第30話 朝からBBQ

『今日は、何をしようかなっと』

 まどろみの中でそんな事を考えていた。

『家でも、探そうかね』

 光が入ってきた事で眩しさを感じ、薄らうっすらと目を開けた。

『ふぁ〜、眠たい〜!』


《ピッピピ、ピッピピ》


『………はあ〜!! またか!』

 この電子音は聞いた事がある。

 でも、あまりにも遠い記憶に感じたのは向こう異世界の生活が濃厚だった為だ。


 恐る恐る目を開けると、私の本来の家だった。


「ランちゃん、ポロいる?」

『主人〜、もう朝ですか〜』

『まだ、寝させろよマユミ!』


 今回も魔法は特に問題なく使える様だった。

 私の質問にランちゃん、ポロが答えてくれた。

 

「とりあえず、起きるか」


 日付を確認すると。

「はい、1日しか過ぎてないね。確かあの上司今日は仕事休みにするって言ってたから、今日は完全オフだな!!」

 朝の支度をして、ご飯を食べる事にしたのだが……。


「冷蔵庫に何もない……。あ! そうか!」


 異空間に全て入れた事を忘れてた。

「え〜と、何にしようかなっと……。あれ!? これって」

 取り出した品、それは。


「………何であるの?」


 そこにあった物は、昨日戦ったディノカイザーの爪だった。

「あれ? 全部渡したよね……。てか、その前に何で向こうの物がこっちにも出せるのよ!! もしかして向こうとこっちとで共有出来るのか!?」


 もしそうならすごく便利だと思い、何を入れていくか考えていた。


「ガルムさんは木材がいるって言ってたな……。木材ねぇ〜!」

 

 私はある事を思いついた。

 色々身支度を済ませた後、ある場所へとゲートにて移動した。


「無事この魔法も使えたね、では始めようか!」


 私が飛んできた場所、それは森!!

「ランちゃん! ポロいる?」

『居ますぞ!』

『もちろんいるぜ』

「こっちに出て来れる?」

 二匹がやってみるというので少し待っていると。

 小さいドラゴンと小さい蛇が出てきた。

「おお〜、こっちでは二人とも出れるんだね! 相変わらず小さいけど」

「小さいは余計だ」

 ポロが言ってくる。

「で、何をしたらよろしいので?」

「この木を伐採していこうと思ってね」


 目の前に広がるは大森林だった。


「良いのですか?」

 ランちゃんが心配の声を上げる。

「多分大丈夫! 少し試してみますか」


 私は植林のイメージを思い浮かべる。

 すると手のひらに魔力が溢れ出て来て、何も無い土の上に発動すると、見事に木が現れた。

 そして、物の数分でどんどん大きくなり10分ほどで他の木と変わらない木がそこに立っていた。


「ねぇ! 大丈夫でしょう!」


「主人、相変わらず規格外ですな!!」

「じゃあ二人ともどんどん切っていくよ! 大体、木100本位って言ってたからさ」


 その後からは流れ作業で仕事をしていった。

 私が木を選びつつ風魔法で切り倒していく。

 ランちゃんが、適当な大きさに細断していき、ポロがまとめて行く役目だ。

 ある程度溜まったらポロに頼んで異空間に入れるのを手伝ってもらった。

 ポロ力強いんだよね、あんなに小さいのにさすが蛇だね!

 体に巻きつけて、ヒョイって投げるんだよ!

 ランちゃんは爪が長くて持てないから、足で掴んで入れてたからあまり多くは出来なかった様だ。

 それでも、細断はやっぱりランちゃんが早かった!

 約1時間程でかなりの量の木が集まった。


「こりゃ100本どころじゃないね! よし、みんな終わりにしようか!!」


「もう宜しいので?」

「うん、これだけあれば十分でしょう。後は……」


 かなりスカスカになった森にちゃんと植林をしておいた。

 どこからどうみたって伐採したしたとは思えない程に。


「そういや、お腹減ったな……。まぁ朝ごはん食べずに来ちゃったしね」

「マユミ〜、直ぐそこに川があるぞ! 魚くらいならいるんじゃないか?」

「魚……」

「おお、良いね。なに? ランちゃん魚嫌い?」

「嫌いってわけではないのですが、あまり得意では無いですね」

「そっか〜、なら」


 私はサーチにて森の中を調べる。

 

「ランちゃん。鹿か猪どっちが良い?」

「あまり聞き慣れないやつですけど、どんな奴ですか?」

「そうだなぁ〜、そうそう」


 私は物凄く久しぶりに自分のスマホを取り出し、鹿と猪の映像を二人に見せる。


「「猪」」


 二人の意見がシンクロした!

「たまには良い事言うではないかポロよ」

「ふん、お前と意見が合うなんてな」


 そういう事です、猪狩りに行くことにしたのだが、行くといっても場所はわかるので、そこにランちゃんとポロが出向き仕留めて来てもらうだけなんだけどね。


『私は行かないわよ、こんな森の中なんて……』


 その間に私は、魚を数匹捕まえておいた。

「魔法って便利ね!」

 しばらくして二人が帰ってきた。


「おかえり………………!!!」


 そこには猪が三頭、鹿五頭、そして熊が二頭居た。


「………何これ? どういう事?」


「いやぁ〜、最初の一頭がすぐに狩れちゃってよ。そしたら、ランドロスが俺が狩りたかったんだ! と言い始めてよ、気づいたらこうなってた……」


「こうなってた……じゃないわよ、どうするのよこれ!?」

「食えば良いんじゃないの?」

「あのね、こんなの簡単に調理できるはずがないでしょうが!! とりあえず今はこんなに要らないから、猪一頭だけ残してここに入れて頂戴!!」


 そういうと、異空間を開け二人に言いよる。


「えぇ〜、食わねぇ〜のかよ!」


「食いません!!」

「ちぇっ!」

 ポロは拗ねていて、ランちゃんは怒られた事でシュンとなっていた。


『可愛い』


「よし、とりあえずBBQセットでも出しますか」

 創作魔法でBBQセットや他もろもろ出す。

 

「なんか、ド○え○んになった気分ね!」


 私が取ってきた魚を焼いている間に、猪の処理を……。

 もちろん、わからないのでネットで調べたよ。

 ただ、すごく気持ち悪かったので全てランちゃんとポロに頼んでおいた。

 雑ではあったけど、まぁ食べられる感じにはなったみたいだ。


 しばらくして何とか見る事が出来る肉の塊になっていたので、食べやすい大きさにカットし、BBQを開始した。

 猪肉は臭いという事なので、香草などで下味をしてから焼いて行く。

 野菜なんかも全て異空間に、入っていたので取り出して焼き野菜にする。

 まぁ、野菜は私しか食べないけどね。


 さすがに一頭は食べられないだろうと思っていたのだが……。


「これは美味いですな!」

「確かにこの肉は美味いな!」


 相当好評だったらしく、ほとんど二人で食べてしまった。

 私は魚が美味しすぎて、あんまりお肉は食べなかったけど、確かに美味しかった。


「朝から贅沢なご飯だったな」


 お腹も膨れたところでそろそろ帰ることにした。

「おーい、帰るよ〜! 他にも行きたい所があるからさ」

 もう少し遊びたかった様だけど、渋々と戻ってきて、無事ゲートにて自宅へと帰ってきた。


 その後、すぐに家を出て街へと向かった。


「お金はこの異空間に入れたらどうなるのかな……」

 試しに1,000円札を一枚入れておいた。

「さて、買い物でも行きますか!」

 食品の継ぎ足しはあまり必要ないけど、少しだけ。

 さすがに、あの二人は私の中に入ってもらっている。

 スーパーで少し買い足し、人気のない場所で異空間にしまっておいた。

 

 その後もいろいろ店を回った。

「久しぶりにのんびり出来て嬉しいわ」




 等と思っていた事が過去の出来事になるなんて……。


 

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