古墳会議

Kitsuny_Story

1話目

日本には5000基ほどの前方後円墳がある。

その中の一つの古墳では100年に一度ある会議が開かれている。

場所は現代で言うと大阪か奈良そのあたりの古墳であろう。

今日の夜12時にその会議が開かれる。


夜12時になると、空には4つの星が輝いている。惑星や月すらも空にはいない。

4つの星たちは光の線を描いて前方後円墳の上に降りてくる。

そうして古墳の上には4つの星が鎮座したが、彼らはきちんと人間の格好になった。

3人が男で、1人が女の姿である。

4人による100年に1度の会議が始まる。


「我々が管理しているこの国の人々は、この100年で大きく変化した。これは良い方向と言っていいのだろうか?」大きな口髭を生やす男が口火を切る。


「いいと思う」

「彼らは進化している」と2人の男が賛同する。

それぞれ侍と軍人の格好をしている。


「私はそう思いません」と女だけが異議を唱える。

彼女は黒縁の眼鏡をかけた医者の格好をしている。

3人の男たちは一斉に彼女を見る。

その目は面白くなさそうだ。


そんな彼らを無視して彼女は自分の主張を続ける。

「私が見るに、人間たちはあるウイルスにかかっています。そのウイルスにかかっていない人間は、この国にはいません。この国の人間たちはウイルスによって変わってしまったのです」


「ウイルスだって?」

「そんな話は聞いたことがない」

「人々の寿命はどんどん伸びてるじゃないか」


彼らの声をかき消すほど大きな声で彼女は叫んだ。

「この国の人々は、電気というウイルスにかかっているのです!」


「電気は人間たちが作り出したものだろう?」

彼らは批判する。


「違います。電気はもともと自然界で生まれたのです。

  その電気をコントロールし、生活にうまく取り入れてたのが人間たちです。

  でも、それは人間たちの意思ではない。電気が頭の良い人間に感染し、その人間を操ることで電気が人間界に広まる発明をさせたのです」


その主張に男たちはついに黙ってしまう。しんとした空気が支配する。


「電球も電線も蛍光灯も全て、電気が人間を操っでできたものです。

  もはやこの国は電気によって操られています。操られていない人間などもういない」


彼女は最後にそう言って、再び夜空に戻り星になってしまう。

「もはや手遅れなのだな」

「そうだな」

「無念じゃ」と3人の男たちも星に戻ってしまった。


夜空には4つの星が輝いている。

電気で支配されたこの国を、彼らはただ見つめているしかなかった。

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