第16話 2cm

「うわぁー、デっけぇ~」

 小学校4年生の時に転校して教室に入ったときの男子の驚きと揶揄うような言葉を今も覚えている。

 当時は、それがコンプレックスで、イジメられることはなかったが、揶揄われるのが嫌で仕方なかった。

 中学生になると部活動が盛んになると、当然のようにバスケ部といバレー部から誘われる。

 高身長をコンプレックスにしないために、私は部活動へ打ち込んでいた。

 ほどほど…そこそこ…出来るようになると、少しづつ自信に変わっていき、高校生になるころには、自分より背の低い男子を「ちっせぇ~」と揶揄えるようになった。

 でも…部活でイニシアチブが取れるのなんて高校生まで…

 大学…就職…容姿にでも恵まれていれば、良かったんだろうけど。


 ………

「やっとオマエに言えるようになった…小せぇな」

 小学校の同窓会で再会した同級生。

 私をいつも「でっけぇ、でっけぇ」と揶揄っていたアイツだと、言われるまで解らなかった。

「背伸びたんだね~」

 私より、2cm背が高くなっていた。

「初めてだよ、人に小さいって言われたの」

「ずっと、言ってみたかったんだオマエに」

 そういって差し出したシャンパングラスをチンッと鳴らして乾杯した。

(たった2cmのくせに偉そうに)

 背が伸びたことを得意げに話す姿は、あの頃のまま…そいうえば、こんなヤツだった。

 クスッと笑った。


 私の隣で緊張している新郎は、私よりも2cm背が高い。



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ポップコーン・ストーリー 桜雪 @sakurayuki

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