STEP:7


「私の9割は亜人だ。だが私は墜落事故に感謝している」

唯一の生存者である蒲生は衒学に迎えられた、と言えば聞こえがいい。興味本位の素材として蘇り、担ぎ上げられた。

黒幕がいるのだ。そして彼らは報告書にも介入した。


蒲生は鵲の霊界通信論を鶯と共同で完成させた。

「地球に最も近い恒星をご覧ください」

だだっぴろい講堂に太陽系儀が据えてある。人間と違わぬ滑らかな動きで数式を板書する。

「この太陽こそが私たちの『天国』なのです」

古今東西の神々が現出し、太陽が後光に包まれると聴衆が嗚咽した。

「可視光線、熱、それだけでなく霊的な恵みすらも与えてくれます」


彼が言うには人類が持つ「集合的無意識」とは太陽が放散する莫大な電磁パルスのクラウドであるという。

人間の脳幹にはマイクロチューブリンという量子共鳴を起こす部位がある。それと太陽放射が作用してネットワークを形成している。

つまり、人の意識は肉体を離れると太陽クラウドにアップロードされるのだ。

「人類が触れる、制御できる相互作用は電磁気力しかありません。光熱、音や森羅万象すべての根源。そして精霊ですらも物理現象として認識可能であるからには電磁気学で『全て』説明できます」

壮大な前振りのあと、鶉が霊界ラジオに通電した。


僕のスイッチが入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る