第25話 英雄? 女神様?

 ポロを抱きしめたのは数秒間だった。

 その数秒間が本当に永遠の様に感じたのは、彼らと何か見えない物で繋がっているのかと思わずにはいられなかったのだ。


『マユミ!』


『……なに!?』

『今回の事で無茶をする事が分かったからな! 俺も見張らさせてもらうぞ!』

『素直じゃ無いのぉ〜』

『うるさいぞ、じじい


 

「あの〜」


 ふと声をかけられた為、そちらの方を振り向くと。

「!!」

 目の前には多くの人達がこちらを向いていた。

「……え〜と、これはどういう?」

「あの時はありがとうございました」

「あの時は?」

「ワイバーンの火炎弾から街を守って頂いた時です。貴方様ですよね?」

「あ〜、はい。私です、ですがこんなに被害が出てしまいました」

「いいえ、そんな事はありません。貴方様がおられなかったらこの街はもう無かったでしょう」

 周りの人達も、うんうん、と頷いている。


「そうだぞ、お前達マユミは強い! あの様なドラゴンなんかに負けわせぬわ!」


『なっ! ポロ! 勝手に話すんじゃ無い』

「蛇が話した……」

『ほら、やっぱり蛇がしゃべったら………』


「「「おおー、蛇神様が〜」」」


「へぇ!? なんで?」

「女神様の従者にして一番の矛と言われている蛇神様だわ!」


『……何それ? ポロが従者? 一番の矛? それに女神様って何よ!! ポロ怒ってるだろうな……』


 恐る恐るポロを見ると。


『あ! めっちゃ嬉しそう』


 顔は変わらないけど(蛇だしね)尻尾がめっちゃブンブン振られていた。


『聞いたかマユミ、俺が一番の矛だってよ!!』

『あっ! そこなんだ!』


 その後、浮かれているポロを引きずりながらその場を後にした。

 その際、凄く惜しまれたり感謝されたけど、一番恥ずかしかったのはポロが私の名前を大声で叫んでいた事だ。


『ホントにやめて!!』


 その後、ギルドに向かうまで何度も街の人達に声をかけられた。

 その度にポロはご満悦だ。


『恥ずかしい』


 ギルドに入っても同じだった。

 まぁこんな大きな蛇がお供じゃ仕方がないけどね。

「おお! 来たな!」

「こんにちは、ガルムさん」

「派手に言われてるな!」

「あはははは〜、やめて下さいよ!」

「マユミ、今回の件でギルドランクをBまで引き上げる。そして、試験を受けるとAへと変更する予定だ」

「いきなり、そんなに飛んで良いんですか?」

『確かまだ何もしてないからEのままだと思うけど……』

「何を言ってる、あんな事をしたお前がEなわけないだろう。それに俺はSランクでも良いと思ったんだが、上がそれは出来ないと言いやがった! その為、Bにして試験を受けたら即Aにするつもりだ」


「試験、ですか?」

「何、たいしたものじゃない! ドラゴンを相手にしたお前さんにはな」

「へぇ〜」

「ギルドでいうAランクとSランクの冒険者は、この国の騎士に匹敵する位になる。そこで、SランクAランクになる為には王国からの試験に挑んだもらわないとダメなんだ! そこでだ、お前さんには行って欲しい場所があるんだ」


 ガルムさんに言われて来た場所、それは。


「こんにちは、マユミ殿」

「エリオノールさん!」


 宮廷魔術師団の隊舎だった。


「ガルムから試験のことは聞いているよ」

「エリオノールさんはガルムさんとは知り合いなんですか?」

「まぁ、なんだ昔のね」

『昔っていうけど、若いよねエリオノールさん!!』

「まぁ良いじゃないか、そんな事。それでだ今日なんだが」

『完全に目が泳いでる……。なんか可愛い』

「今日は私達宮廷魔術師団と王国騎士団で、森へ偵察に行く事になっているんだ」

「偵察、ですか」

「この前のドラゴン襲来の際、家屋が燃えたりしてその補修の為、材木を準備しようと森へ調査に行った者達が居るんだが、その者達が言ってたんだ。どうも魔物の数が多いらしくてね、調査が出来ず戻って来たらしい。その件がガルムの所へ来て、こっちに回って来たって感じだな。まぁそんな折マユミさんがAランクになるのに試験が必要だって事がわかりこっちとしてはこれ程強い味方はいないしマユミさんもAランクになれるしって事で、一石二鳥ってわけです。」

「あぁ〜、なるほど。納得しました」


 そんなこんなで、試験という名の森への調査、討伐隊が組まれたのである。


「あのぉ〜、この列に私達居て良いんですか?」

「もちろんですよ、マユミさんは今やこの国では英雄やら、女神様やらと言われているお方ですからね」

『……女神様は聞いた事があったけど、英雄は初めて聞いたな……。それにしたってこれは……』

 今私は隊列の真ん中に居て、側には宮廷魔術師団総師長のエリオノールさんに副師長さんが居て、指導隊長のロニオさんまでいる。

 それに、騎士団の団長さん副団長さんなど錚々たるそうそうたる顔ぶれが揃っていた。

『知らない人も居るけどね、そういう人ほどこちらをチラチラと見てくるんだよね』


 そして……


「マユミ! こりゃ圧巻だな、昔を思い出すわ! ガハハハ」


 ポロはポロでこの隊列が気に入ったらしい、気に入った事は別に良いのだけど……。

「お前達、しっかり働けよ!!」

 等言いながら、騎士の方や魔術師隊の顔を見たりしている。

 その度に「ひっ!」「……はい」などかなりストレスがかかっている様だ。

「こら、やめなさい! あまりしつこくするなら戻しますよ」

「何もしてないぞ! この者達と話しているだけだ」

「その、巨体の蛇が急に迫って来たら怖いに決まってるでしょうが!」

「ふん、軟弱な! 大丈夫だろ〜?」

 舌をチョロチョロしながら騎士さん達に近づき話している。


「……はひ! だいびょうぶであります!」


『かみかみだね!』


「ポルストロアンド!!!」


 ビクッとなるポロ。

「な、なんだよ?」 

「みんなの前でで話しても良いんだよ?」

「それは……」

「それは?」

「ごめんなさい」

 その後ポロは大人しくなった。

 その事がまた私は凄い人だという事に繋がってしまった。


「あの大蛇を一言で大人しくおとなしくさせるなんて、やっぱり英雄だ」

「何を言ってる、女神様だろうが!」


 そんな声が聞こえてくる。


『やめて! 恥ずかしいからやめて!』


 ポロポロでシュンといじけた様に大人しくなってしまった。

 そんなこんなで、その後の進行はスムーズに進んだ。


「では、これから森への偵察に入る。騎士団と協力し遂行して欲しい。また事前に分けた班で行動する様に、以上だ。進め!!」


『さすが総師長様だなぁ〜、凄い迫力!』

「ではマユミ殿、私達も行きましょうか」

「わかりました」

 私は総師長さん達と一緒に森へと入った。



『マユミ! 気をつけろよ!』



『どうしたの?』

『何かいるな! この森は!』

『どういう事?』

『俺はこういう森とか湿地帯の王だったからわかるんだが、何か異質な気配がするんだ』



『わかった、気をつけるよ』

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