第32話 怒ったぞ!

「それにしても、お前物好きだよな!」

「何がっすか!?」

「この前のあのチビだよ!」

「ああ〜! 良いじゃないっすか可愛かったし!」

「俺はもっとこう大人びた感じで、ボンってな!」

「そうっすか!? あのつるぺたが良いんじゃないっすか!」

「はあ〜、お前とは一生合わねぇ〜な!」



「何が、合わないって!!」



「誰だ!?」

「あんたらに名乗る程のもんでもないよ! ただ三日前、小さい女の子を痛めつけた事の報復に来ただけだからね」

「三日前だ!? あぁ〜、あのチビのことか!」

「認めるのね?」

「あぁ〜、そうだな……」


「……そうか、じゃあ心置きなくやれるね!」


「はあ? 何をうだうだ言ってるのか知らんが、ねぇ〜ちゃん! それより良い体してんな!! おい、やっちまうぞ!」

 奥からぞろぞろと男達が出てきた。

 予想通り20人だった。


「はぁ〜」


「何ため息なんかついちゃって……」

「いや、死にゆくお前達に少しばかりの哀悼の意味を込めてね……」

「なに!? やっちまえ!」

 一人の男の掛け声で一斉に押し寄せてくる男達。

 私は両手に拳銃(本物じゃないよ!)にゴム弾を、装填しておいた。


 もちろん。


「ふぎゃ!」「あぎゃ!」「おぎゃ!」

 次々と倒れて行く、まぁゴム弾だけど……。

 少し違うのは、麻痺が付与されたゴム弾だけどね!

 

「くそ! くそ! なめくさりおって! たかがチビ一匹だけだろうが! それなのに!」


「……それなのに……なんだ!?」


 一瞬にして沸騰してしまった頭を押さえる事が出来なかった。

 ゴム弾を、本物の拳銃へと変える。


「おい、お前! 調子に乗るなよ! さっき私が撃ったのはただのゴム弾だ! だがなこれは違う!」


《バン》上空へと威嚇射撃を行う。


「ふん、そんなのハッタリだ!」

「では試してみよう、な〜に当たっても死ぬ事はない! まぁ死んだとしても死なせてたまるか!」


 私は一発その男の肩へ放つ、もちろん悶絶する男。

「本当に撃ちやがった!」

 しかし、ヒールにてその傷を癒す。

 次は腕、足の4箇所に撃つ、そして再度癒す。

「どうだ!? 死なないだろう?」


「あ〜、ああ〜!! 鬼、鬼だ、悪魔だ……」


 その男だけではなく、周りの男ども全員が恐怖に縛られていた。

「悪かった、謝るから。許してくれ!」

「あの女の子もそう言ったんじゃないの!? その子にあんたらはどうしたわけ?」


 私は男に近寄り、額に拳銃を当てる。


 男はガクガクと震え助けを求め、そして失禁していた。


「さようなら!」ふふっと笑う。

 そして私は引き金を引いた!!


「ざ〜んねん! 死なせないよ。レイズ!」


 その瞬間男が蘇った。

「どうだい? 一度死んだ感想は?」

「ひぃー! 悪魔だ!!!」

 逃げようとする男達、だが。


「私からは逃げられないよ! 君達は全てマークさせてもらったから! 本当に死にたくなかったら大人しくしてね!」


 龍神ランドロスの能力の一つ、威嚇を使う。

 おそらく、私の背後には悍しいおぞましいドラゴンの幻影が見えている事だろう。


 それを見た男達20人全員が失神して動かなくなった。




 ………なんちゃって!!




「あ〜らら、見事に皆んな気絶してるね!」

 私は倉庫の入り口付近で椅子に座って様子を見ていた。

 

 私が、そんな悪魔の様な事が出来るはずがないでしょうに……。


 奴らと接敵する前に、【イリュージョン】という魔法をこの倉庫全体に発動しておいた。

 その為、奴らが見ていた物は全て幻覚だったのだ。

 

「おそらくもう少しで……」


 しばらくして警察車両の音が聞こえてきた。

 私は、倉庫内に奴らの犯行を認めた声を流しておいた。

 もちろん映像と一緒に。

 私の顔は写ってない事は確認済みだ。

 少し離れた場所へ移動し、様子を見ていると、きっちり20人が逮捕されるのを確認した。


「よし、これで任務完了っと!」


「帰ろうか」

『何か腑に落ちんな』ポロ

『確かにの』ランちゃん

「まぁ、そう言わないの……」


 私達はゲートにて家に帰ってきた。

「はぁ〜、疲れた……」


《ピロピロピロ》


「うん? 知らない番号だな……。はい、もしもし。」

「あ、あのぉ〜。今日私の娘を助けて下さった方の電話番号で間違っていませんでしょうか?」

「え〜と、ショッピングモールの?」

「はい、そうです」

「間違っていませんよ。どうですか? 落ち着かれましたか?」

「はい、だいぶ落ち着いて来ています。ありがとうございました。」

「気にしないで下さい」

「今、テレビを見ておられますか?」

「テレビ、ですか!? 今帰ってきたばかりですから今はかけてませんね、どうかされました?」

「今ニュースで、とある誘拐組織を逮捕したっていうニュースが流れてるんですよ!」


 それを聞き、テレビをつけると確かにニュースになっていた。

 なんでも、数年前から誘拐事件が頻繁に起きていて、組織的に行われている事は分かっていたのだが、どんな奴らがしていたのかはわからなかったとの事。

 それが今日、匿名の電話があり、倉庫20人の殺人犯がいるという110番通報があり、駆けつけた警察官は20名の男達が意識をなくして倒れている所を発見したとの事。

 そして、男達がしたであろう犯行の証拠が、音声と映像でプロジェクターを通して流されていたそうだ。

 調べた結果、誘拐組織のメンバーである事がわかったとの事。


『あいつらだね!』


「これって、私の娘と何か関係があるのでしょうか?」


「あ〜、お母さんと別れてからちょっと頭に来ちゃいまして、アジトまで行って潰しておきました」


「……娘の…」


 電話口でまた泣いていた。

「お母さん。おそらく、調べたら娘さんの件も出てくるでしょう。全ての捜査等が終わった後、もしこの記憶に縛られ生活に支障が出るのであれば、またその時は連絡下さい。もちろんお子さんも同様です、その時は私がこの事件の一連の記憶を消します」


「あなたは、いったい……」


「ただのOLですよ!」

「……わかりました。娘を助けて下さって本当にありがとうございました。落ち着きましたらまたお礼もさせて頂きたいので、ご連絡させて頂きます」

「わかりました」


『おそらく、次は向こうに戻ると思うけどね』


 その後、その日は何もなく過ぎて行った。

 

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