第4話 ソフィア・リン・エマニエル

「よろしかったらあなた様のお名前を教えては下さいませんか?」

「え? あっ、名前ね、名前は…… 佐伯〜……」

「さえき?」

「いやっ、マユミです」

「マユミ……様。聞き慣れない感じのお名前ですね、どちらからお越しですの?」

「どちら〜でしょうね。 はっはは」

「うん?」

「いやぁ〜、気づいたらここで寝てたというか、居たというか、来させられたというか……」

「お嬢様」

「何? セバス」

『セバス! ありありの名前だこと。ああいう仕事をしてる人ってセバスっていうのが通例なの!?』

「あの〜、マユミ様?」

「はひっ!」ヤバ、声が。

「ふふっ、そんなに緊張されなくも良いんですよ、マユミ様は私達の命の恩人なのですから」

「はぁ〜、こういう状況に慣れてないものですから……」

『緊張しないで良いと言われてもなぁ』

 私の前に笑顔で立ちソフィアと名乗った女の子は私の知る高貴なお姫様『金髪立髪ロール的な』感じではなく、落ち着いた感じで、人懐っこく笑顔が可愛い女の子である。

 しかし醸し出す雰囲気はどことなく貴賓さをただよわせていた。

 この落ち着いた子がまだ15歳の少女だとは思えないほどだった。

「この後、何かご予定はありますか?」

「予定、ですか……」

「はい、是非私の家にご招待したく思いまして。」

「あぁ〜、そうしたいのですが、この土地に来たのは初めてでして身の回りの整理などをしたいと思いまして……」


『てか、目覚めたら知らない場所で寝てるは、いきなり魔獣と戦うは、おまけに国王の娘! しかも、家に招待って、この子の家って事は王宮って事よね。現時点でも混乱してるのに、王宮なんて無理無理、ここは丁重にお断りをしよう。うん、そうしよう』


「そう、ですか。残念です」

「あぁ〜、そうだ今はいろんなことが一気に起こってしまっていて、余裕が持てませんので、もし宜しければ少し落ち着いた後にお招き頂ければと思います」

「わかりました、ではその時は是非」

『あぁ〜、王宮、王宮かぁ〜。なんとか、今は断れたけどあの残念そうな顔を見ると行かないわけにはいかないよねぇ〜、はぁ〜』

「ところで……ソフィア様」

「マユミ様、私のことはソフィーとお呼び下さい」

「えっ! でも」

「マ・ユ・ミ様、ソフィーですよ!」

 ズンズンズンと、近づいてくるソフィア様

「……わかりました。 ソフィー」

「ふふふ、ありがとうございます、マユミ様」

「……ソフィ・ア〜」

「むす〜っ!」頬を膨らませる、姫さま、『可愛い』

「……ソフィー」

「何ですか?」ニコニコ笑顔に元通り。『可愛い』

「その、マユミ様って言うのはやめて下さい」

「では、マユミと、お呼びしても?」

「それで結構です」

「ふふ、あと!」

「え?」

「その敬語は、やめましょう!」

「えっ、でも!」

「いーえ、私達はもうお友達です、ですよね?」

「……はい、わかりました。」

「うん?」耳に手をやり私に顔を向けてくる。

「・・わかったよ、ソフィー」

「ありがとうございます」

『はぁ〜! 笑顔が眩しい!』キラキラした目を向けるソフィー


「ソフィー、聞きたいことがあるのだけど」

「何ですか?」

 その後、私はソフィーにこの国の事、ここはどこかという事、魔法の事、そして何故魔獣に襲われていたのか等を聞いた。

 ここは、エルランド王国近郊にあるマルタ草原という場所で、ソフィーとセバスさんは散歩に来たそうだ。

『散歩って、一国の姫さんがお供1人だけで来て良いの?

 普通は護衛がぞろぞろと付いて来そうなものなのに』

 そんな事をソフィーに、伝えると。


『だって、あの人達ソフィア様そちらは危険です、ソフィア様、ソフィア様〜、ってうるさいんだもん』


 だそうです。


『ですよねぇ〜、それが普通だと思う』


 その散歩の時に、出会したでくわしたのがあの、魔獣ボアだったそうだ。

 普段は人を襲わない魔獣だそうだけど、突然怒って襲ってきたそうだ。

 ボアは、ランクこそ低く足も遅いが、パワーは強いらしく侮れないと話してくれた。


 そして、魔法だ。


「魔法は全ての人が使えるものではありません。また個々に魔力量、魔力適正があり、それによって使える魔法使えない魔法、そして魔法の威力にも影響を与えます。

 マユミはどんな魔法が使えますの?」

「ちなみに何種類あるの?」

「まず4大魔法の火・水・風・土、そして聖魔法に闇魔法、空間魔法と創作魔法の8つの魔法が存在します。

 ですが、基本的に4大魔法が使える人は、その他4つの魔法は使えません。逆も同様です。そもそも、後の4つの魔法が使える人は滅多にいないのが現状ですけど」

「最初の4つの魔法はなんとなくわかるけど、後の4つは具体的にはどんな魔法なの?」

「まず聖魔法ですが……これは見て頂いた方が早いですね」

 そういうと、ソフィーは胸に手を当てる。


「ヒール」


 その直後、彼女を中心に光が溢れる、しばらくしその光は消えていった。

「このように、聖魔法とは主に回復魔法ですね。

 あとは聖属性攻撃魔法なども使える方がいるそうですが、私は回復魔法専門なのです」


 ソフィーが後に教えてくれた事だが、魔法の発動には、魔法適正・魔法量の他に思いの力が必要だと言う。


 闇魔法とは、召喚魔法と攻撃魔法が主で、空間魔法は名前の通りだそうだが、ソフィーはあまり詳しくない様子だった。

 そして最後の創作魔法だが。

「創作魔法、これは私が知る中で歴史上一人しか知りません。ですので、詳しくはわかりませんが、想像や願い等を具現化する魔法と言われています」

「その昔、この地は荒れ果てた土地で、雨一つ降らなかった時があったそうです。

 民は痩せ細り、その日を凌ぐのがやったな状況で、常にどこかで戦いが起こっていたそうです。

 そんな時です、その人が現れたのは。

 彼は国民が願う事全てにおいて願いを聞き届け、叶えていったそうです。

 食料、衣服、住む場所、そして天候すらも。

 みるみるこの国は豊かになっていきました。しかし、当時のこの国の国王は、それを良しとせずその者を捕らえました。そして、彼にこう言ったのです」


『今後一切下民共に魔法を使う事を禁じる』


「そう告げたのです」


『典型的なダメダメ王ですねぇ〜』


「彼はもちろん抵抗しましたが叶わず、それどころか国王は自分が欲する物を彼に要求しはじめたのです。

最初は拒んでいたそうですが、拒めば拒むほど民の生活は苦しくなり、最終的には彼の前で何の罪もない民を処刑したのです。

 それを見た彼は怒り、悲しみ、そしてこの国、いえ、王宮のみを消し去ったのです。

 王宮に住う全ての人間を彼自身も含めてです。

 王宮が無くなった後、民達は混乱こそすれ戦いは終わったそうです。

 そして、新たな国が生まれました。

 民が中心となる国が、私のご先祖様も元は農民だったそうです」



『創作魔法かぁ〜、まぁ私には関係ないよね……』

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