「十分」で十分

十分

・物事が満ち足りて、不足・欠点のないさま。充分(広辞苑)

・充分。満ち足りていて、不足がないさま。本来的には「十分」で、古くから使われた(明鏡国語辞典)


 知って驚いたのだが、さいきんは、十分と充分での使い分けを主張する人がいるらしい。

 充分という言葉は出自が怪しいので使用を避けて来たが、そんな使い分けは聞いたことがない。


 十分の分には、「十分の一」という意味がある。

 であるから、十分とは百パーセントのことであり、そこから現在の意味が生じた。

という認識で問題はないはずだ。

 おそらく、和製漢語だろう。

 そもそも、充分という言葉を単独で見た場合、この「分」の指す意味が私にはよくわからない。


 インターネットで十分と充分の使い分けを主張するページをいくつか見たが、どれも語源の話がないので信用できない。

 十分と充分の使い分けという話は、漢字に疎い人が、語源を調べずに字面のみで判断して、戦後以降に言い出したではないか。


 だいたい昔は「正しい」漢字なるものがあやふやなうえ、手紙が主な情報交換の手段であったから、異なる漢字を当てた同音同義語はいくらでも生まれた。

 広辞苑を無作為に開いてみても、栄養・営養と出て来る。


 十分と充分の使い分けを主張するのならば、語源や経緯を提示しないと、言葉にうるさい人たちは納得しない。

 十分と充分に関しては、高島俊男さんが言及していたと思うが内容は憶えていない。


 とりあえず、言葉に気をつけたい人は、充分という言葉は使わないのが無難。

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