第24話 愛する物達

『あぁ〜、周りの人達からの視線が痛い……』

 私事、マユミは絶賛注目の的になっているのだ。

 なぜかというと、私の後ろに居る巨大な蛇が関係している。

『ねぇ〜、見られてるんだけど……』

『な〜に、見られる事には慣れてるから気にするな!』

『いや、ポロが良くても私は嫌なのよ!』

『まぁ、ランちゃんよりマシだけど……』

『ランちゃん? あぁランドロスの事が、くく! やつも変な名前を付けられたものだ!』


『めっちゃ嬉しそうな〝堕蛇神〟様だこと!』心の声


 尻尾がさっきからブンブン振り回されている。

『この辺はだいぶやられたね』

『流石にあれだけワイバーンやドラゴンが来たのでは無傷とはいかないだろうな』

『珍しくマトモな発言ね!!』

『はあ! 俺を何だと思っているんだ?』

『やんちゃな蛇神!?』

『あのな、これでも俺は一国の王だったんだぞ!』


『へぇ〜、意外』棒読み


『おい、何だその返事は!!』

『はいはい、また今度ね!』

『俺を馬鹿にするのか!?』

『そんな事してない……』


《ドン、ガシャーン》


「なに?」

『何かが崩れたのか?』

『行くよ、ポロ!』

『おい! まだ、話は終わってない!』


 向かった先には既に人だかりが出来ていた。

「どうされたんですか?」

「え? おおっ!! 蛇!!」

「あっ! 大丈夫です、この子はペットみたいなもんですから」

『ペット!? 俺がペットだと!!』

『うるさい、静かに!!』

『うぐ!』

 マユミの知らぬところで召喚獣への束縛の枷が発動したのか堕蛇神は固まってしまう。

『何だこれは……』

『ポロ、おそらくそれは主人殿が発動した召喚獣への枷だ! まぁ、俺には使われた事はないがな!!』

『てめぇ〜、ランドロス! どうにかしろ!!』

『無理だな、主人が解いてくれぬ限りな、それにおそらく主人殿も気づいておらぬだろう』

『なに? 無意識でこれを!?』

『その様だな、何と恐ろしい人だ我が主人殿は。力を失ったといえど、我らは〝神〟だそれをいとも簡単にねじ伏せるなど只者ではない!』

『おい、ランドロス! 感心してる場合か!』


『ポロ! ポロ!! 何してるの?』

『何じゃねぇ〜よ、早くこれを解いてくれよ!?』

『とくって何を、あんたが使ったこの枷だよ!』

『枷!? 何の事よ、それにあんたって何よ!?』

『いてててて!! 悪かった、ごめんなさい。もう言わないから、頼む! 本当に解いてくれ!!』

『なになに、何の事よ』

『主人殿、おそらくさっきポロを制止した際、何らかの枷が発動したのです』

『ランちゃん?』

『主人殿は無意識で行った可能性があります』

『え!? マジか!』

『頼む! 頼むから解いてくれ!』

『……んふ! じゃあポロ、私をご主人様と認めご主人様と呼んだら考えても良いわよ!』

『なっ!! なぜ今そんな事!!』 

『え〜、認めないの!? じゃあどんどん強くなるかもね!』

『いっ、ぎゃー!』


『主人、鬼ですね!!』


『そう? で、どうなの? ポロ?』

『わかった、わかったから!』

『じゃあ言うてみなさいよ! ご主人様って!』

『くっ!! ご……しゅ…………』

『え? 聞こえない!』

『あ〜もう! 助けて下さい、ご主人様!!』

『ふ、よろしく! でも、解除の仕方が……』

『なに!! 早く………あっ!!』

《パキン》と、音が鳴った気がしてポロを見ると。

『解けた! やっと、解けた〜!!』


『解くことを認めると解けるみたいね』


『ポロ、大丈夫!?』

『だ、大丈夫なわけあるか……この……』

『この!?』

 私はポロの前に仁王立ちで立ち。

『お望みとあらばもう一回しても良いんだよ!?』

『………はい、ごめんなさい。ご主人様』

『よし、それで良い。じゃあ行くよ?』

『行くってどこへ?』

『あの中よ』

 マユミは先程凄い音が鳴った半壊状態の家を指さした。

『なぜ?』

『あの中に人が居るのよ。さっきサーチで確認したら2人確認できたわ』

『いやいやいや、流石にあの中には行けないぜ!』

『何でよ!?』

『だって蛇だし!』

『蛇でも神でしょうが!?』

『神でも潰されればひとたまりもないわい!!』

『ええ〜、意気地無しねぇ〜!』

『……その言葉が何だか知らないけど何だろう凄く侮辱されてる様な……』

『気のせいよ!!』


『ほっほっほ、ポロよまだまだ若いのぉ〜』


『げ!! その声は!』

『うん? 誰!?』

『こうして話すのは2度目ですな主人殿! 鷲は〝亀甲神〟老いぼれた亀じゃよ』

『はぁ〜』

『主人殿、鷲をそこの、蛇と交換してくれぬか?』

じじい言い方には気をつけろよ!』

『ほっほっほ、蛇には変わりあるまい!!』

『ポロと変えたら良いんですね?』

『頼むのじゃ!』

『ちょっ! 勝手な……』

 ポロが言う前にポロを私の中へ戻し、新たに召喚する。

『どこだ……いた!』

 私を中心にあの黒い靄が現れそこから、一匹の亀が出てきた。

 周りの人達はいきなり蛇が消え今度は亀が出てきた事に驚いていた。


『お初にお目にかかります、改めて〝亀甲神〟と申しますじゃ』

『はぁ〜、あっ! マユミです、こんにちは』

『ほっほっほ、可愛らしい主人殿だ!』

『そんな事……』

『さて、主人殿よ。入る前に私の力をお使い下さい!』

『あなたの力?』

『鷲の力は全ての力を無効にする力です、もし瓦礫が崩れても問題ありませんわい』

『わかりました、では!』

 私は、私自身に力を発動した。

『では行きましょう!』

 そういうと半壊状態の家屋へと向かった。

 周りからは不安な表情や、声が上がっていた。


「確かこっちに……」

 サーチにて確認すると1人目はすぐそこに居るみたいだ。

生死を分けた色は青、生きている。

「誰か〜、誰かいませんか!?」

「たすげて〜!!」

「いた!!」


 瓦礫の下になっているみたいだ。しかし、流石にこれをどかすには私の力では無理だ。

『主人殿申し訳ない、守る事は出来ても力は出せないのじゃ』

『では、この方は後にしましょう。その間守ってもらえますか?』

『それはお安い御用じゃ』

『では、私はもう1人の方を!』

『お気をつけて!』


「もう1人もこの場所何だけど居ない……って事は、上か!」

 2階に通じた階段を見つけ少しづつ上がっていく。

すると、真ん中あたりに人が倒れているのを見つける。

「大丈夫ですか! わかりますか?」

「うう〜!」

「大丈夫だね、これなら。ヒール!」

 すると傷が癒、表情も苦痛の表情から変わったのだ。

 だが、体力が無い為か起きれない様だ。

 仕方ない。

「このまま一旦外へ、ワープ!」

 地上がどこかわからなかった為、上空へワープを行うと地上から約10メートルの所に出た!

「うわ! 高!」

 着地地点が見えた為、再度ワープにて地上へ降り立った。

急に現れた私に周囲からは驚きの声が上がるが人が助けられた事に対して歓声が上がった。

「この人を頼みます。傷などは治ってますので後は安静にしておいて下さい。私はもう一人のところ……」

 その時だった。半壊状態だった家が轟音と共に全て崩れ去ったのだ。


「なんて事……」


『主人、主人!! 落ち着いて下さい』

『ランちゃん!?』

『大丈夫です、亀甲神は守りの神です。これくらいでやられる様な爺さんじゃありません』

『わかった!』


【サーチ】確かに、まだ生存を表す青だ。


「皆さん、助けて下さい。まだ一人中に生きている人がいます。瓦礫を退けるのを、手伝って下さい」

 最初は皆、そんな危ない事……など、手伝う事に躊躇ちゅうちょしている人が多かったが、次第に。


「おし、やるか!」「やろーぜ」


 人が動き始めたのだ。

 私自身は亀甲神の力を解く事は出来ないけど、出来る事からやっていく事にした。

「では、この辺りに居ると思いますので始めていきましょう!」

 男達が中心になり瓦礫をどかしていく、徐々に無くなってきた時。

『主人殿、マズイですな!』

『どうしたの?』

『この者の生命力が、尽きかけています』

『何ですって……』

「皆さん急ぎましょう!」

「「おう!」」

『後もう少し……』

 そして、全てを取り除いた先に女性が居た。

 しかし、至る所からの出血、右足に重い物が乗っていたのだろう色が変色している。

そして、左足は……

 助けてくれた人達も、彼女を見て愕然がくぜんとしている。

 皆が皆、助からないと思っていた。

 しかしサーチでは、まだ青色を示している。


『まだ、助かる!』


「皆さん、ありがとう! 皆さんのおかげで一人、助ける事が出来ました!」


 周りからは何言っているんだ、と。

 助かるわけがないだろう、という声が上がる。


『ランちゃん、ポロ、亀甲神様! 何かあったら頼むわね』


『当然じゃ』ランドロス

『ふん、当たり前のことを言うな』ポロ

『ご存分に』亀甲神


 私は今ある最大の力を両手に込める。

 私を中心に巨大かつ眩いまばゆいサークルそして光が溢れ出る。

 それは本当に暖かい光でとても綺麗だった。

 それを彼女に向けて降り注いだ。


【メガヒール】


 眩い光は深緑の緑へと変わり彼女を包み込んだのだ。

 すると、出血が止まり壊死しかけていた右足も綺麗な肌へと変わっていく。

 そして、そこには無かった左足が見事に再生したのだ。

 相変わらず、体力までは戻らなかった為スヤスヤと寝ているだけで、特に問題なく出来ただろう。


 しかし、少し魔力を使いすぎたせいか、よろけてしまう。


『『『(主人)(おい)(主人殿)』』』


 三神三様の反応を示した。

『大丈夫、大丈夫よ!』


 ワープにて安全な場所へ彼女を移動させる。

 周りからは心配そうな声が上がるが、「もう大丈夫です」と伝えると、「奇跡だ」「女神様だ」等、いろいろ言われた。

 ちなみに今の私はそれどころではなかった。

 亀甲神様の力は相当な魔力が必要らしい!

 それに加えて、ワープやヒール、メガヒールまで使ったのだ。

 そりゃ魔力も無くなるわね!!

 せっかくの皆んなからの歓声にも適当にしか反応出来なかった。

 その内に、誰かが救護隊に連絡を入れてくれていた様で、駆けつけてくれた。


「貴方は! この前の!」

「あ! はい、この前の……です」


 誰かわからないけど……。

「この二人を頼めますか?」

「それは構いませんが、貴方は?」

「私はその辺で休んでいますから大丈夫です。ただ魔力がごっそり無くなっただけですから!」

「それは大変だ! おいMPポーションを!」

「はっ!」

「MPポーション?」

「魔力を回復する薬です」

「そんなのがあるんだ!!」

「え? 知らなかったのですか?」

「お恥ずかしながら……」

 救護隊の方からMPポーションをもらい飲み干すと、力が湧いてきた。

「おお、これは凄い! ありがとうございました」

「いえいえ、貴方様にはたくさん助けてもらってますから」

「あっははは」

「では、これにて失礼します」

 そういうと、隊の人達は2人を連れて救護施設へと向かった。


「ふぅ〜、何とかなったね!」


『何とかなったじゃねぇ〜よ』

『ポロ?』

『魔力が尽きかけて死にかけてんじゃねぇ〜か!』

『あはは〜、ごめんね』

『そんなんで済むかよ!』

『何でそんなに怒るのよ』

『知るか!』

『主人殿、ポロは昔全ての配下を一度に亡くしてあるのじゃ!』

『え!?』

『いらんことを言うな、亀甲神!』

『全てって!』

『文字通りでございます主人!』

『ランちゃん?』

『文字通り、全てです。その為、それ以降は奴一人なのです』

『ふん、いらん事を!』


『……ポロ! 出て来なさい!』


『あ!? おおー!!』

 具現化したポロを私は思いっきり抱きしめた。

「何を!」

「静かにしなさい! 辛かったね、寂しかったね! これからは私が居るからね」

「……ふん、人間の一生など短い物ではないか!」

「それでもだよ! 私はその間、貴方をランドロスを、亀甲神様も、そしてまだ見ぬ眷属達も皆んな皆んな愛し続けるよ! 私の大切な家族だから!!」

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