第10話 嫌な奴…

「なんで私にばっかり仕事させるの‼」

 バイトを始めて2か月、1週間前に転勤してきたアイツは初日から私にばっかり仕事を手伝わせる。

「嫌い…嫌い…大嫌い‼」

 今日も嫌いを連呼しながら帰宅する。

「聞いてよ‼」

 学校で友人に愚痴ることが日課になっていた。

「なんか、ここ最近、その人の事ばっかりだね」

「だって、ホントにムカつくんだよ‼」

「はいはい、でも今日もバイト行くんでしょ?」

「うん」


 そしてバイト先でアイツに仕事を言いつけられる。

「ホント、ムカつく‼」

「そういうことは本人の前で言うな」

「だって、アンタ、ホントにムカつくんだけど‼」

「じゃあ、他の人と組めばいいだろう」

「…だって、アンタ、私しか組んでくれないでしょ‼」

「そうかい…まぁいいけど」

「ありがたく思ってね」

「そういえば、今日、オマエ給料日だな、飯でも奢ってくれよ」

「はぁ? なんで私が?」

「社員は給料日まで、まだ1週間あるんだ…今、金がない」

「安月給そうだもんね~可哀想、でも嫌だ‼」


「お先に‼」

「あぁ、ご苦労さん」

 今日もアイツに、こき使われた…ムカついた。

 自転車を押して、アイツの車の中を覗いてみる。

(誰も座って無さそうな助手席…彼女なんていないんだろうな~)


「なんだオマエ? 何してんだ?」

「えっ?」

「随分、前に帰ったんじゃなかったか?」

「……奢ってあげようと思ってさ…ラーメンくらいなら」

「待ってたのか?」

「そういうわけでもないわけでもないかもしれないけど…待ってたわけじゃないような?」

「まぁ…奢ってもらうんだ、なんでもいいけどさ、乗れよ」

「うん」


(助手席…なんか緊張する…)


「で?」

「はっ?」

「いや、どこの店なんだ、越してきたばかりで道がわからん」

「はぁ~、しょうがないな、まずは右」

「右ね」

「これからも…色々、店、教えてあげるよ…気が向いたら」

「そりゃどうも、とりあえず給料出たら今度は俺が奢るさ」

「約束だよ」



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