幕間~実家に帰る~
苦しい戦いが終わり、事後処理を行う。
「団長、これで全部だぜ」
「アロイス、ありがとう。では……
集められた死体を浄化する。
さらに、生き残りで協力して、土の中に埋めていく。
その後は現場指揮官に報告をし、王都帰還の準備を行う。
すると、ホムラが話しかけてくる。
「ユウマは浄化も使えるのですね……光魔法と言われる中で、範囲回復魔法、派生である防御魔法……まさしく一流の使い手ですわ」
「おいおい、どうした? そんなに褒めても何も出ないぞ?」
「ワ、ワタクシだって、凄いなと思ったことはきちんといいますわ!」
「そうか……悪い、茶化してしまったな。ありがとう、ホムラ」
「べ、別に……あら? 誰かがきますわよ?」
そちらを見ると……親父と兄貴がいた。
「生きていたか……まあ、当然のことか」
「チッ! いいか、ボスクラスを倒したからって調子に乗るなよ? 俺だって、その場にいたら倒せていた。ラッキーだったな、お前は。役立たず共しかいない場所で、皆が死んだから手柄を独り占めできて」
「貴方! それが命がけで戦った方に対する言い草なのですか!?」
「兄貴——今すぐに訂正しろ」
「な、何をだ?」
「あの場において役立たずなどいない! 皆が命がけで戦っていた! それを侮辱することは——戦士として人として許されることではない!」
「あぁ!? 良い女の前だからってカッコつけやがって!!」
「ホムラが良い女なのは認める。だが、別にカッコつけてもいない」
「ユウマ!? っ〜!! な、なにを……!」
「バルス、その辺にしておけ。他の貴族も見ている。それに我々は我々で手柄を立てた。これで、準子爵に近づくだろう」
「父上……ふぅ……そうですね。お前がいくら頑張ろうが、爵位は俺に決まっているしな」
「いや、そもそも興味ないので。ただし……もし、エリカに無理強いさせるようなことがあれば——お前達を許さない」
「……お前には関係のないことだ。さあ、いくぞ。我々はこの後、伯爵から招待を受けているんだからな」
父上と兄貴は、そう言うと去っていく……。
「ほう? 良いことを聞いたな」
「ユウマ……いえ、詳しいことは聞きませんわ」
「ああ、そうしてくれると助かる。ありがとな、ホムラ」
「な、何がですの?」
「見てくれるか?」
「……手汗がすごいですわ……」
「どうも昔から苦手でな……虚勢を張らないと……情けないことだ。だから、ホムラがいてくれて助かったよ。ライバルの前でカッコ悪いところは見せられないからな」
「そ、そうですわねっ! ……まあ、かっこ悪くはなかったですわよ?」
「なら良かったよ……おっ、アロイスが戻ってきたか」
「団長、報奨金について報告をしてきたぜ。後日、冒険者ギルド宛に届くそうだ」
「ありがとな、アロイス。さあ、帰るとしよう」
「ワタクシも帰りますわ。では、お二方……また会いましょう」
「ああ、気をつけてな」
「おうよ」
その後、俺たちも王都に向けて出発をする。
無事に王都に帰還して、冒険者ギルドに報告を済ませる。
「さて……では、アロイス。俺は実家に帰ることにするよ」
「ああ、わかったぜ。じゃあ、俺は奴に会いにいくか」
「それじゃあ、また明日」
「おうよ」
アロイスと別れ、実家へと急ぐ。
今なら、親父と兄貴がいないからチャンスだからな。
そして……。
「お兄ちゃんだぁ〜!」
「おい、痛いぞ。グリグリするんじゃない」
「えへへ〜……やです!」
「はいはい、好きにしなさい」
「むふふ〜……お兄ちゃんの匂いだぁ……」
「ユウマ、お帰りなさい。無事で何よりです」
「母上もお元気そうで。親父と兄貴も無事なのでご安心ください」
「フフ……相変わらず優しい子ね。良いのよ、気を使わなくて。貴方は、貴方の思う通りに生きなさい」
「母上……はい、わかりました」
「ユウマ坊ちゃま……良かった、元気そうで」
「ますます男ぶりが際立ってきましたな」
視線を向けると、メイド長クリスと執事長セバスがいた。
祖父母がいない俺たちにとっては、祖父さん祖母さんのような存在だ。
二人は夫婦だが子供はいないので、俺たちは可愛がってもらった。
「二人も元気そうで良かった。前回は会えなかったしね」
「ランド様にも困ったものです……亡き先代が聞いたら何というか……」
「坊ちゃまを追放するだなんて……」
「二人共、気に病むことはないよ。俺は楽しくやっているからさ。その代わり、母上とエリカのことよろしくね……ついでに親父と兄貴も」
「ええ、お任せください。そして、いつでも帰ってきてくださいませ。ご連絡頂ければ、タイミングをみてお呼びいたしますので」
「坊ちゃま、これを食べてちょうだい。もちろん、シグルド坊ちゃんと一緒に」
「おっ! クリスの手作り弁当か! ありがとう! 叔父上も喜ぶよ!」
料理長でもあるので、その味は絶品だ。
俺と叔父上の好物が入っているだろうし。
「あのねっ! お兄ちゃん!」
「ん?どうした?」
「お話を聞いて欲しいのっ!」
「ああ、わかった。では、そこのベンチで座るか」
「うんっ!」
その後はエリカの話を聞き、癒しの時間を過ごす。
……エリカのためにも、俺だけの力をつけていかなくてはな。
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