第4話「最強の兄弟龍」

いよいよ最終話、双截拳のさらなる秘密に迫ります。

タイトルの『ダブルドラゴン』とは勿論ビリーとジミーの双子のリー兄弟の事です。

龍虎相打つ極限流空手のリョウとロバートとは異なり、この双截拳の二匹の龍は全く同じ技を同じ身体能力で扱います。三人目のソニーはどこ?とか言い始めてはいけません。

鏡像の様に闘うリー兄弟はストリートギャング、ブラックウォリアーズの面々を文字通り殲滅させて、首領ウィリーの待ち構えるアジトにたどり着きました。

ウィリーは最後に残った腹心と共に襲い掛かってきますが、この広間には人質にされたマリアンの姿もあります。

しかしこのマリアンの格好がひどい。両腕を胴体に付けた形で縛り上げたうえに結構な高さで宙吊りです。

試された方はご存じだと思いますが、この姿勢は自分の体重がすべて胴体にかかってきますので大変苦しい。腹筋を常に意識していなければ浅い呼吸すら出来ず、目の前が酸欠と疲労でたちまち昏くなっていきます。

若い女の子……じゃなくとも人間に対して行って良い扱いではありません。

人質のジェシカを膝の上に乗せてあげるファイナルファイトのベルガーが紳士に思えてくるほど、ウィリーの残虐さと双截拳師範代マリアンのフィジカルの強さが強調される光景です。

さらには最終血戦の場で腹心すら巻き添えにして機関銃を乱射するウィリー。しかし彼と近代銃器でさえも双截拳の前には敵ではありませんでした。


動いているものが双截拳の修得者しかいなくなった広間の中、無事マリアンを救出……と思いきや、ビリーとジミーは吊るされたマリアンの前ですっと距離を取ります。

何が始まるのか……「ドスッ!バキッ!」

ハイキック、アッパーカット、肘打ち、ソバット。今までブラックウォリアーズのギャングたちに叩き込んできた双截拳の技を自分の片割れである兄弟に全力で浴びせあう二人。

あつかう技は同門ゆえ同じ、身体能力も遜色ない双子、勝敗を決めるものはなんなのでしょうか。

やがて立っているのが一人になると、生き残った龍がマリアンを開放してラブシーンと共にエンディングとなります。


「結局兄弟で女を取り合っての痴話喧嘩かよ!」

「先にマリアンを降ろしてからやれよ、俺がマリアンならキスどころかチョーパン入れるぞ!」


いえいえ、待って下さい。あなた方は双截拳の強さをまだご存じない。

吊るされたままで放置されていたマリアンが怒り出さなかったり、兄弟の負けた方を一切顧みず勝った方とラブシーンを始めるのは、この決闘が兄弟にとっていかに大切なものなのか彼女が深く理解していたからなのです。

ただこれはこれで男女の情愛と言うより【双截拳】の師範代と言う立場を重んじているようで、ビリーと恋仲であったと言うマリアンの内心を覗いてみたくなりますが。


最強を目指すフィクションが「父殺し」「兄弟殺し」に陥っていくのは枚挙にいとまがありません。しかしダブルドラゴンシリーズはこの後も続きます。

乱戦の中で兄弟背中あわせ(バックトゥバックと言う奴です)になって、周囲の敵を一掃する【合体旋風脚】。ダッシュしてきた兄弟をわが身を壁にして支え、変則の三角蹴りを行う【壁無し三角蹴り】

こうした合体奥義はこの後に編み出されたものなのです。遺恨が残るどころかリー兄弟がお互いに寄せる信頼は決闘の末さらに高いレベルになっています。


血縁の兄弟であり、恋敵であり、背中を任せられる相棒、好敵手。

こうした二人が最強の双截拳をふるうのですから、これに及ぶものはありません。


今では都市伝説と呼ばれるような場末のゲームセンター。

もみ消されたタバコと50円玉。カップヌードルの自販機にちらつく蛍光灯。

カウンターの前に貼り出されたハイスコアボード。

私を叩きのめしてマリアンのキスを勝ち取ったジミーが今でもそこにいるようです。





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最強の格闘技とは【双截拳】である! グリップダイス @GripDice

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