第14話 小さくて大きな恋

「せんせぇをお嫁さんにするの‼」

「楽しみにしてるわね」

「せんせぇ、さようなら」

「はい、また明日ね」

 幼稚園の先生というのも大変だ。

 時間外労働は多く、保護者にも気を遣う、なにせ相手は、次の行動が予測困難な子供である。

 毎日がアッという間に終わって、気づけば週末、起きれば月曜という、そんな日々を何年繰り返しただろう?

 くたびれただけの20代も後半戦…鏡の自分に自信は持てない。

「それでも、私をお嫁さんに貰ってくれる?」

 リアルに考えれば、あの子が結婚できる頃には私は40代である。

 大きなため息を吐いてしまう。

(責任とれよ…)

 意地悪く心でそう呟いて、今日も園児を見送る。


 彼らの無邪気な恋心は、白くて無責任…

(男は幾つになっても、そういうものなのかもしれない)


「じゃあ…いつ先生と結婚してくれる?」

「う~ん…じゃあ、おやつ食べた後かな」


 思わず笑ってしまった。

 そう、この小さな恋心を受け取れるのも、先生の特権なのかもしれない。

 きっと、この子の初恋の相手も私なのだから。

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