第11話 Woman

「追いかけるのに必死だった」

 疲れてしまった…のかもしれない。

 OLを辞めて、アパートを引き払った。

 実家へ戻って、数か月は何もしなかった。

 コンタクトが面倒くさくなって、眼鏡に戻した。

 毎朝、フルメイクしていた数か月前に比べて、随分と気が楽になったような感じがする。

 パートだけど働きだして、女性がメインの職場にも馴染んできた。

『恋』とは遠ざかっていくけど…今の生活は、心が疲れない。

 だったのに…

「週末だけだけど、今日からよろしくね」

 一回りも年上の人…なんだか話していて疲れないのは…この人の目には私は『女』として映っていないから?


「映画好きなんだ?」

「はい…」

「そう、僕もね月に1回は有給使って観に行くよ」

「そうなんですか? あの映画観ました?」

「いや、まだ…来月には行きたいなと思ってるけど」

 トクンッ…

(もし…良かったら一緒にどう…)

 なんて誘われるわけもないか。


 休憩時間、トイレの鏡に自分を映す。

 眼鏡をはずして、鏡の自分に

「ブス…になった?」


 翌朝

「おはようございま~す」

「えっ? 眼鏡?」

 リーダーに驚かれた。

「うん、コンタクトにした」

「そう、そっちのほうがいいよ」


 誘ってもらえるなんて期待してない。

 けど、誘われもしない『女』でいいわけもない。

(今日から、またWoman…始めます)


 夏が始まる…。

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