STEP:6

ソクラテス計画は合同探査を隠れ蓑にした軍事作戦だった。

考えてもみろ。首尾よく観測データや試料を持ち帰った所で科学と魔道が互いの便宜を図るわけがない。

自己正当化の補強材料に悪用されるだけだ。そこで上層部は目的を変更した。

無垢を人類の智に対する侵害と見なして破壊する決定を下した。

具体的には魔導士が無垢表面に結界を張り、科学者が氷床を電気分解する。酸素と水素の化学反応が小規模爆発を起こす。

もちろん、無垢自体はびくともしないが、反撃の狼煙が共闘のシンボルになる。

同時に遊星に向けられたあらゆる観測機器が無意味になる。作為が加えられた自然にどんな研究価値があるというのか。

つまり無垢に関わる不毛な議論を終結させる政治的意図もあった。


僕が鵲の求婚を保留した理由はそれだけじゃない。綾だ。衒学の研究中心には魔道の叡智も集結している。

人類の集合『愚』を記録するため軍事技術が常設展示されていた。そこに動態保存された綾がいた。

彼女は衒学の眼として最前線に赴き、最新の愚行を収集する活動を通じて僕と出会った。北海道島独立を巡る戦争だ。

他愛ない亜人の自慢話を介して鵲は僕を次第に意識し始めた。

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