第31話 惨劇

 それはショッピングモールを歩いていた時だった。

 明らかにそわそわしている女性がそこに居た。


「なんか嫌な予感……」


「あのぉ〜、誰かこの子を見かけませんでしたか?」

 誰かを探している様子だった。

 私はその場をやり過ごそうと、目を合わさずに進んだのだが……。

「すいません。ちょっとよろしいですか?」


『よろしくないです……』


「はい、何でしょうか……」

 捕まってしまった……。

「この辺でこの子を見ませんでしたか?」

 パネルみたいな物に小さな女の子の写真が載せてあった。

「お子さんですか?」

「そうなんです? いつから探しているんですか?」

「もう、三日になります……」


『三日かぁ〜、きついねぇ〜!』


「ここで探しているって事はここで居なくなったのですか?」

「はい、そうなんです」

 今にも泣き出しそうなお母さんが、絞り出しながら話してくれた。

「警察には?」

「もちろん、届けています」

「そうですか……。わかりました」



 サーチにて三日前まで遡り、足跡を探す。

「お母さん、三日前もその靴でここを歩きましたか?」

「はい、歩きました」

「少しだけその靴を貸してもらえませんか?」

「え!! あっ、はい」

 渡された靴の裏を確認、その足跡の一緒の物をサーチにて確認すると、確かに三日前にも来ている様子だった。

 そして、シャドーにて幻影を作る。

 その光景を見たお母さんは凄く驚いていたが、気にしない事にした。

 その、幻影を逆再生の様に動かして行く。

 しばらくはこの辺をキョロキョロしていた。

『おそらく娘さんを探しているのだろう』

 次にトイレに行っていたみたいだ。

 出てきた、幻影はもうキョロキョロはせず、隣を見ながら誰かと話している様子だった。


『よし、捉えた』


 再度サーチにて、お母さんの幻影の側にいる子供の足跡を探ると、明らかに小さくお母さんの足跡と並んで歩く足跡を確認した。

『これかな!』

 シャドーを使い、その子の幻影を作り上げると。

「うそ!」

 お母さんは口に手を当て、目から涙を流していた。


 私は女の子の幻影を動かし始める。

 トイレの前で待っている様子だったが、その直後誰かと話している仕草をしていて、次第に抵抗し始めたのだ。

 そして、幻影はそこで終わっていた……。


「え! あの! どういう事でしょう?」

「おそらく、足跡が無くなったのでしょう。連れ去られた可能性があります!」

「そ、そんな!!!」

 床に座り込むお母さん!


『これは一刻も早く見つけないと、マズイわね!』


 次に女の子と口論をしていたであろう人の足跡を探すと、一人、いや二人か……。

 その足跡に幻影をつけると、男二人の幻影が現れる。

 そして、何かを二人で運ぶ様な動作で走って行く所だった。

「行きましょう!!」

「でも………」

「ここに残りますか?」

「………いえ、行きますか!!」


 立ち上がったお母さんと一緒に幻影を追う。

『かなりの人に見られていると思うのに大胆な奴らだな! そうだ、監視カメラ!』

 一旦立ち止まって周りを見渡すと、監視カメラを見つける。

 それに向かって、スキャンという魔法と、レコードという魔法を発動する。

 なんかイメージしたらそんな名前が出てきた。

 すると、頭の中に映像が流れてくる。

 

『なるほど、二人の男が何か大きめの袋の様な物を前後で抱えて持ってるな! こいつらか!』


 再び幻影を追う事にし、到着したのは駐車場だった。


『くっ! 車に乗り換えたのか!』


 幻影は車らしき物の後ろ側に入れる動作をした。

『車のトランクに入れたのか!』


「お母さん、奴らはここから車にて逃走したみたいです。ここからはかなり危険だと思いますが、どうしますか? あと、最悪のことも覚悟が必要かと……」

「ど、どうして、私の、私の娘なの……」


 しばらく泣いていたが、「行きます! 行かさせて下さい!」と話した。



『しかし、車かぁ〜! 仕方ない!』


 車のタイヤ痕に幻影を変え、追跡をするのだがこのままでは追いつかないので。


『ランちゃん! ポロ手伝ってくれる!』


『承知!』

『了解だ!』


 まずわ、ランちゃんに少し大きくなって具現化してもらう、私達二人が乗れるくらいにね。

 そして、ポロの能力の擬態を使い、ドラゴンだとわからない様にする。


「乗って下さい!」

 お母さんを見ると案の定かなり驚いていた。

「お母さん! 今は驚いている場合ではありませんよ!」

「わ、わかりました!! 女は度胸ですね!」


『少し、違うような……』


 二人がランちゃんの背中に乗ったのを確認し、車の幻影を追跡する事にしたのだ。

 約30分程走った所である建物に入って行った。


 そこは、○○ホテルだった……!!


『鬼畜どもめ!!』

 お母さんはあまりの衝撃に、言葉も出ない様だった。

 私はサーチにて確認すると、車から出た男二人は女の子をホテルの中へ連れ込み………。

 そして、1時間後再度車に乗せホテルを後にしたのだ。


『許さない! 絶対に許さない!!』


「お母さん!」

「はひ……」

 もう気力がないかの様に落ち込んでいた。

「絶対に助けますから! どんな手段を取ろうとも、絶対に!!」


 お母さんにヒールをかけ精神的に少し落ち着いてもらい、さらに追跡を開始した。

 そして、さらに1時間後着いた先は山の奥深くだった。


 まぁ案の定、男達は女の子を捨てた……。


 女の子の位置はわかっていた。

 また三日前から動いていない事もわかった……。


「お母さん……。」


 どれほどの涙を流したのだろう、山に入る頃からずっと泣きっぱなしだ。

 

「会いたいです、あの子に! 会わせて下さい!!」


 お母さんと一緒に、娘さんが居るであろう場所に行くと。

 そこには、無残な姿の女の子が横たわっていた。

 服ははだけていて、腕や足、顔にまで傷が付いていた。

 かなり乱暴にされたのだらう、下着を付けていなかったのだ。


 娘を抱き号泣するお母さん!


「お母さん……」

「……ありがとうございます。探して頂いて、こんな寒い場所で長い間居たと思うと、心が張り裂けそうで!」

「お母さん、今から見る事は決して他の人には言わないで下さいね……」


「え!?」


 私は女の子にヒールをかけ、全ての傷を治療する。

 娘の傷が癒えていくのを見て再度泣いていた。


「お母さん、未だですよ!」


 驚いていたけど、私は集中する為その言葉を飲み込む。


 そして……。


「レイズ」


 女の子の頭の上に一つの光が現れ、そして彼女のひたいの中へ入り消えていった。

 すると、女の子が大きく呼吸をしたのだ。


「良かった、成功しました!」


 お母さんは、「何! どういう事ですか!?」と混乱していたが、娘が呼吸をしだした事で少なからず理解したのだと思う。


「お母さん! お子さんはもう大丈夫です。ですが未だ体力は戻っていません。ですので、早く帰って休ませてあげて下さい。私は未だする事がありますので……」


 もしかしたらまた連絡するかもしれませんので、連絡先を教えて下さいませんか?


「わかりました……」


「では、帰りましょうか」

 私はニコッと微笑み、ゲートにてショッピングモールまで帰ってきた。

 

「ここからは帰れますね?」

「はい、はい……。ありがとうございます、ありがとうございます!!」

「もし、記憶に関して変な事がありましたら連絡を下さい」

「記憶に? わかり、ました」


 その後無事、家に帰っていった。


「さて、皆んな! 行くよ!!」


『許さん!!』ランちゃん

『消し炭にしてやる』ポロ


 再度ゲートにてあの山奥へ向かい、今度はあの車を追跡する事にした。

 ランちゃんの背中に乗り空から追跡を開始する。

 あいつらの車は既に特定済みだ。


 そして、山を降りさらに1時間後とある倉庫に到着した。


『ここか!』


 倉庫内を確認すると、いるわいるわ……。

 計20人程が中にいる様だった。


『何かの組織か? ポロ! 完全武装するよ! ランちゃん援護よろしく!』


『了解だ!』

『承知』




 倉庫の扉を開け内部へと入って行く。


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