第3話 初めての戦い?

 猪と向き合ったのだが!


「弓があっても弦も矢も無いから意味ないじゃない!」


「オギャーオー、オギャーオー」

『詰んだわね……』

 のっしのっしと歩きながら、鳴いている猪。

 ある程度の距離を取りながら逃げる3人。


『どうすんのよ、この状況!! まぁ足が遅いから追いつかれることはないけど、ないけどね! このままじゃ何も状況は変わらないじゃない!!』


「あぁ〜、もうっ!!」


『もしここが、異世界なら少しくらい何か無いわけ!? 誰か出て来て、この状況を説明して、あなたは魔法の達人です、みたいな! それに何よあの猪! 中途半端なのよ!』


《グゥー》お腹がなった……。


「はぁ〜、そりゃお腹も減るわよね。朝起きたら、訳の分からない場所に来てて、ヘンテコな猪に追われて、ヘンテコな言葉を話す人達に人柱にされて、あんな猪なんてになれば良いのよ!!」



 これまで溜まっていた、疑問やイライラ、鬱憤うっぷんなんかが叫びとなり一気に出てきた。


 

 叫び終わった後に目を開けると、右手が燃えていた!!



「え! え! どうなってるの! あ、熱い! あつ……、くない!?」


 轟々ごうごうと右腕を纏うまとう様にして燃えている炎、しかし全く熱くなかったのだ。


「これって魔法よね……。キレイ!」

 側に居た男性と、女の子に「これ、何か知ってる?」みたいな感じでジェスチャーをするが、全く通じなかった。

 二人して「うん?」という感じで首を90度に傾けていた。


『あっはは〜、聞いた私が悪かったです!』


「とりあえず、魔法はあるみたいね! でも、これどうしたら良い訳?」


 ゲームとかほとんどした事がない私にはこれからどうしたら良いのかさっぱりわからなかった。

 そんな時、女の子が私の服の裾を引っ張ってきた。


「うん? なに?」と、ジェスチャーをすると。


 猪の方を指差し、手を向ける様に、みたいな事を言っている。


「こう?」


 女の子の方を見たまま、猪の方へ手を向ける。

 すると、女の子の目線が私から猪へと向き、その直後その顔が驚愕きょうがくの表情へと変わるのがわかった。


「え!? なに、その表情!」


 私も猪の方へ目を向けると、そこにはになった猪が横たわっていたのだ。

 それどころか、その後ろ数百メートルに渡って草原が焼け野原となっていたのだ。

 よーく見ると、猪が居た地点より右側の方が焼けている為、私が撃ったであろう何らかの炎魔法がそこを通過したのだと思われる。

 そして、猪はそれに巻き込まれてまるこげになったのだろう……。


『もう、そういう解釈にしておこう……』


 女の子を見ると、目をキラキラさせながら私の手を握っていた。


 そして気づいた、私の右手から炎が消えていた事を。


 女の子と男性は相変わらずヘンテコな言葉でお礼だと思うが話してくる。


『全く分からん! 魔法で話してる事がわかる様にならないものかな……』



「ありがとうございます、ありがとうございます」

 


「うわぁ!! ビックリした!!」

 


「どう、されましたか?」

『いや、それはどちらかというとこっちのセリフかな……』

 などとはつっこまないが……。


 男性は不思議そうに首を傾げる。

「いや、何もないです」

「お嬢様、助かりました。助かりましたよ」

「ありがとうございます」

 お嬢様と呼ばれているその女の子もまた私にお礼を伝えてきた。

「いえ、なんというか勢いでやった様なものですから」


『見事にまるこげね! こんがり焼けてますわ!』


「あのぉ〜大丈夫ですか?」

 女の子が声をかけてくる。

「大丈夫よ、こっちにきて何が何だかわかってないだけだから……」

「うん?」

 不思議そうに首を傾げると女の子。

「あ〜、気にしないで!」

「はぁ〜」

「それにしても、あれは何なの? 猪よね?」

「猪、というのが何なのかわかりませんが。あれは、魔獣ですね」

「魔獣ですか……、ちなみにあの魔獣?は何ですか?」

「え? あぁ〜、ボアですね」

「ボア?」

「はい、ボアです」

「ちなみに強い魔獣なの?」

「いえ、ランク的には一番低い魔獣だと思います、それにそもそもボアという魔獣は人を襲わないのですが……」


『あの猪、一番弱い魔獣なんだ』


「お嬢様」


 男性が女の子に話しかける。

 はっと何かに気づいた女の子は私に向き合う。


「この度は、危険なところを助けて頂きありがとうございました。改めましてお礼を申し上げます」


「いえいえ、そんな事。私も何が何だか……」


「ふふ、自己紹介がまだでしたね。私はこの国の国王、エルヴィン・ラナ・エマニエルが娘、ソフィア・リン・エマニエルでございます」


「………へえ!?」


「ふふ、どうかソフィーとお呼び下さい」


 さらった凄い事を口走った女の子はそれは見事なお辞儀を披露した。


『姫さんキタァー!!』

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