第15話 この距離感が…

「おや…今日も来たねぇ」

 庭の垣根の隙間から黒い猫がノソッと顔を出す。

 おばあさんが、皿にカリカリと水を黒い猫に与える。

 少し警戒しながら、猫はエサを食べ水を飲み、庭の隅で小さく鳴く。

 部屋の奥から、白い猫がヒョコッと顔を出す。

 ノソッと庭に降りて、黒い猫から少し離れたところでアクビして丸くなる。

 エサを食べ終えた黒猫もフワ~ッとアクビしてその場で丸くなる。

 互いに傍に寄るでもなく、ただ近くで眠るだけ。

 時折、何かを話しているように鳴いたりもする。

 少しすると、小さな男の子が顔をだす。

 すると、おばあさんの家の女の子が庭に出てくる。

 男の子と女の子は互いにポツリ、ポツリと話しながら、遊ぶでもなく互いの家の猫を撫でながら夕方まで過ごすのだ。

 夕方になると、黒猫は垣根の隙間から出ていくのである。

 必ず、また明日とでも言うように「なぁー」と、ひと鳴きして…。

 男の子も黒い猫を追うように、一緒に帰っていく。


「寄るでもなく、遊ぶでもなく不思議な関係だね」

 おばあさんが白猫の頭を撫で女の子の顔を見る。

「ネコも、この子も…変な関係だね」

 笑うおばあさん。

 照れたような顔で女の子は

「いいの」

 と言って部屋へ戻っていく。


 女の子は部屋の窓から、男の子が帰っていった方を見て小さな声で

「また明日ね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る