第4話 恥をかかされました!

一年後【国立ユイナーダ学園中等部】



ついに私も、中等部の学生です。

婚約者の決まっている、中等部以上の学生は入学式後の歓迎パーティーに、パートナーと共に参加する事になっているのでパーティー会場の外でメイドのモリリンと一緒に待っていましたが、未だに現れません。




社交界デビューの練習も兼ねているので、今回パートナーのいる新入生は男性側に、パーティーの招待状が渡されている為、私1人で入れない事になっているのです。




どんなに爵位が高くても“招待状無し”では入れないという、厳しいルールです。

知り合いの方達がどんどん会場に入って行く中、私はずっと待ち続けました。


スタッフ役の先輩方にも、可哀想な目で見られています。

しかし、どんなに嫌な相手でも、待ち続けなければいけません。


恥ずかしかったし、悔しかった。

パートナーがクリスだったらこんな事になっていなかったのに……




ナルキスが迎えに来ないまま、やがてパーティーが終わり、会場からたくさんの方達が出て来られました。

会場の外で立ち尽くしている私達を見て皆さまビックリしたり、可哀想な目で見たりされています。




それは、そうでしょうね。

この国の高位貴族たる“侯爵令嬢の私が”パートナーにエスコートもされずに、会場の外でメイドと2人、待ちぼうけをしていたのですから。




暫くすると、会場から凄く聞き覚えのある嫌な声が聞こえて来ました。


ナルキスは私を外で待たせ続けて、1人で会場に入っていたのね!

と、思っていたら全く関係ない女と腕を組みながら、パーティー会場から出て来たの。




あり得ないわ!!




「先輩♪今日は、ありがとうございました♪

招待状を失くしてしまって、困っていたので助かりましたわ♡」


そう言って媚びを売る女を見て、ナルキスは鼻の下を伸ばしながら……


「何、大したことないさ!

困っている女性を助けるのも、紳士の役目だからな!」


などと如何にも、貴族らしいセリフを吐いている。



ほほう……『“困っている女性を助けるのも紳士の役目”』ですと?

それでは“本来さパートナー”の私を放ったらかしにして、大恥をかかせたのはどういうこと事かしら?

じっくり説明してもらおうじゃありませんか!!




「ナルキス様その方、どなたかしら?

私、ここでパートナーの貴方が来るのを“ずうっと”待っていましたのに……酷いですわ!!」

(ここで泣き真似入ります!)


「うっ!それは……。」


彼が怯んでいる間にすかさず彼女の方を攻撃する。


「それに貴女、どこのクラスですの?」


「えっと、それは……。」


彼女が言い淀んでいるとナルキスは、


「止めろ!彼女は平民でこういう場には、まだ慣れていないんだぞ!」



へぇ~平民ね~。

この学園の中等部で、平民の学生はかなり少ない。

居るとしたら大商会の子女だけ。

人数も少ないので顔見知りばかりです。

当然、彼女には見覚えが有りません!



この場には、まだ沢山の方達が残っていますし、何なら先生に確認してもらいましょう。




「誰かこの方がどこのクラスか、ご存知ですか?」


私の問いかけに、対して皆さまの反応は


「うちのクラスの人じゃないな。」


「知らない子ですね。」


「知らないよ。」


その間にも、彼女の顔色はどんどん悪くなっていったわ。




暫くすると、誰かが呼びに行ってくれたのでしょう、中等部の先生が数人駆けつけてくれました。

先生に確認したところ、彼女は思った通り学園の学生ですらなかったの。



結局彼女は不法侵入と不敬罪で、衛兵隊に連行されていきました。

その後の取調べで、彼女は詐欺やスリの常習犯で、今回のパーティー会場でも学園生から貴金属を盗んでいたの。

何しろお金持ちが沢山居ますからね。



持っていた化粧ポーチや、制服のポケットの中には盗んだ貴金属が、たくさん入っていたそうですわ。

会場内に入り込む為に、ナルキスは利用されたのね。



バカだバカだとは思っていたけど、私に大恥をかかせた上に、高位貴族やお金持ちの子女が集まるパーティー会場に、“泥棒を引き込む”なんて、最悪ですわ!



もし彼女が暗殺者やテロリストだったら、もっと大変な事になっていたわね。



ナルキスは社交界のルールも守れず、とんでもないことを仕出かしたけど、『1週間の謹慎処分』で済みました。



それ以上長くなると、ただでさえバカなのが余計にバカになったら困りますし。

本来なら退学処分になるところだけど、公爵令息だった為に免れたのよね。




退学になれば良かったのに……




その後、公爵家から『丁寧なお詫びの手紙』と『お詫びの品』を頂きました。

一応、ナルキスの名前で来ていましたが、おそらく全部執事長のハンソンの手配でしょう。

彼にそんな能力は、無いでしょうしね。

きっと今頃『自分は、悪くない!』などと喚いて反省などしていないに違いない。


******************


その頃の【王都公爵邸】ナルキスの自室〜



「ナルキス様!!何という事をしてくれたのです!

婚約者のエリー侯爵令嬢のエスコートもせずに、パーティー会場に“泥棒を引き込む”などと!

旦那様に何とお伝えすれば!!」


チクショウ!またアイツの所為で怒られたじゃないか!

やはりアイツは、俺様の婚約者に相応しくない!

いつか絶対に婚約破棄してやる!!


「ナルキス様!!聴いていらっしゃるのですか!?」

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