第16話 ワイバーン防衛戦

【サーチ】


 私は草原に対して【サーチ】魔法をかける。

 少し前ワイバーンが居た場所だ。

「あの3人はっと……。居た! うん〜、動いてない! でもこれじゃ生死がわからないなぁ。じゃあこれならどうだっと……」

 私は、生と死を青と赤で示せないかと考えイメージする、すると3人の色が変化した。

『あちゃー、1人はダメか!』

 青色が2人、そして1人は赤色だった。

『とりあえず、行ってみますか』


 この草原は行った事がある、ならばと。


【ゲート】


 ほぼほぼぶっつけ本番だったが上手くいった。

 私は、こっちの世界に飛ばされた時初めて来たこの場所に飛んでいた。


【サーチ】


『どの辺かな? そんなに遠くないね』

 私は、【ワープ】を使用しながら徐々にに近づいていく。

『あれか…』

 さらに近づくと、3人共倒れており予想通り1人は亡くなっていた。

『これは……うっ!』

 他2人もかなりの重症だが辛うじて息はあるようだ。

『これなら』

 私は2人に聖属性魔法の【ヒール】をかけた。

 流石に傷は癒せても、体力までは戻せなかったようで、まだ眠ったままだ。

 そして、問題はもう1人だ。

『どうしようかな! 流石にここに放置するのも気が引けるし。まぁ、誰も見てないよね!?』

 周りを見回すが、まぁ人はいなかった。

『それじゃ!』


【レイズ】


 彼を中心に光の玉が一個現れ、徐々に体へと入っていく、そして「ふうっ!」と一回大きく息を吸う男性。

『…よし、これで良いかな』

 サーチで確認すると、それまで赤だったのが青へと変化していた。


『主人、彼らにそこまでする意味はあるのですか?』

『ないよ!』

『なら、どうしてですか?』

『それは単純に私の気分の問題かな、使える魔法があって、助かる事がわかっているのに、放置するのは私は出来ないかな』

『寛大なお考えでございます、主人』

『でも、流石にどっかに連れていくまではめんどくさいのでここで放置かな、一応幻影の魔法で襲われないようにしておくけど』

『それで宜しいでしょうな』


 木の根元まで3人を運び、幻影の魔法を掛けておいた。

 これで、目が覚めるまでは問題ないだろう。

『よし、次行きますか!』


 私はサーチにてワイバーンの位置を探り、ゲートにて移動をした。



 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 国王軍


 王宮に向かってきたワイバーンは、王宮上空にて一度咆哮し攻撃態勢に入った。

 その甲高い咆哮に国王軍は耳を塞いでしまう。

「陣形を崩すなくずすな

 宮廷魔術師団総師長 エリオノール・カレントは皆を鼓舞こぶする。


「相手はワイバーン1体だ、私が奴の翼を切り取る。前衛魔術師隊10名は奴の気を引き付ける為魔法にて応戦しろ。残り後衛10名は前衛を援護しろ。騎士隊30名は後方にて待機、奴が落ちた所を総攻撃しろ」


「「「はっ!」」」


 ワイバーンが攻撃態勢に入り、火炎弾を放つ。

 それに対して、宮廷魔術師団は水魔法や氷魔法にて応戦する。

 その隙を狙いエリオノールが風属性魔法にて翼を切ろうと試みるが、上手くいかない。

「火炎弾がまた来るぞ」

 今度は数発の火炎弾が飛んでくる。

 最初こそ防げていたが、その内の一発が王宮内に着弾する。

「ちっ! 数名の魔術師で消火に当たれ、騎士隊の数名で怪我人の有無を確認しろ」


 その時だった、ここぞと感じたのかワイバーンが軍の中心に向かって突っ込んできたのだ。

「皆、これは好機だ奴の動きを受け流し、地面に叩き落とすぞ!」

「「おう!」」

 騎士隊が前衛へと変わり盾を構える。

 そして突っ込んで来た所で散開、ワイバーンは地面へと突っ込んでいた。

 その際、騎士隊数名が数メートル吹っ飛んでしまった。

 魔術師隊の氷魔法によりワイバーンは身動きがとれない状態になり、抜け出そうと暴れるワイバーンにエリオノールは風属性魔法にてその翼を切り落とした。

「今だ、倒しきるのだ」

 彼女の号令と共に騎士隊が、剣を振るい敢えなく絶命した。

「よし、まず一体だ」


 こうして王国軍の戦いは終わった。

 最小限の被害だとはいえ、騎士隊数名が怪我をした。

 幸いな事に壊れた王宮に人は居らず、怪我人は無かった。


「動ける者は街へ向かうぞ!」

「「おう!」」


 《ドーン!!》街の方から物凄い音が聞こえ目をやると、遠くの方でワイバーンが火炎弾を数発放ち、街に着弾していたのだ。周りから炎や煙が上がっていた。


「あれは、ギルドの方からだ! 冒険者は何をしているのだ!」



 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 ギルド


「来たぞ〜!」

 飛んできたワイバーンはいきなり火炎弾を放ってきた。

 ギルド側に魔法が使える者が居なかった為、その全てが着弾する。

 瞬く間に火の海へと変わる。

「くそ、消火作業を行いながら、奴の動きを止めるぞ」

 しかし冒険者達は弓等の飛び道具しか抵抗する術はなく、また上空を、飛んでいる為当たらない。

「くそ、降りてこいこのヤロォー」

「ダメだ、手も足もでねぇー。王国軍は何をしてやがるんだ!」


 その時、ワイバーンが数発の火炎弾を再度放ってきた。



 〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


【ゲート】で移動してきた場所はソフィーの家の前だった。

 サーチにてワイバーンの位置を探ると、もうすぐそばまでやってきていた。

『来てるね、どんな攻撃をしてくるかわからないからなぁ〜、とりあえず』

 私はこの周辺に【プロテクト】という魔法を施した。

 これは要は防御壁だ。

『よし、これで心置きなく戦えるな』

『ランちゃんもし危なくなったら宜しく』

『承知』

 そして、ワイバーンが現れた。

『う〜ん、小さいな!』

『確かに想像してたよりは小さいかも』

『主人、奴らは知性というのはほぼ無く頭の悪い奴らです、ですが火炎弾を使う為そこだけは用心して下さい。あと隙あらば突っ込んで来ますので!』

『…まるでイノシシね!』


 現れて開口一番、咆哮する。

『くっ! 耳が!』

 甲高い咆哮に耳を塞ぐ。

彼奴あやつ調子にのりやがって!』

『うん? 何て言ってるの?』


 {くはははは、下等な人間どもめ!!……}


『等と言ってますな』

『まぁお決まりのセリフね、さて始めますか…、と言ったものの戦闘なんてした事ないからな……』

『主人、我が相手をしましょうか?』

『いや、良いよ。ランちゃんに頼りっきりじゃ何も出来なかなるからね』

『わかりました』

『とりあえず、飛んでるのがめんどいな、それじゃあ!』


【ワープ】


 私はワイバーンよりも上空にワープを発動、いきなり消えた私を探すようにキョロキョロしている。

『確かに、頭は悪そうね………高!』

 あまりの高さに思わず怯んでしまった。

『落ち着け落ち着け』

 落下しながら、そう自分に言い聞かせる。

 ワイバーンの近くまで落ちてきた時、氷魔法を構築し翼に向かって解き放つ。

 翼が凍ったワイバーンは、バランスを崩し地上へと急降下していく。

『よし、成功』

 それを見た後、ワープで地上に戻り新たな魔法を構築する。

 ワイバーンの落下点に土魔法で地面を隆起させた。

 数秒後、見事にその場所に落下、お腹を強打し鳴き叫ぶ。

 おそらく内臓等損傷しているだろう。

『さて、お終いにしようか』

 再度右手に魔力を溜め、頭目掛けて発動する。


「アイスランス」


 ワイバーンの頭を貫く氷の槍、それと同時に絶命した事がわかった。

「よし、終わり!」


 すると、どこからともなく歓声が起こった。

『あ、忘れてた』

 ここが街の真ん中だって事を、すっかり忘れていたのだ。

 周りからは、あの女性は誰なんだという声が聞こえて来たら、救世主だぁ〜などいろいろな声が聞こえて来た。


『まぁ仕方がないか、とりあえず他の場所の状況はっと……』

 サーチにて確認すると、王宮の戦闘は終わっている様子だった。

 しかし、ギルドの方は…


「まだ見たいね、じゃあそちらに行きますか」


 私は【ゲート】を使いその場を後にした。

 周囲からは急に女性が消えた事に驚きの声があがっていたが、マユミは知る良しもなかった。



 ギルドの近くに飛び、周りを見ると既にあちこちに火の手が上がっていた。

『これはヤバいな、でも水魔法じゃこんな広範囲なんて時間がかかるよね……火を消す、水、雨!!』




「雨か! でも、天候を変えるなんて……そんな事…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る