第6話 違う幸せ

「あっ…この曲」

 結婚して、もう5年…パート先の人達と久しぶりのカラオケ。

 ランチの流れで、子供を迎えに行くまでの2時間ほど、こんな時間だから結構空いている、部屋に向かう途中で、聴こえてきた、この曲。

(あの人が好きだった曲…)

 少しだけ足を止めて聴いていた。

「どうしたの? 早く行こうよ」

「うん」

 部屋に入って、適当に選曲して歌っていても、あの頃の思い出が心を埋めていく。

(歌おうかな…)

 あの曲を歌おうか?

 でも…

 歌ってしまったら、心を埋めていく思い出が消えてしまいそうで…

(もう少し、思い出に浸っていたい)


 もし…歌っていたのが、あの人だったら?

 そんな奇跡のような偶然が頭を過った。


 そんなわけないのに…


 結局、あの曲を歌えないまま、あっという間に2時間が過ぎて、私は子供を迎えに行った。

「ママ」

 子供の手を握って、あの頃とは違う幸せを今、感じている。

(幸せだったよね?きっとあの頃も、でも今はもっと…)


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