第35話:覚悟:逃げ隠れする気はさらさらないよ

翌日、全校集会が開かれたが、

説教とも被害者へのなぐさめともつかない、

チンタラ間の抜けたまとを得ない校長の長話が、

オイオイの散歩のようにタラタラ続いただけだった。

要するに、4日後に迫った文化祭を前に、事を荒立てたくないため、犯人探しはしないということだ。

従って、教室へ戻っても、通常の授業が行なわれた。

しかし、上の波は押さえたとしても、下はグツグツ煮えたぎっている。

西野の、野良犬のような犯人探しが始まっていた。

あいつがクサい、こいつが怪しいと、

ぶっ込みの工具箱から小さなネジ一つを探すかのように、

校内をひっちゃかめっちゃか鷲掴わしづかみでき乱している。

みんな、流れだまに当たらないようにビクビク必死だ。

しかし、西野よ。

それだけ「あいつもこいつも」って疑ってるってことは、

それだけテメエが人にうらまれるようなことをしてきたってことを、

自分で認めているような裏返しなんだぞ。

早く気付けよ。

れてくるヒソヒソ話では、どうやら私も疑われているらしい。

当然だろうな。

この大騒ぎ以前、直近でイジメにっていたのは私だ。

私が疑われても不思議じゃない。

しかし、私は、以前と同様、一人、イジメられているフリをして、シカトして黙って身をちぢめている。

もはやこの台風の中、イジメる・イジメられるという状態でもないのだが。

しかし、とにかく私は沈黙を貫いた。

西野たちが大きく騒ぐほど、私は、過去に泣かされた人たちの姿が目に浮かぶ。

礼なんて要らねえよ。

私は、自分のためにやったんだ。

バレたら、裁きを受ける覚悟はできている。

私の頭に「くもり」と「ぶれ」は無い。

静かで澄みきっている。

ただ文化祭が来るのを待つだけなんだ。

文化祭が終わるまでは黙っている。

口は割らない。

水谷の舞台は成功させる。

そして、ハンパな私の部活動も最後までやり遂げてみせるんだ。

今日から稽古けいこが再開する。

八坂が、どう動くか?。

今は、そのことに頭を集中させた。

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