されなかった『四連装噴進弾垂直発射装置』は所謂『VLS』で有るが、実は搭載されている噴進弾ミサイルには未完成の誘導装置しか取り付けられていない試作品で有る為、使いどころが難しく非常に信頼性の低い兵器となっている。


 そして今回最後に活躍した艦体下部の兵装『98㎝三連装対潜砲』はその名の通り実は対潜用兵装であり、今回の様な使用は副次的な物で使用した『零式ロ号魚雷』は対大型水上艦艇用兵器である、実はこちらも誘導装置が未完成であるが為に本来の用途にはまだ使えないというオチがある。


 これら様々な他の戦艦を凌駕する無茶な設計を可能としているのが本艦の主機関『ロ号艦本零式甲型蒼燐核動力炉』の存在である、是だけの無茶な要求を満たしている動力炉であるが、その使用率は数%に過ぎないとも言われており、その性能は未だ未知数である……。 


 



 

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