二章
15話イージスとの出会い
戦争から数日が過ぎ、無事に報酬も頂いた。
当然のことながら爵位は授与されなかったが……。
二等勲章を授与され、一歩近づいたと言っていいだろう。
何より、色々な方々に名前を覚えて頂いた。
指名依頼なども増えてきて、少し困っているほどに。
そんな中、とある悩みに直面していた。
「やっぱり、二人じゃ厳しいな……」
依頼が増えると、どうしても多様性を求められる。
そうなると、俺達だけでは満足にいく仕事ができない。
「だな……かといって、俺も団長も特殊というか……」
俺はその若さ故に、皆が様子見をしている。
スーパールーキーなどと言われているらしいが……。
そういう奴が早死にする世界だということを皆が知っているからだろう。
アロイスは……うん、怖がられているからな。
もちろん俺はアロイスが好きだから、アロイスを好きな奴以外は認めないし。
「うーん……ホムラが仲間になってくれるといいんだが……」
「未来が見えるぜ……ライバルの仲間になどなりませんわ!とか」
「やっぱり、そう思う? しかも、意固地になりそうだな」
あっちから言ってくれると楽だけど……まあ、追々考えていくか。
「それに魔法使いより必要なのは……」
「盾役だな……今のままではリスクが高すぎる」
「そうだ、団長は本来なら前線に出るべきじゃない。出たとしても遊撃のポジションだ。俺は前衛だが、盾役がいてこそ光るタイプだ」
「うーん……よし、それぞれで盾役を探してみよう。それまで依頼は受けすぎないようにしておく」
「勿体ないが……仕方ないか」
そこで、ひとまず解散となる。
俺はとりあえず、訓練所にて観察をする。
「あれは……やる気がない……あれは……訓練してる気でいるだけ……」
最悪、別に強くなくていい。
もちろん、強いことにこしたことはないが……。
強さなんて、よっぽど才能がない限りはなんとかなる。
それよりも強くなろうとする意思。
自分のことだけではなく、人のことも考えられる人柄。
絶え間ない努力をできる人のが好感が持てる。
「まあ、そんな人物が……おっ、あれは……」
重たい鎧を着て、一心不乱に槍を突いている男性がいる。
「おいおい! 役立たずが訓練してるぜ!」
「無駄無駄! どうせ本番になったら使えねえんだよ!」
「さっさと田舎に帰れ! 目障りなんだよ!」
「まあ、いいじゃねえか。荷物持ちとしては役に立つ……一流のな!」
「「「はははっ!」」」
聞くに耐えん会話だな……しかし……ほう?
その言葉を聞いてもなお、男性は訓練を続けている。
無関心なのか、タフなのか……はたまた違う何かなのか。
「けっ! 相変わらずつまんねえ奴!」
「行こうぜ!」
反応がないことに飽きたのか、奴らが去っていく。
「へぇ……面白いな。よし、声をかけてみるか」
ただし、訓練の邪魔をしないように近寄るだけにする。
タイミングがあるだろうし、このまま待つとしよう。
そして……五分ほど経つと……。
「あの……オイラに何か用ですか?」
「訓練中に申し訳ない。俺の名前はユウマといいます。貴方のお名前は?」
「あっ——噂の……オイラはイージスっていいます」
「イージスさんか……よろしくね」
「えっと……? それで……」
「ああ、少し話をする時間をもらえるかな?」
「い、いいですけど……オイラなんかと何を……?」
「いや……なんで冒険者をしているんですか? あっ——これは嫌味ではなく、ただの疑問です。もちろん、無理には聞きません」
「……あんた、良い人だな……それに言葉が優しい……オイラは頭も良くないし、不器用だから……これしか考えられなくて……妹や弟に仕送りしたくて……でも、オイラ……これさえもダメで……」
「そうですか……強くなりたいですか?」
妹や弟か……うん、これを聞いて黙っていられる俺ではない。
それに……目が死んでいない。
これなら、本人のやる気次第でどうにかなるか……?
「も、もちろん!」
「でも、一人で訓練しても上達はしないと思いますよ?」
「新人さんは知らないみたいですが、オイラには相手がいなくて……役立たずで鈍臭くて……誰も仲間にしてくれなくて」
「では、俺が相手になりましょう。さあ、どうぞ」
「え? ……えぇ!?」
「ほら、槍を構えてください。あと、鎧は脱いでください」
「え?で、でも……オイラは」
「わかっています、盾役を目指していることは。ただ、物事というのはいっぺんにやるものではありません。まずは槍から鍛えていきましょう」
俺も回復魔法を覚える際は、剣術の稽古は控えたし。
攻撃的な姿勢は、回復魔法習得の妨げになると思ったからだ。
「わ、わかりました……」
鎧を脱いだイージスの身体を観察する。
全体的に筋肉は付いているな。
あれだけの荷物を運べるなら、使える筋肉の持ち主だろう。
何故、これで役立たずと言われる?
「さあ、突いてみてください——遠慮なく」
模擬剣と模擬槍にて対峙する。
「は、はい! セァ!」
その槍を剣で弾く。
「うっ!?」
俺に力負けしている……本来ならありえない。
「なるほど」
「やっぱり、オイラには……」
「ふぅ……ハァァァァ——!!」
殺気を込めて——攻める!
「ヒィ!?」
「退くな! 強くなりたいんだろ!?」
「は、はい!」
「ハァ!」
槍を叩き落とす!
「っ——!!」
「もっと力を入れろ! 単純な力は俺より強いはずだ!」
「や、やってます!」
「いや! 貴方は遠慮をしている! 優しさは時に妨げとなる!」
俺がそうだった。
叔父上に剣を教えてもらう時、散々言われたことだ。
「そ、それは……」
「訓練で遠慮をしてるから強くなれない! 本気で訓練しなくては本番で役に立つはずがない! 妹と弟を楽させたいなら——俺を殺すつもりでかかってこい!」
「う……ウワァァァァ!」
今までとは違う一撃が飛んでくる!
「クッ——!?」
剣で弾けずに、俺が吹き飛ばされる。
「あっ——だ、大丈夫ですか!?」
「イテテ……できたじゃないか」
「え? あれ? オイラが?」
「おそらく……強くならない要因は優しさによる対人との訓練不足。そして、臆病とも言える性格。それにより身体が強張っていることが原因と思われます。それを直すには、ひたすらに意識して訓練すること。何より、実戦を積むことです」
「そ、そうなんですか? でも……今更、オイラと訓練してくれる人なんて……」
「俺が相手になります」
「え?」
「明日から、毎日この時間に来ます。いいですね?」
「で、でも……」
「決まりです! 俺は来ますからね?」
「は、はい……」
半ば強引に認めさせ、約束をとりつけた。
妹や弟のためとか……放っておけるわけがない。
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