第7話 伝わるよね

「転勤決まったんだね」

「あぁ、明日から店長だ」

 喫煙場所で、よく会うテナントの女の子、この店に来てから2年が経った。

 彼女とは、この場所でしか会うことは無かった。

「おめでとう」

「うん、ありがとう」

 煙草をもみ消して、売り場へ戻った。

 最後にデスクを片付けて、車に乗り込む。

 少し走ると雨があたりだした。

 ワイパーを動かすと、助手席側のワイパーに何かが引っ掛かっている。

「勝手には取れそうにないな…」

 車を路肩に停めて外に出る。

 雨が強くなってきた。

「手紙?」

 車の中に戻って、濡れた手紙を広げる。

『転勤おめでとう…って言いたいけど………少しだけ…またコッチにきたら……そんなことないかもだけど…最後かもしれないから、ずっと……』


 濡れてインクが滲んで所々読めない手紙。

(肝心な部分が読めないな…)


 そういえば、あの子、最初は煙草なんか吸わなかったよな…いつの間にか喫煙所で話す様になって、いつの間にか煙草吸ってたな。

「俺に合わせてたのか…気づかなかったよ」


 ………

「読んでくれたかな?」

 なんだか落ち着かない。

 ホントは運転席側のワイパーに挟みたかったけど、なんとなく助手席側に挟んでしまった手紙。

「雨になっちゃった…」


(読んでくれたかな…それとも…)

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